病的なナルシシズムが引きこもりを引き起こす
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病的なナルシシズムが引きこもりを引き起こす

2020年10月19日(月)9:06 PM

 

 

 

病的なナルシシズムを生み出す家庭環境、家族関係とはいったいどのようなものなのでしょうか?通常の家庭で、赤ん坊が一番多く接する人物は母親です。当然ながら、女性しか子供を産むことができませんし、幼児を腕に抱えて授乳するのも母親の役目です。

 

 

その意味でも、他の家族の誰よりも母親との関係が子供にとって、もっとも強固で親密なものとなります。生まれたての赤ん坊は全く無力な存在です。赤ん坊にできることは、親に助けを求めるためにただ泣くことだけです。生きるためには、完全に親に依存せざるをえないのです。

 

 

赤ん坊は生後6ヶ月から8ヶ月ぐらいまでの間まで、自己感覚が曖昧なままであり、子宮の中にいた時と同様に、母親を自分の身体の一部だと感じています。人間の赤ん坊は、生理的に極めて未熟な状態で生まれてきます。母親の胎内では、完全に成熟しません。

 

 

心理学者のJ・ボストックは、さまざまな哺乳類の妊娠期間を調べた結果、二つの原理が妊娠期間の長さを決定しているのではないかと指摘しています。一つは「最適期間の原理」で、もう一つは「特殊適応の原理」といいます。

 

 

まず、「最適期間の原理」とは、妊娠には最適な期間というものがあって、それは赤ん坊が、起こりうる危険をある程度自力で回避できるように、母胎の中、神経、筋肉、骨格が十分発達するまでの間のことをいいます。

 

 

例えば、草食動物などは生まれてすぐに自力で立って歩けるわけです。次に、「特殊適応の原理」とは、母胎や胎児あるいは双方の身体の安全のために、赤ん坊がまだ未熟な段階で妊娠期間を終えて出産し、その後体外で妊娠を補います。

 

 

例えば、有袋類の新生児は、出産後母親の袋の中で十分に成熟するまで、ずっと守られて育てられます。そして、このような「特殊適応の原理」は、私たち人間の場合にも当てはまるのです。人間の赤ん坊は頭が大きすぎるため、産道をかろうじて通り抜けられる程度の未熟な段階で出産せざるをえません。

 

 

それ以上赤ん坊が母胎の中で成熟すると、帝王切開などの非自然分娩に頼らざるを得なくなります。そのような理由から、誕生してもなお、赤ん坊は依然として未熟なままなのです。「ネオテニー」(自然誌選書)の著者Aモンターギュは、通常の母親の胎内における妊娠のことを「体内妊娠」、出産後の体外における妊娠のことを「体外妊娠」と、分けて考えるべきだと主張しています。

 

 

出生のプロセスにおけるさまざまな変化はあっても、赤ん坊は依然として妊娠期間を続けているのであり、出産というプロセスを経て体内妊娠から体外妊娠に入っただけなのだということを理解しなければならない。

 

 

モンターギュはこの体外妊娠の期間を、誕生寺からはいはい、つまり四足歩行の始まりに至る約十か月間を指すとしていますが、これはちょうどコフートのいう凝集的自己期が終わり、赤ん坊の自我が生まれ始める時期とだいたい一致しています。

 

 

つまり、出産によってこの世に生み出されたといっても、赤ん坊は依然として妊娠期間を続けているのであって、出産というプロセスを経て「体内妊娠」から「体外妊娠」に移行しただけなのです。それゆえに、誕生後一年までの赤ん坊は、母親によって安定した状態で育てられる必要があります。「抱き癖がつくから・・・・」などの理由で、よくたとえ泣いても構わず放っておくのは、かえってよくないかもしれません。

 

 

外的妊娠期間に移行しただけの状態の赤ん坊の欲求は、すべて叶えられなければなりません。抱きかかえてあやしたり、優しく話しかけてあげたりする母親の献身的な養育がなされることが必要なのです。もし、赤ん坊がそれを与えられずに成長すると、感情や人格などの人間性、つまりヒトらしさの育まれなくなる場合があります。

 

 

「アウ”エロンの野生児」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?1977年にフランスのアウ”エロンの森で発見された野生児のことで、発見された当時の推定年齢十一歳から十二歳まで、動物などの助けを借りず、独力で木の実などを頼りに生きながらえてきたということです。

 

 

当然、彼は言語を話すことができず、怒りを表すことはするものの、それ以外の泣いたり笑ったりという感情を示すことはできなかったということです。その後、野生児は医師イタールのもとで六年間教育を受けることになりましたが、それでもほとんど言語を習得することができず、同年齢の通常の人間と比べ、あらゆる点で発達が遅れていたそうです。

 

 

私たち人間がヒトらしさを形成していく上で、その臨界点といえる期限が、出生からのある一定期間に設けられているようです。その臨界点に達する以前、基本的なヒトらしさを子供に植え付けていかない限り、子供が人として成長していくことが出来なくなってしまうのです。

 

 

野生児の場合は極端な例ですが、私たちの身近なところにもその一端を伺わせるような事例があります。それは、近年増加傾向にあると言われる「サイレント・ベビー」です。サイレント・ベビーとは、表情に乏しく、泣いたり笑ったりしない赤ん坊のことを言います。

 

 

この現象は、会話やスキンシップのない母子関係の中で育ったことが原因で、赤ん坊が心を閉ざしてしまったために起こるもので、感情を表現することができないのです。サイレント・ベイビーがそのままの状態で成長していけば、他人とのコミュニケーションに支障をきたすようになることは容易に想像がつきます。

 

 

イギリスの精神分析J・ボウルビィは、「乳幼児の母親、またはそれに代わる母性的養育者との人間関係が、親密かつ持続的で、両者が満足感と幸福感によって満たされるような状態が、精神の健康の基本をなすものである」と言っています。

 

 

そして、このような精神の健康さえ形成されていれば、その後の人生におけるあらゆる葛藤や困難をも克服していくことができるというのです。その一方で、母性的養育を剥奪された赤ん坊は、母親から引き離された直後は泣きやすく気難しくなり、徐々に体重が減少するなどの変化が起こりますが、さらに三か月ほど経つと、もはや泣いたりぐずったりといった反応がなくなり、顔からも表情がなくなっていきます。

 

 

幼児は自分を受け入れてくれない外界から引きこもり、自分の世界に閉じこもってしまうのです。このことから、いかに生後一年以内の赤ん坊にとって、母性的養育が必要不可欠であるかがわかることと思います。

 

 

アメリカの心理学者E・エリクソンは、生後約一年までに幼児は外界に対する基本的信頼感を身につけるといいます。この基本的信頼感とは、「私はこの世に受け入れられているんだ。信頼していいんだ」という、人がこの世で生きていく上で欠かすことのできない心の拠り所になる信頼感や安心感です。

 

 

私たちが人として人間らしく成長していくためには、この時期に自我が生まれ、その上にパーソナリティーが形成されていくことが必要です。そのためには、自我が形成される時期に母子関係が親密であり、また持続的であることが不可欠なのです。

 

 

もし、生後一年前後までに親密で継続的な母子関係が構築されない場合には、幼児は外界に対して基本的な不信感を抱いてしまい、その後の人生のあらゆる局面において悪影響が表出されるということです。

 

 

コフートの言うように、生後六ヶ月から三歳までの凝集的自己期において、母親が赤ん坊の欲求が満たされるように、褒めたり共感してあげることで、子供は自信を持って後々の人間関係において自分自身をうまく表現し、自己主張していくことができるようになります。

 

 

しかし、この時期に母親またはその代わりになる人物に適切に養育されなかった子供は、徐々に親からの共感や理解を諦めるようになってしまい、その代わり、彼らは大きくなってから自分で自分自身を満足させ、慰めるために自己顕示的な行動をとるようになっていくのです。

 

 

非行に走る少年少女達の奇抜な言動にも、まさしく幼児期での親の不理解が影響している場合があります。また、他人に認められないような孤独感、疎外感を感じてしまえば、彼らはそんな自分の人生に絶望し自傷行為に走ったり、最悪の場合自殺さえ選んでしまうでしょう。

 

 

彼らは自分のことをもっと理解して欲しいし、もっと褒めてもらいたいし、認めてもらいたいのです。ほとんどの引きこもりの人たちは、自分自身に対する自信のなさを口にします。自信がないということを心理学では、「自己評価が低い」と言いますが、自己評価が低いのは強固な自我が形成されていないからです。

 

 

自我の確かさは、その人のパーソナリティ形成の基礎となるものです。パーソナリティが健全に発達しなければ、人間関係に食い違いが生じるようになってしまいます。それゆえに、確固たる自我形成こそが、その人が生きていく上で必要な「自分が自分である」という感覚、アイデンティティの基礎になるのです。

 

 

もちろん、私たちの自我は一旦形成されたら死ぬまでそのまま固まってしまうというものではありません。常に揺れ動きを経験しながら、強化され成長を続けていくものです。特に、ホルモンバランスの変化する思春期や更年期には、私達の自我も大きく揺れ動きます。

 

 

幼少期において、基本的信頼感を身につけ、確固たる自我を形成した人ならば、そのような不安定な時期も、ある程度の心理的葛藤を経験しながらもなんとか乗り切ることができるでしょう。しかし、幼少期において基本的信頼感を身に付けることに失敗し、そのため強固な自我形成がなされなかった人は、簡単に自我が崩壊し、神経症やパーソナリティ障害など、何らかの精神疾患の症状を呈することになるでしょう。

 

 

このように、母子関係は子供にとって、その後におけるあらゆる人間関係の原型になるものです。ですから、幼児期における母親の養育は、子供にとって生涯にわたる重要な問題であると言えるのです。

 

 

 



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