ひきこもりの就労支援
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ひきこもりの就労支援

2016年04月05日(火)10:16 AM

ひきこもりを呈している人の「その先の支援」のなかには社会参加の一形態として「就労」への支援が含まれます。

 

 

 

 

就労の問題は精神保健の分野において重要性は認識されてきたものの、行政としての方法論が明確に出されているとはいえませんでした。

 

 

 

 

これは保健所や精神保健福祉センターなど、精神保健にかかわる公的機関が、就労・雇用といった「労働」に関する問題を、通常の業務の範囲内で果たし得ないという問題があったためです。

 

 

 

 

しかし「ひきこもりガイドライン」の発行後、状況が大きく変化してきました。それは、いわゆるニート(NEET)問題の認知の増大と対策の拡大です。

 

 

 

 

ここ数年で急速に普及してきた用語ではありますが、NEETとはNot in  Education

 

 

 

 

Employment,   or    Trainingの略語であり、教育、雇用、職業訓練のいずれにもついていない若者を指します。

 

 

 

 

ある研究者によれば、その数は日本国内で40万人にものぼると言われています。

 

 

 

 

国も対策に乗り出しており、「若者人間力強化プロジェクト」として大規模な予算編成を行っています。

 

 

 

 

このニートのうち、少なくない割合がひきこもりの状態にあることは想像に難くありません。

 

 

 

 

両者の定義の差は「対人関係の有無」の一点にかかり、その境界はきわめてあいまいだからです。

 

 

 

 

ひきこもりの「その先の支援」である就労支援に精神保健の公的機関が手をこまねいている状況において、ニート対策のための資源の活用は、支援を大きく広げる可能性をもつものです。

 

 

 

 

無論、就労をひきこもり支援の絶対のゴールとしなくてはならないということではありません。

 

 

 

 

しかし、就労支援の場があるということは、ひきこもっている本人の生き方の選択肢を増やすことであり、その点は重視されてもよいとおもいます。

 

 

 

 

とくに、予算が十分に裏づけされていないひきこもり支援において、明確に事業化されつつあるニート支援はきわめて可能性を感じさせるものです。

 

 

 

 

このニート支援をひきこもり支援として活かせるのであれば、これにともない、これまでの保健にかかわる公的機関は一定の役割を分担できるはずです。

 

 

 

 

第一に、ニート対策におけるメンタルヘルス支援です。いわゆるひきこもり状態にあった人々が、一念発起してニート対策の場に直接トライするという状況も今後生じるでしょう。

 

 

 

 

無論、そのままニート対策の場で順調に回復・就労を果たす事例も少なくないでしょうが、ひきこもり事例においては、対人関係の不安などの心理的問題や精神疾患の問題などメンタルヘルス上の支援を必要とする事例も多いのが実際です。

 

 

 

 

こうした問題に苦しむ事例に対して、ニート対策の支援現場が困惑する事例も想定されます。

 

 

 

 

メンタルへルス側からの支援がない場合は、結果として「うちでは難しい」「ひきこもりやメンタルの問題をなおしてから」と、支援が十分になされない可能性も生じてくるでしょう。

 

 

 

 

米国における精神障害者のための個別的就労支援では、メンタルヘルス上の問題をすべて克服してから就労支援をするのではなく、困難をかかえながらもそれをつねに支えながら就労支援を行っていくという支援のあり方に価値観をシフトすることによって、大きな成果をあげています。

 

 

 

 

ひきこもり支援においても、この方法論は同様に適用可能であると考えられます。

 

 

 

 

保健所・精神保健福祉センターなどの公的機関が、就労支援の専門であるニート支援の場と連携しながらメンタルヘルス領域でのサポートを行い、就職活動への挑戦や職場への定着を支援することが期待されます。

 

 

 

 

第二に求められるのはケースマネジメント機能です。ニート対策の場が広がったとしても、ひきこもり事例においては、不安や緊張感からそこを訪れること自体が難しい、という問題があります。

 

 

 

 

ニート対策が就労支援の場として高い成果をあげるだけの機能を有していても、そこに至るまでの道筋を整える支援がなければ、ニート対策のひきこもりへの効果は限られたものになってしまうでしょう。

 

 

 

 

また、ニート対策の場では、「自立」「労働」という価値観が前提となるため、「やる気」に一見乏しいひきこもり事例が参加しにくくなったり、あるいはドロップアウトするという問題も場合によっては生じてくることが予測されます。

 

 

 

 

保健にかかわる公的機関の役割としては、まず家族支援や訪問、本人との接触を通じてこのようなニート支援の場へのアクセスを高める、またそれを外れた場合でも相談できる場になる、といったケースマネジメント機能を担うことが期待されます。

 

 

 

 

保健にかかわる公的機関は、就労支援そのものを行うことは難しいかもしれません。

 

 

 

 

しかし、当事者とニート支援の場をつなぐための場としては十分に機能することができるし、またその機能はニート支援からはなかなか行えないものです。

 

 

 

 

ニート対策が今後発展していくとしても、ひきこもり固有のメンタルヘルスにかかわる問題は存在し、その問題を担うはずの精神保健の公的機関に期待される役割はまだまだ十分に大きいでしょう。

 

 

 

 

ただし、このような役割分担は、自然には形成されがたいです。「縦割り行政」と批判されるわが国においてはなおさらでしょう。

 

 

 

 

ニートにおける雇用問題を扱う支援者と、ひきこもりにおける支援者との間で、おたがいがどのような機能をはたしているのかの情報交換を行うネットワーキングが必要になるのです。

 

 

 

 

このネットワーキングの責務は、保健にかかわる公的機関だけのものではありませんが、「ひきこもり」の問題においては保健所・精神保健福祉センターに一日の長があるのも事実です。

 

 

 

 

公的機関にはそのためのイニシアティブをとることを期待したいです。

 

 

 

 

 

「ひきこもりガイドライン」においては、「ひきこもりは精神的健康ととらえられ、その援助活動は精神保健福祉の領域に属する」と明言し、それを保健所・精神保健福祉センターなど「健康」にかかわる公的相談機関による支援の対象であるとしました。

 

 

 

 

そのことによって精神保健にかかわる公的機関がこの問題を認知したことは、大きな意義があると考えます。

 

 

 

 

しかし、ガイドライン中にもあるように「ひきこもり」は生物・心理・社会的な複合的な要因によって引き起こるものです。

 

 

 

 

ひきこもり支援における公的機関といえば、精神保健にかかわる公的機関が第一に想定されますが、本来的には教育・労働・福祉などさまざまな領域の機関がかかわって支援すべき問題です。

 

 

 

 

昨今、ひきこもり支援に関する議論の場では「社会的排除」という言葉を目にすることも多くなりました。

 

 

 

 

社会的排除とは「元気な青年・成人たちをつかみ、失業または不安定雇用を出発点として、生活の不安定化、住宅状況や健康の弱化、社会的地位の劣化・低下、さらには家族関係や私的援助、そして社会(人間の共同社会)そのものから脱落という全過程を把握する概念」です。

 

 

 

 

ひきこもりとは、いわば社会的排除の一類型であるともいえるでしょう。たしかに、ガイドラインは「ひきこもり」を精神保健福祉の問題として公的に認めた部分があります。

 

 

 

 

それはこれまで各機関をたらいまわしにされがちだったこの問題への、支援の責任の所在をまず同定する必要があったからです。

 

 

 

 

ひきこもりの多くは心理的な支援を要し、またとき精神医学的な問題が背景に存在する場合もあることから、そこで支援が行われることは基本的に妥当でしょう。

 

 

 

 

だがしかし、「社会的排除」というマクロな視点に立てば、社会構造から発生する問題を、ミクロな個人のメンタルヘルスの問題としてすべて回収することができないことは自明です。

 

 

 

 

「ひきこもり」への対策にあたっては、精神保健の支援機関だけが特権化されるべきではないといえるでしょう。

 

 

 

 

すなわち、教育・労働・福祉などの公的機関もまた支援を行いうる機関であり、これらと精神保健機関がマクロな支援のネットワークを組むことで、より有効な支援を提供できるのです(これは地域社会の再設計という側面もある壮大な試みではありますが)。

 

 

 

 

予想されるニート対策という労働領域との連携は、その橋頭保でしょう。こうした複合的な支援のネットワークにおいては、精神保健の機関は頂点に立つのではなく、「人の生活」という大きな課題のなかで、メンタルヘルス支援を担う一翼として位置づけられるでしょう。

 

 

 

 

そのときには、ひきこもりをしている者の支援としても、より包括的な支援のための新たな公的指針が出されるべきであり、現行の「ひきこもりガイドライン」はそのなかに吸収されるような形になると思われます。

 

 

 

 

そうした取り組みを推進するために、先行者として精神保健の領域の支援機関がリーダーシップをとっていく必要があります。

 

 

 

 

そこにいたるまでに参照される過渡的な公的指針、望むらくは将来的に捨て去るべき梯子として、ひきこもりガイドラインは、その意義があると考えます。

 

 

 

 

 

 



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