高校1年から不登校・ひきこもり
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高校1年から不登校・ひきこもり

2016年10月30日(日)7:57 AM

Z君の相談を両親から受けたのは、Z君がひきこもって3年が経過したころでした。

 

 

 

 

Z君は高校1年のときから不登校になり、次第に部屋からも出なくなってしまったそうです。

 

 

 

 

両親はZ君とほとんど顔を合わせることもないそうで、1週間顔を見ていないということも珍しくなかったそうです。

 

 

 

 

それもそのはずで、Z君の両親は共働きだったため、両親が外出中のときに部屋から出てきて用事を済ませ、両親が在宅中は部屋からは出なかったのです。

 

 

 

 

両親もこのままにしておいても良くならないと思い、思い切ってZ君の部屋に入って話をしようとしました。

 

 

 

 

すると、Z君は台所に走って行き、包丁を握りしめて、「俺にかまうな!部屋に入ろうとしたら殺す!」と鬼の形相で迫ってきたのです。

 

 

 

 

これを見た両親は警察に通報し、警察官が飛んできました。そのときにはZ君はおとなしくしており、警察官に説教されてその場は終わりました。

 

 

 

 

それからというもの、両親は部屋に入ることも、もちろん話をすることもできず、もう親の力ではどうすることもできないとわたしのところに駆け込んできたのです。

 

 

 

 

両親とも悲壮感いっぱいで、確かに第三者が入らなければ事態はこのまま続くだろう、いやむしろもっと悪いことが起こる、最悪の場合、殺人にまで発展するかもしれないとわたしは危機感を募らせました。

 

 

 

 

これはもうわたしが何とかするしかないと使命感を感じ、時間がかかること、やり方は一切わたしに任せてもらうことを条件に引き受けることにしました。

 

 

 

 

そして初めてZ君の家に行くことになりました。もちろん、Z君は誰とも口を聞かないので、わたしが来ることも、何者であるかも一切知らないわけです。

 

 

 

 

そんな中、何が起こってもおかしくないので、覚悟を決めて望みました。

 

 

 

 

自宅に着き、家の中に入りました。あらかじめ両親には家にいないように伝えてあったので、借りていた鍵で家のドアを開けて、「おじゃまします」と声をかけて入っていきました。

 

 

 

 

家の中はきれいに整理整頓されており、暴れたという形跡はありませんでした。

 

 

 

 

Z君の部屋の前に立ち、「こんにちは」と声をかけて、簡単に自己紹介をしました。

 

 

 

 

しかし、それに対する反応は一切ありませんでした。外に出かけていることがないことはあらかじめ聞いていたので、寝ているか、聞こえないふりをしているか、無視しているかといったところでしょう。

 

 

 

 

「今日は急に来てごめんね。ここに名刺を置いていくから良かったら見てね」

 

 

 

 

今度はいついつ来るからと伝えて、わたしは引き上げました。Z君も当然わたしが親の差し金で来たことは理解しているでしょう。

 

 

 

 

だからわたしは不測の事態に備えて家のすぐそばで待機し、それから両親を家に入れました。

 

 

 

 

しかしZ君から両親に対しては何もなく、ただ名刺は部屋の前からなくなっていたとの報告を受けました。

 

 

 

 

そして約束した日時に再度自宅を訪ねました。今度も前回と同じように両親には家から出てもらっています。

 

 

 

 

しかし、前回とは変わってZ君の自転車がありません。これは逃げたなと確信し、少し待ってみることにしました。

 

 

 

 

しかし、待てども暮らせども一向に帰ってくる気配がありません。つき合っている友達もおらず、行くところもないという話でしたので、いったいどこに行ってしまったのかと思案にくれていました。

 

 

 

 

あまり執着しすぎるのもプレッシャーを与えるだけだと思い、逃げ道を作る意味でも、その日は引きあげることにしました。

 

 

 

 

次回いつ来るかは紙にメモを残して部屋の前に置いておきました。それから何度か自宅を訪れ、追いかけっこが続きました。

 

 

 

 

これはZ君の合いたくないという意思表示なので粘り強くやっていくしかありません。

 

 

 

 

もちろんわたしは負けるつもりはありません。何度断られても、何度逃げられても、とにかくあきらめない気持ちだけは持ち続けてやっていくのです。

 

 

 

 

その間1ヶ月くらい経過したでしょうか。行く度に空振りをし、手紙やお菓子や漫画の差し入れなどを置いてくる日々が続きました。

 

 

 

 

無理にでも会うのであれば、そこでずっと待っていればいいのですが、わたしはそうはしませんでした。

 

 

 

 

Z君が会ってくれる気持ちになるまで、とにかくわたしの気持ちをどうやって伝えていくかに集中していきました。

 

 

 

 

進展がなくても焦らず冷静になることを心がけ、また両親にも我慢してもらうように何度も話をしました。

 

 

 

 

ただひとつ希望があると思ったのは、わたしが置いていったものは部屋の中に持ち込んでいるという報告を受けていたことです。

 

 

 

 

そうこうしているうちに、2ヶ月目に入ったときのことです。わたしが自宅に行くと自転車がありました。

 

 

 

 

これは家にいるなと期待感を持って部屋の前に行きました。そしていつものように挨拶をして、問いかけをしました。

 

 

 

 

しかし、その時も無言でした。やはりそう簡単には話をすることはできないなと思い直し、家にいてくれたことに対して「ありがとう」と伝えて、一つの約束をしました。

 

 

 

 

今まで受けに回っていましたが、ここで一つ押してみたのです。

 

 

 

 

「今度来るときに話をしてもいいなという気持ちがあったら、部屋のドアを少し、開けておいてくれないかな」と伝えたのです。

 

 

 

 

Z君が自分から声を出すことはないと思っていたこともあって、声を発すること以外で意思表示してもらおうと思ったのです。

 

 

 

 

そして約束の日を迎え、いつものように自宅を訪問しました。挨拶して玄関を通り、Z君の部屋の前に行きました。

 

 

 

 

すると部屋のドアは閉まっていました。まだ面と向かって話しをするつもりがないということです。

 

 

 

 

わたしは声をかけましたが、相変わらず、返事はありませんでした。しかし、ここで落胆していてもしかたありません。

 

 

 

 

手紙や持っていったものを部屋に入れているということは、100%拒否しているわけではないのです。

 

 

 

 

だから針の穴ほどの可能性かもしれませんが、可能性はあるんだと考えて前に進んでいこうと強く思いました。

 

 

 

 

それからというものZ君はわたしが訪ねる時間に自転車で逃げてしまうということはなくなりました。

 

 

 

 

しかし相変わらず話しかけても何の返事もありませんでした。部屋のドアを強引に開けることは簡単です。

 

 

 

 

しかし、それをやってしまったら負けだと思いました。Z君はきっとわたしを試しているのだろうと感じていました。

 

 

 

 

だからわたしは、彼が心を開いてくれるまでドアは開けないと決めていました。

 

 

 

 

結果的にそのすぐ後にわたしはZ君と会って話をすることができました。部屋のドアが開いていたのではなく、わたしが家庭訪問に行ったとき彼が玄関に立っていたのです。

 

 

 

 

そのときのことを後になってZ君に聞いたことがあります。

 

 

 

 

「そのうちこなくなるだろうと思ってたんですが、何度も来るからうざいと思っていました。

 

 

 

 

でもそれでも来るから一回会って断ろうと思ってたんです。でもなかなか会う勇気も出なくて顔を見れませんでした」

 

 

 

 

「でも玄関に立っていたよね」

 

 

 

 

「その時は、何度も来てもらって、なんか悪いなという気持ちでした。それから来たときの手紙とか読んでいるうちに、もしかしたら今よりましになれるんじゃないかと思いました。

 

 

 

 

今のままでいいとは思ってなかったですし、一回ぐらい会ってみようという気持ちになりました」

 

 

 

 

Z君はその後、東京に来て一年ほど過ごすことになりました。そして高卒認定試験に合格し、今春から専門学校に通うことになっています。

 

 

 

 

東京に来てからのZ君はわたしの言ったことを素直に聞いて、本当に一生懸命やっていました。

 

 

 

 

叱られたりしたこともありましたが、反省して同じ失敗は繰り返さない子でした。

 

 

 

 

思えば、Z君が玄関に立っていたときに、わたしと彼との信頼関係はできていたのだと感じます。

 

 

 

 

わたしから見たらとても良い子が、包丁を持って警察沙汰になるまで追い込まれていたことは悲しいことです。

 

 

 

 

盾となって引っ張ってあげる人間がいれば、子どもは必ずいい方向に向かいます。

 

 

 

 

Z君は運悪く、そういった人にめぐり合えなかっただけです。わたしがその盾になれたことは幸運なことでしたが、誰かが本気で子どもの盾になってあげて引っ張ってあげなければならないときがあります。

 

 

 

 

本心から子どもの見方になってあげ、良くなるためには何でもするんだという強い気持ちを持つことが大切です。

 

 

 

 

そうすれば子どもは大人を信頼し、ついていこうと思うのです。信頼関係ができれば、聞く耳を持つようになり、伝えたいことは素直に入っていくものです。

 

 

 

 

たとえどんなに正しいことや、どんなにすばらしい話をしても、信頼関係ができていなければ子どもの心に入っていきません。

 

 

 

 

この人が本当に自分を救ってくれるのか、味方になってくれるのか、気持ちをわかってくれるのか、それを子どもが感じれば子どもは必ずついてきます。

 

 

 

 

悪いところを直す、いい面を伸ばすことは教育上とても重要なことですが、その前に信頼関係を結ぶことがいかに大事か理解してほしいと思います。

 

 

 

 

そして親にこそ、子どもの盾になってほしいと思います。

 

 

 



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