家庭内暴力の犠牲者
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家庭内暴力の犠牲者

2016年03月24日(木)8:07 AM

警察庁は毎年、あまり世間には知られていない統計を出しています。それは、「少年の家庭内暴力が、誰に向けられているか」という統計です。

 

 

 

 

平成17年度は、家庭内暴力が報告された1275件のうち、773件、つまり全体の約6割が、母親を対象とした暴力でした。

 

 

 

 

いっぽう、父親に暴力をふるうのは111件で、全体の1割にも満たないのです。

 

 

 

 

家財道具などに向けられた暴力が188件ですから、それよりも少ない数字です。

 

 

 

 

こちらの統計も同じく19歳以下を対象にしたものですが、こちらの数字はわたしの実感とも概ね重なります。

 

 

 

 

関東自立就労支援センターにいる若者のケースを見ても、その家庭内暴力のほとんどが、母親をターゲットにしたものだからです。

 

 

 

 

家庭内暴力の犠牲者になるのは、毎回、圧倒的に母親です。なぜ、母親がターゲットになるのでしょうか。

 

 

 

 

原因は大きく分けて三つあると思います。ひとつは、物理的に母親のほうが、子どもと向き合う時間が長いからです。

 

 

 

 

外で働く父親に比べて家事を取り仕切る母親は、家にいる時間が父親に比べて圧倒的に長いのが普通です。

 

 

 

 

そのため、ひきこもった子どもと接する時間も、当然長くなるのです。子どものなかで「マグマ」が溜まって、ある日突然何かのきっかけで爆発する・・・・そうやって暴力に走る時、目の前には母親しかいません。

 

 

 

それで母親に矛先が向かうのです。二つ目の理由は、「母親への依存と甘え」が子どもの側にあるからです。

 

 

 

 

子どもにとって自分を産み、育ててくれた母親というのは、いつまでたっても「依存と甘え」の対象です。

 

 

 

 

父親に比べ、精神的なつながりが濃くて、強い(とくに息子にとっては、父親というのはどこか「他人」というところがあるものです)。

 

 

 

 

そんな「依存と甘え」から、母親への「執着」も生まれます。べったりと寄り添うあまり、母親から離れられなくなるのです。

 

 

 

 

母親が逃げ出しても、執拗に追いかけては探し出し、暴力をふるう若者もすくなくありません。

 

 

 

 

だけど根底では、子どもは母親思いです。母親を愛しています。「お母さんに申し訳ない」

 

 

 

 

ひきこもっている若者というのは、多くの場合、そう思っています。愛する母親の期待を裏切っているということで、自責の念を強く持っています。

 

 

 

 

「お母さんは家族の中でいちばん優しくて最大の理解者なのに・・・・お母さんに申し訳ない」というわけです。

 

 

 

 

だけど、そうは思うけれど、どうすることもできません。現状を変えることも、自分から一歩踏み出すこともできません。

 

 

 

 

それで今度は、こう思うようになるのです。「そもそも、母親が期待したから悪いんだ」

 

 

 

 

「母親のせいで、こうなってしまったんだ」自分では解決できないことを、すべて母親のせいにしてしまうのです。

 

 

 

 

ここにも母親に対する「依存と甘え」が含まれています。母親になら八つ当たりをしてもいい、自分の気持ちをわかってくれるはず・・・・・そんな思いを心のどこかに抱いています。

 

 

 

 

そしてそれが、暴力を母親に向かわせてしまうのです。

 

 

 

 

しかし、この2つだけが原因ではありません。もう一つ、「母親の無力さと愛情の深さ」が、暴力を母親に向かわせる最大の原因だとわたしは考えています。

 

 

 

 

「愛情の不足」ではなく(ほとんどの母親は「自分の愛情が足りなかったから、暴力をふるう子になってしまった」と思っていますが)、その逆で「愛情の深さゆえのもつれ」こそが、母親に暴力を向かわせてしまうのです。

 

 

 

 

たしかに、小さいころから子どもをいつも傍らで支え、助けてきたのは母親です。

 

 

 

 

母は子どものいつもいちばんの理解者でしたし、泣けば子どもを抱きしめてあげたり、なんでも相談にのってアドバイスをしてきたのも、ほとんどの場合、母親でしょう。

 

 

 

 

そんな母親の愛情は、たしかに幼少期においては、子どもの成長にとって必要不可欠なものです。

 

 

 

 

しかし、そんな万能だった母親も、子どもが大人の年齢に近づくにつれて、徐々に無力な存在になっていきます。

 

 

 

 

きつい言い方になるかもしれませんが、いまの母親のなかで、いったいどれほどの方が、子どもが進路で迷ったときに、さまざまな経験と知恵に裏打ちされた的確なアドバイスができるでしょうか。

 

 

 

 

子どもがニートやひきこもりになったときに、子どもの未来が開けるような現実的かつ有益なアドバイスをできる人が、どれほどいらっしゃるでしょうか。

 

 

 

 

いまの母親には、残念ながら、社会経験や人生経験を通した培って社会性を持っている方がとても少ないです。

 

 

 

 

だから、子どもが行き詰ったときにも、「大学くらい卒業していないと、苦労するわよ」「バイトじゃなくて、正社員で働きなさいよ」くらいの、月並みなことしかいえないのです。

 

 

 

 

子どもは、そんな母親に深く失望します。かつて万能だった母親は、じつは社会性に乏しく、もはや自分の未来を打開してくれる力が何もないことに気がつくのです。

 

 

 

 

もちろん社会力、問題解決能力に乏しいのは、父親だって同じです。父親だからといって、経験や知恵がさほど多いわけではありません。

 

 

 

 

人生経験や社会経験の数なんて、似たり寄ったりでしょう。ただ母親と違うのは、父親にはそれに対する自覚があることです。

 

 

 

 

「子どもにどうアドバイスしていいかわからない」という意識が、心のどこかにあります。

 

 

 

 

社会性の乏しさをどこかで自覚しているため、子どもに執拗に関わろうとはしないのです。

 

 

 

 

だけど、母親にはその自覚がありません。相変わらず、子どもが小さいときと同じように、「自分が助けなければ」と思っています。

 

 

 

 

「自分が助けてあげたい」と思っています。つまり、子どもが大きくなっているにもかかわらず、小さいときのままの「わたしが何とかしなければ」という態度で子どもと接してしまうのです。

 

 

 

 

もはや子どもを助ける能力がないにもかかわらず、あれこれ子どもに執拗に関わろうとするのです。

 

 

 

 

それに子どもは苛立ちを覚えます。あれこれ月並みな、小言としか思えないようなことばかりを繰り返す母親に対して、イライラしてくるのです。

 

 

 

 

「うるさい!そんなことはわかってる!」

 

 

 

 

「お前の声は、うざいんだよ!」

 

 

 

 

こうして暴力は、子どもにとって最愛の母親へと向けられてしまうのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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