傷つくリスクを背負わない人間関係(ある男性との面談から)
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傷つくリスクを背負わない人間関係(ある男性との面談から)

2016年09月02日(金)4:06 PM

DSCF0425_TP_V1「次回、僕は面接に来たほうがいいのでしょうか。それとも今の僕には無駄でしょうか」

 

 

 

 

大学卒業後の職場適応に不安を抱いて来談していた21歳の男性の言葉です。ようするに、彼は身の振り方の責任をわたしにあずけようとしているのです。

 

 

 

 

わたしは彼の「見限られたくない」という真意を汲み取り、ためらいつつ、「必要」というメッセージを投げかけました。

 

 

 

 

「それは困ったな。冷たくとられてはつらいけど、この雰囲気のなかで君が判断するしかないよ」

 

 

 

 

「今の僕がそんなことを判断できると思われますか」

 

 

 

 

彼の物腰のやわらかさ、遠慮深さは品のよさにも見えますが、これは臆病さのすりかえです。

 

 

 

 

「わたしとしては来てほしいと思うけど、でも、やっぱり君自身がどう思うかが大切ですよね」

 

 

 

 

わたしは彼に、互いの気持ちを汲み取り、循環しあうコミュニケーションを学んでほしいと願って働きかけました。

 

 

 

 

そして、彼にきっぱりと「また来ます」と笑顔で言ってほしかったのです。

 

 

 

 

遅刻したときに言い訳ばかりしていて、たった一言、「ごめんなさい」と言えない人がいます。

 

 

 

 

相手の気持ちを汲み取らない言い訳はただの自己防衛で、まさにワンウェイ・コミュニケーションそのものです。

 

 

 

 

その言い訳が合理的で、もっともであればあるほど、相手にとってはたちが悪くなります。

 

 

 

 

「僕は来たほうがいいんですね。それなら僕、来ます」わたしは思わず肩透かしを食った感じがしました。

 

 

 

 

自分の意思をこちらにあずけきって安全地帯を形成し、危険をともなう現実にわが身を置こうとしません。

 

 

 

 

関東自立就労支援センターのスタッフが「来い」と言ったから来たんだ、そのときが無駄な時間に思われたら、それは「来い」と言ったスタッフの責任だ・・・・そんなニュアンスが伝わってきます。

 

 

 

 

彼だけでなく、じつはこういう言い方をする若者をよく見かけます。

 

 

 

 

人間関係は、傷つくリスクを背負いあうことで、真剣に深く響き合っていくものです。

 

 

 

 

たとえ信じた自分が裏切られたとしても、信じた自分をいとおしく思ってあげられるのは、リスクを背負う循環的コミュニケーションに心を費やしたからです。

 

 

 

 

その営みがあってこそ、「信じることなくして、向き合う意味はない」と言いきれるのです。

 

 

 

 

どこかで起こりうる人間関係の対立、ゆがみから抜け道を作り、いざというときのために自分だけの安全地帯を確保するというようなコミュニケーションのありかたは、相手の気持ちを聞き、心を交しあう人間関係からはほど遠い世界なのです。

 

 

 

 

繰り返しになりますが、人と触れ合うためには、傷つくリスクを背負わなければなりません。

 

 

 

 

そして、傷ついてこそ、はじめて癒すことができます。傷つかなければ癒す手立てもできるはずがありません。

 

 

 

 

彼とわたしはそこにただ物理的にいるだけです。もちろん、それはそれで価値あることで、いないよりはいいです。

 

 

 

 

ですが、言葉は聞いても気持ちを聞けないやりとりでは、さらに関係を深めていくことはできません。

 

 

 

 

言葉の意味や事柄、内容は聞いても、言い尽くせぬ思いに心を傾けて聞く姿勢がないと、人間関係は枯渇していきます。

 

 

 

 

わたしは彼の事情を勘案しつつ、「来てほしい」と言ったのだから、「それなら」などと回避的な言い方をしないで、「ぜひ、うかがいます」とか、「とりあえず自分でしばらく考えます」くらいのことは言ってほしかったと思います。

 

 

 

 

それが生身の人間関係ではないでしょうか。傷つくリスクを背負わない人間関係は、石橋を叩いても渡れない不安を呼び起こし、ひきこもる環境をつくりあげていくだけです。

 

 



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