ひきこもりの家族支援のポイント
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ひきこもりの家族支援のポイント

2020年10月22日(木)12:50 PM

 

 

 

 

ひきこもりの場合、ひきこもっている人にじかに会えないことが多いことから、現在のひきこもりの状態像がとらえにくいうえ、家族は将来に不安を抱いて早期の改善を期待する傾向にあります。

 

 

介入がとても難しく、どうすればよいのか支援者が悩むことも多いのが現状であるとすれば、ひきこもりの人を支える家族にとって期待される「早期の改善」はなかなかひきこもり支援のなかでは結論をすぐに出すことはできません。

 

 

そのため、相談機関へ行く理由を見出すことができず、途中で支援が切れてしまうこともしばしばあります。その結果、家族だけで抱え込んだ対応が進められて、さらに難しい状況に陥ってしまうことも珍しくありません。

 

 

煮詰まらない、余裕のない家族関係を今後予防するには、とりあえず家族が行わなければならない場面として次の三つの点が必要となります。

 

 

①家族だけでも相談は継続しましょう。

 

 

②地域にある多様な支援サービスを把握し、活用を検討してみましょう。

 

 

③家族が健康を大切にしてもっと自分の時間を作りましょう。

 

 

早急にひきこもりの解決の糸口が見えなくても、日頃の不安や悩みを聞いてもらうことは家族支援ではとても重要です。一人で悩むよりも、二人、三人と家庭内で抱え込まずに専門職の視点を取り入れて客観視して進めていきましょう。

 

 

その意味で、面接相談を途中で止めないで息長く①家族だけでも相談を継続することが大切であり、その場面を通してひきこもりの家族会など②地域にある多様な支援サービスを把握し、活用できるものがあれば家庭に持ち帰って検討してみましょう。

 

 

そして、③ひきこもりの我が子のことばかり考えこむのではなく、家族がもっと自分の健康を意識して、自分のことに使う時間を作る、ということが必要です。

 

 

特にこのなかでひきこもりの人本人側の視点から家族に望む事項として多く挙げられるものが、③の家族の健康を大切にしてもっと自分の時間を作ろう、です。

 

 

ひきこもりの我が子がいるからといって家族が外出を控え、なかには仕事を辞めてしまったりして家族が一日中家庭に留まる事に対するひきこもりの人の苦痛や、ひきこもりの人に気を使いすぎて将来のことや今後の進路のことなどを極端に触れない行動に対して逆に疑心暗鬼に陥るひきこもりの人がいることも確かです。

 

 

家族が楽になれると言ってもなかなかそうなれない家族の心情は理解しつつも、どこかで家族が自分の時間を作ることは、時には愚痴を言う機会として家族の心のスイッチをいったん切り替えることのみならず、ひきこもりの人への見えない圧力感を軽減することにも繋がる側面があります。

 

 

また、家族がひきこもりの人とも不自然さや不器用さを恐れずに本人と接し続けることも大切です。ひきこもりの人にどんな言葉かけがいいのかということよりも、家族がそうした不自然さや不器用さを恐れずに「あなたと話をしたい」という態度をもつことの方が大切ではないかと思われます。

 

 

もちろん、家族のなかには対話が苦手で、我が子と向き合うことが難しい家族もいることも承知しています。すでにその段階で、「うちの子供はどうにもこうにもならない」という困った空気が流れているとなおさらのことです。

 

 

そうした感情的になりやすい家族には、手紙やメモという補助的手段を活用することをはじめ、専門職などと一緒になって話を進めることも良いでしょう。私たちの支援団体は、手紙や電子メールをいわばひきこもりの人との接点をもつ重要なツールとして活用を行ってきました。

 

 

メールや手紙には次のような利点を見つけることができます。①自分の都合のよい時に好きな場所で書いて読むことができます。時間や場所に拘束されないワンクッションおいた関係でコミュニケーションができます。ひきこもりの人にはこうした拘束されない会話の方が話しやすいという利点があります。

 

 

またさらに、②音声はその時、その場限りで消滅していく性質をもっていますが、文字は保存され、蓄積されていくため、自分や相手が書いた内容をいつでも振り返ることができます。読むその時々によって感じ方や捉え方は異なります。保管していた手紙やメールをもう一度改めて読んでみて、理解できたということもよくあります。

 

 

そして最後に、③さまざまな角度からじっくりと読み返し、客観的に検討を加えたり、自己を見つめ直すことが可能です。メールや手紙によって文字化するということは、内在する絡み合った気持ちを書くという行為を通して解きほぐす作業としての利点をもちます。

 

 

書き続ける日記もその一つかもしれませんが、他人に理解させる手紙やメールだけではなく、他人に伝えることを意識しつつ自己と向き合うための手紙やメールとしての役割もまたあると言えます。実際、こうした手紙による相談活動に対して、ひきこもりの人からの反応も良いのです。いくつか紹介しますと、次のような感想が寄せられています。

 

 

〇「メールや手紙で悩みを聞きます、という文章を見つけてとても嬉しかったです。電話はかけにくいし、手紙なら思ったことが書けていいと思いました」

 

 

〇「手紙やメール相談の対象に年齢制限がないというのが嬉しかったです。35歳以上のひきこもりの相談窓口はまだまだ少ないのが現状です」

 

 

〇「メールや手紙でのやり取りの時間的ゆとりが時間に追われ疲れた人間には、ちょうどいいです」

 

 

ただし、こうした手紙も最近は電子メールが普及し、いとも簡単に発信できる状況にあるため、文字だけでは相手の感情を掴むことが難しく、また誤解を招くところもあるので、手紙の頻度、話の密度、活用方法を考慮して行わなければなりません。

 

 

また一回限りのメールや手紙のやり取りで終わらせないようにします。再びメールや手紙を出してみようと思えるように働きかけることが肝要です。できるだけ重要な話は、やはり対面で実施することが大切ではないかと思いますので、その対面相談への誘いかけの方法の一つとしてメールや手紙を補助的に活用していくことが求められます。

 

 

また、親子関係が断絶状態の我が子とどのように接し、会話すればいいのかという課題が家族支援のなかにはあります。声をかけても返答がない、親を避けるように行動する、食事も一緒にとらない、何か不機嫌になったりイライラしてくると暴れて物を壊すなどがそれです。

 

 

親子関係がうまくいっていない時によく見られる行為です。ひきこもりの人の気持ちの表れ方で家庭内暴力は人に対する暴力と物に対する暴力があります。いずれにしても暴力は、家族のみの関係性のもとに発生することが多く、これら暴力に対して親が無力感に陥ることがあります。

 

 

こうした我が子になってしまった親に子育ての責任を認めさせ、いわば子供の言いなりになるというのはその典型例かもしれません。

 

 

ですが、おそらくひきこもりの人もまたどこかで親にわかってほしいと理解を求めているでしょうし、こうした暴力によってすべてが解決するものではないことは本人が一番理解しています。暴力が終わった時の本人の空虚感はそれを物語っています。

 

 

親が子供に心を開いてもっと体当たりしてきてほしいと望んでいるひきこもりの人も多くいます。どこか当たらず触らずという他人行儀な親子関係にイライラするひきこもりの人は多いのではないでしょうか。

 

 

いわば、親の態度がここぞという時に試されているのかもしれません。当面できることを言えば、先に示した継続相談を柱とする①②③を基本としつつ、返答がなくても声かけをする、親ができないことをお願いしてみる、メモによる伝達、手紙や電子メールなどです。これまで渡してきた手紙やメールに返答がなくても見返りを求めないことが大切です。

 

 

 

家族支援における父親の役割

 

 

 

最後に家族支援のあり方で父親の役割として、ひきこもりの我が子や妻である母親に対してできることはあるのかということを述べてみようと思います。

 

 

昨今の不登校の家族会とひきこもりの家族会の大きな違いといえば、ひきこもりの家族会のほうが父親の参加率が比較的高く見られるという傾向です。

 

 

父親が会社を定年退職し、家族として時間がもてるようになって、母親と一緒に、または父親が母親より先に相談場面に訪れることが見られるようになってきました。それはひきこもりの家族支援を考える上でひとつの大きな動きです。

 

 

これまで父親は仕事一筋で、ひきこもりの子供のことは妻である母親任せにしてきたこともあり、ひきこもり本人との接し方に対しては苦手意識をもっている父親は多いようです。しかし昨今のひきこもりは全体の約7割が男性であるという認識からすれば、母親だけではなく、父親の存在と役割は大きいことは明らかです。

 

 

前述してきたように、ひきこもりの家族会では、定年退職を契機に我が子と向き合い始めた父親たちがいます。例えば、父親が体力作りをしたいと言う我が子と公園でランニングをする、登山に出かける、釣りに出かける、一緒に畑仕事をしてみるなど、父親だからできる行為を我が子と一緒に楽しむ姿が見られます。

 

 

また、今は直接的に我が子との関係性は難しくても、間接的にひきこもりの家族会に参加することで、他の家族のひきこもりの当事者達と楽しく居酒屋で会話し交流する父親の姿も見られます。

 

 

父親が定年退職を契機に田舎に転居して農業の取り組みや、コンビニエンスストアを家族ぐるみで自営し、ひきこもりの人の自立を模索する家庭も見られます。また、ひきこもりの家族会として父親だけの独自の集まりとしておやじの会を運営しているところもあります。

 

 

さらに、疲れたと語る妻の背中や肩をそっと優しく叩き揉む姿や、疲れた妻に代わって家事を手伝う姿もあります。どれもこれも父親がなすさりげない技でもあります。

 

 

家族がそれぞれの弱点を批判し合うのではなく、親としての苦労を共に背負い、感情的にならず理性的にお互いに助け合っていくところにこれからの家族支援のありようがあると言えるでしょう。

 

 

 



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