引きこもりのカウンセリング実例~高校中退後、10年間の引きこもりの息子~
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引きこもりのカウンセリング実例~高校中退後、10年間の引きこもりの息子~

2020年10月14日(水)7:16 AM

 

 

 

母)息子は不登校から高校を中退し、部屋に引きこもったままの生活を続けています。家族を含めて誰とも話をしようとしません。時々、自分の部屋でテレビを見ながら笑っている声が聞こえますが、それ以外は声も聞いたことはありません。食事も夜中に台所で食べています。学校に行って欲しいとはもう考えてはいませんが、親も年を取ってきていますし、いつまで息子を養っていけるか心配です。息子も楽しくないと思います。なんとか社会に出してあげたいと思っています。どのように対応していけばいいのでしょうか?

 

 

私)現在、息子さんは26歳ですね。不登校になったのは高校1年生の時ですから、もう10年近く引きこもっているのですね。ずっと、引きこもっているのですか?

 

 

母)ほとんど引きこもっていますね。家族が留守をしている時はわかりませんが、家族は息子が外出したのを見たことはありません。

 

 

私)奇異な行動とか暴力を含めて、家族に危険なことや非常に迷惑な事などの行動における問題はないですか?

 

 

母)特にありません。私たちが、「学校に行きなさい」「仕事をしなさい」などと言わなければ、静かに何事もなかったかのように生活しています。ほとんど自分の部屋からは出てきませんし、生活していても影が薄いのです。私たちにとっては精神的には重たいのですけれど・・・・・・。良いと言われる精神科医に何箇所も相談に行ったのですが、「精神病の疑いは今のところありませんね」「もしお困りならば、抗うつ剤でもお出ししましょうか」と言われてお薬を処方してもらうのですが、本人は飲もうとしません。こっちが飲みたくなるぐらいです。親としては、病気でないことで安心するのですが、毎日の生活は何も変わっていかないのです。20歳までは、父親が時々「これからどうするんだ?」と話をしようとしたのですが、ますます引っ込んでしまうので止めました。

 

 

私)お困りですね。引きこもりには特効薬がないので、同じような状態像が続いてしまうのですね。本人を動かすためには、家族の持っている資源・状況(自営業・親戚・友人・退職・引っ越しなど)を活用して、ケースバイケースで対応する必要性があります。ここで言う資源とは、土地・家・預金・現金・自営業の場合はお店や事務所・工場・農地・協力者などです。また、反対に財産がないこと、借金が資源になる場合もあります。状況とは、親の退職・家族の人の死・祖父母との同居や別居などを言います。この資源や状況の使い方がとっても難しいのです。

 

 

引きこもりの人たちは、精神的には親と自分の区別ができるのですが、経済的には親のお金は自分のお金という感覚がいくつになってもあるようです。ですから、資源や状況は薬と同じで、「薬にもなるし毒にもなる」のです。例えば、親にお金がなければ困りますが、ありすぎるとそれに頼って、いつまでも働こうとしません。土地があればそれを活用して、駐車場を作り管理をさせてアルバイト料を出すとかするといいのですが、その土地を処分するとそのお金をあてにするなど、色々と難しい点が出てきます。引きこもりが長引いたケースでは、外で働くことよりも、家の中にそのような資源や状況があれば、それを「子供の自立のためにどのように活用するのか」からスタートした方が、社会参加しやすいようです。

 

 

家庭にある資源や状況を利用して引きこもりから社会参加した実例には、

 

 

〇車庫を改造し、クリーニングの取次店を開店し母子で仕事(28歳・娘・引きこもり歴8年)

 

 

〇家業である保険代理店の事務仕事の手伝い(22歳・息子・引きこもり歴7年)

 

 

〇退職を境に自宅を処分して、りんご農家を購入、父子でりんご農園の経営(29歳・息子・引きこもり歴7年)

 

 

〇父親がサラリーマンをやめ、マンションを売って店舗付き住宅を購入し、ペットショップとペットホテルを始め、息子に手伝ってもらう(26歳・引きこもり歴5年)

 

 

〇父親のリストラ、軽トラックによる配送の下請けを始め、自宅を事務所・倉庫にして息子に手伝わせる(21歳・引きこもり歴5年)

 

 

〇母親が勤めをやめ、父親が資金を出し、コーヒー店を始め、娘が手伝いを始める(22歳・引きこもり歴3年)

 

 

〇父親が会社を辞めて自宅を処分して、リゾート地にペンションを新築し、息子に手伝ってもらう(23歳・引きこもり歴6年)

 

 

などがあります。また、このような引きこもりの実例から社会参加するためには、共通のプロセスがありました。そのプロセスは、

 

 

①精神疾患を伴う引きこもりでないこと。精神疾患を伴う場合は、保健所や精神保健福祉センターなどに相談しましょう。

 

 

②自室に引きこもって、家族との会話が成立しなくても、親の考えや気持ち「家族はあなたの支援者であること」「心配していること」「手助けが必要ならば、援助すること」など、精神的な支援や援助は出来る限りすることを、筆談などで十分に伝えておくこと。

 

 

③精神的には十分に支えるが、経済的援助には両親の年齢もあり、限度があることなどを次に伝えておくこと。引きこもりが長くなり年齢が高くなってくると、本人の心の中に「葛藤」が起きても、自分自身で合理化してしまい、心の揺れが起きなくなります。そのためには、経済的なことは具体的に話さなくてはいけません。子供の自立を考えると、親のリストラや定年退職も一つの良い状況と考えられます。

 

 

④多くの引きこもりの人は対人接触を避けるために外に出られません。その人たちに「学校に行け!」「アルバイトでもしろ!」と言っても無理があります。自宅でできる仕事で、誰か信頼のおける人と一緒にだったら働ける可能性が高いです。

 

 

⑤「このままでは家が破産してしまう」「家の仕事を手伝ってほしい」「お前の力を貸して欲しい」ということを、具体的に父親(経済の中心になる人)が話します。そして、手伝える範囲でいいからお願いしたい、手伝いといっても世間並みのバイト料は払う、そこから自分の生活費を出してほしいと約束します。

 

 

母)財産なんてなんにもないのですよ。古びた家があるだけで・・・・・・。

 

 

私)「ない」ことも財産なのですよ。皆さんそうなのですけど、「働かなければ、生活していけない」という状況を上手に活用することです。活用の仕方は、その家族の状況や引きこもりの程度でも違うので、ケースバイケースになりますけどね。ご主人や他のお子さんは何をなさっていますか?

 

 

母)主人は住宅メーカーの営業マンですが、来年の3月には定年退職します。退職金でしばらくはやっていけると考えていたのですが、管理職になってから不況が長引いたために、会社の業績が悪く、退職金はほとんど期待できない状態なのです。まだ60歳なので、本人は関連の子会社に再就職しようとしているのですが、建築関係の不況はひどく、どこの会社もリストラをしているようなのでまだ目処が立っていません。給与などの条件をすごく落とせば、就職口はあると思いますが・・・・・・。子供は3人で、この子の3つ上に姉がおりまして、去年結婚して家を出ました。4つ下の弟はまだ大学生です。

 

 

私)どこの家も大変ですね。でも考え方によっては、息子さんを自立させるためには大きなチャンスが来ているとも考えられますね。今の状況を活用しましょう。今がチャンスです。

 

 

母)どうしたらいいのでしょうか?

 

 

私)最初に筆談で家の経済的な状態を正確に伝えましょう。そして最後に、「今すぐ大変になるわけではないけれども、退職する来春から少しずつ大変になると思うから考えてほしい。どうするかについて、心配や相談事があるときはいつでも相談にのる」ということを付け加えておいてください。

 

 

母)正直に家の経済状態を伝えるのですね。

 

 

私)はい。次にご主人との話し合いが必要です。ご主人は再就職なさるでしょうけど、これからどうするか。ご自分のこれからの生き方、家族のありようなど、ご主人の意見を充分に聞いてください。

 

 

母)そうですね。主人の意見も聞かないといけませんね。私はパートで働くよりも、息子が働いてくれるならば一緒に働きたいと思います。何をするかについては見当がつきませんが・・・・・・主人と相談してみます。

 

 

2週間後、父親を伴って母親がカウンセリングに来られました。

 

 

母)前回おっしゃったことを主人に話したら、自分もカウンセリングに行って色々相談したいと言うので一緒に来ました。

 

 

私)よくいらしてくれました。プロセス(前述)を詳しく説明しましょう。(省略)

 

 

父)精神的にも経済的にも支えるのか。何にもしないで飯を食わせていることも、考えてみれば経済的に支えることですしね。いつかは自然に大人になって、家を出て行き自立すると思っていたのだけれど、25歳になっても、手取り足取りしないといけないのですね。

 

 

私)普通はお父さんの言うとおり、自然に自立していくのですけれど、引きこもりの人たちは待っているだけではなかなか自立していきません。精神的にも、経済的にも援助が必要です。しかし、やりすぎてしまうと甘えや依存が強くなるために、違う意味で自立しなくなります。その加減が難しいのですよ。

 

 

父)私と息子で何か商売と言ってもできないしなあ。女房と息子で商売と言っても、家は袋小路の中で場所が悪いですよ。息子の今の状態では接客仕事はできないし、何かやれる仕事なんてあるのでしょうかね。内職仕事ではやらないと思います。

 

 

母)私はスーパーで長いことパートで働いてきたので、何か商売したいなと以前から考えていたわ。場所の問題は、お父さんが良ければ住宅が狭くなるけど、今の家を処分して小さな店舗付き住宅に買い換えればいいと思うわ。

 

 

父)そんなに商売は甘くないよ。その上、この不景気で倒産する会社が後を絶たないんだから。もし借金でもできたら、それこそ一家心中だよ。

 

 

母)借金は作らないわ。儲けは少しでもいいのよ。あの子が自立してくれればそれでいいの。できないかしら?

 

 

父)そんな夢物語なんてあるわけがないよ。現実は厳しいよ。やるかやられるかだよ。そんな甘い考えではすぐにやられてしまう。住宅地は売れるが、商売に失敗して借金が出来て家を手放そうとしたって、店舗付き住宅なんてそう簡単には売れないから、仕入れのお金を払えずに家を競売にかけられて一文無しになって、それで人生終わりになっちゃうよ。あいつは高卒認定試験でも受けて、公務員になればいいんだよ。やはりそれが一番いいよ。あいつには今まで人生振り回されてきた。老後も振り回されたらこっちがホームレスになっちゃうよ。

 

 

母)その考えでやってきたのが、この結果でしょ?

 

 

私)世の中はお父さんの言うとおりですよ。しかし、その考え方がお母さんの言うとおり、息子さんにはプレッシャーになっていたのかもしれませんね。親として、子供に幸せになってほしいと思うのは当たり前ですが、子供自身の生き方を決めつけてしまうと、子供によってはプレッシャーに感じてしまうことはよくあります。子供自身が、これではダメだから勉強して高卒認定試験を取って公務員になってみようと考えるならば別でしょうが。お子さんは今引きこもっていて誰とも会おうとしません。それを解決しようと、今、知恵を絞っているところです。

 

 

ある状況や資源を使ってといっても、無理があったら今度はそれがストレスになって、家族がおかしくなってしまいます。「状況は正確に伝える。資源は無理なく」が大原則です。今、無理なく始められること、大きな商売ではなく町の小さなタバコ屋さんみたいなイメージの店でいいと思います。資本は最小限度でいいのです。皆に愛される小さな店です。

 

 

父)一昔前にはよくありましたよね。バスの回数券を売る店、駄菓子屋、タバコ屋、小さな花屋、いろいろありました。でもみんなスーパーやコンビニが出来て潰れてしまいました。そんな店は時代錯誤ですよ。やっても潰れるだけだよ。何やるにしても、資本と宣伝力がものを言う時代ですよ。それが今の時代だと思いますよ。

 

 

私)その通りですよ。でも、息子さんを何とかするために話し合っているのですよね。職業訓練に行ったり、自動車の免許を取るために教習所に行ったり、今はないかもしれませんが仕事を覚えるために親方についたり、アルバイトや仕事に就くことが自信を喪失してしまっている息子さんにはできないから、社会に出るリハビリのために、息子さんが手伝える小さな商売を考えているのではないでしょうか。小さな商売は目的ではなくて、息子さんを社会に適応させるための入り口の手段に過ぎません。でも赤字では困ります。しかし、儲けるための仕事が目的ではありません。ご家族で何ができるか考えてみましょう。息子さんの好きなこと、得意なことも考慮に入れて考えてみてください。

 

 

母)息子は自宅の近くの公立高校を中退しました。幼稚園も小学校も中学校も地元です。周りの人はみんな知っています。外に出ることができないのは、それも大きな原因の一つになっています。だから引っ越しをしたいんです。でも、お父さんが働いて買った家だから私だけの思いではどうしようもありません。

 

 

父)家を売却するということは、かなりの決心がいることです。少し考えさせてください。

 

 

私)もちろんそうですよね。ご家族にとっては一番重大なことですよね。家族みんなが良くなるように皆さんで考えてください。

 

 

一か月ほどしてから、母親がカウンセリングに見えました。

 

 

母)あれからしばらくして、主人が引越しを決断しました。もともと、主人の会社は住宅メーカーなので、仕事関係の情報を集めて、とても良い条件の店舗付き住宅を見つけてきました。大きさも手ごろで築年も浅い、それにもし商売がダメでも地の利がいいので店を貸すこともできると言っていました。主人は、「俺もこの歳でオーナーになるぞ!」と張り切っています。あの張り切りが、また息子にプレッシャーにならなければ良いと思っています。

 

 

私)家の売り買いで借金にはならなかったのですか?

 

 

母)今住んでいる古い家を壊して更地にすれば、住宅地なので予想より高く主人の会社が引き取ってくれそうなのです。新しいところは、商店街で駅に近いとても便利なところなのですが、思ったより安いのです。土地は狭くなりますが。だから、借金はできていないと思います。一番いいのは、今の家から少し離れているので、息子を知っている人はほとんどいないということです。

 

 

私)何のお店を始める予定ですか?

 

 

母)まだ、はっきりと決まっておりませんが、輸入品を扱う安物の子供服の店か、手芸店と模型屋とか色々な案があります。

 

 

私)肝心の息子さんにはどう対応していますか?

 

 

母)この前言われたように、主人の定年退職金は期待できないこと、再就職の難しさ、たとえできても給料が半分近くになること、家にはあまりお金がないことなどを手紙に書いて、本人の部屋のドア下に差し込んでおきました。翌日はなくなっていたから読んだと思います。応答などの返事はまだありません。引っ越しの予定はまだ何も決まっていません。今後はどのように進めたら良いのでしょうか?

 

 

私)このまま計画通り進めるとしたら、引っ越しの予定はいつ頃になるのですか。

 

 

母)主人が、そこのところを聞いてきて欲しいと言っていました。物件の名義上は主人の会社が所有するもので、今住んでいる家の取り壊しも会社がやってくれるそうです。だからいつでもいいみたいです。

 

 

私)商売に気楽なものはないでしょうが、気楽な方がいいですね。引っ越しの時期は息子さんの反応を見て決めましょう。息子さんへの次の対応は、家計のことを考えると、どうしても引っ越しをしなければならない状況にあることを伝えてください。そして、もし反対の意見や気持ちがあるのならば教えてほしいと必ず書いて伝えてください。何か息子さんが言ってきたら、その意見を真剣に聞いてあげてください。そして、必ず、返答をしてあげてください。反応がなくても、状況は丁寧に伝えてください。自分が動かなくてはならない状況になったら、必ず何か応答があるはずです。

 

 

母)丁寧に考えと気持ちを伝えるのですね。

 

 

私)多少オーバーでもいいですから、状況が切迫していることを伝えてください。息子さんに、「何かやらなくてはいけない。自分も手伝うことができる。それが、家族のためにも自分のためにもなる」という気持ちが起こればいいのです。一度動き始めれば、どんどん動きます。しかし、動き始める最初が一番エネルギーを必要とします。家族の危機、どうしても「あなたの力が必要だ」ということを何としても伝えてください。

 

 

母)ドア越しに話してダメな時は、手紙を息子の部屋に入れておく、それ以外に方法がありますか?

 

 

私)深夜台所に食事をするために降りてくることがありますね。その時を見計らって、「どうしても話があるの!あなたにとってもとても大切なことなので、どうしても直接話しておこうと思って寝ないで待っていたけど、少しだけ時間をくれる?お父さんはもう休んでしまったから、今、起きているのは、あなたと私だけだから安心して聞いてほしいの!」と切り出してはいかがでしょうか?切迫感が伝われば必ず話を聞いてくれるはずです。

 

 

母)わかりました。やってみます!

 

 

それから、2週間後に母親がカウンセリングに見えました。

 

 

母)深夜に息子を寝室で待って、物音がしたので台所に行きました。さすがにびっくりしたらしく、呆然と立ち止まっていました。私の方も、息子を見るのは3年ぶりだったので動揺しました。でも自然に言葉が出て「お腹すいてるでしょう!何か作ろうか!」と言ったのです。それに対しては何も言わなかったので、すぐに教えて頂いた言葉を継ぎ足しました。そしたら、息子は立ち去らずに、話を最後まで何も言わずに聞いてくれたのです。そして一言、「親の家だから、それに従うよ。好きなようにしたら・・・・・・」と言ったのです。

 

 

私)少しだけでも話せて良かったですね。

 

 

母)次はどうしたらいいでしょうか?

 

 

私)引っ越しの日を教えて、自分の部屋を片付けて欲しいことを伝えてください。ところで、息子さんの部屋はあるのですか?

 

 

母)はい、あります。

 

 

私)あるんですね。それは独立した部屋ですか?できれば独立した部屋でも、家族と共有する部分があった方が引きこもらずにすむと思うのですが・・・・・。

 

 

母)どうすればいいのでしょうか?

 

 

私)息子さんの部屋を通らなくてはベランダで洗濯物を干せないとか、店の在庫品を少し置いてもらうとかするといいですよ。そのことを引っ越しの前に話しておく必要があります。

 

 

母)まだ、店の仕事の内容は決まっていませんが・・・・・・・。

 

 

私)難しいことですから、慎重にやれることを探してください。それと息子さんに状況を丁寧に話してください。引っ越し先の部屋の状況を話して充分に納得させてください。引きこもりができない部屋だと、引っ越しそのものに反対することになりかねませんからね。言葉を充分に選んで話してあげてください。

 

 

母)また深夜に話してみます。

 

 

しばらくしてから、母親から元気な声で電話がかかってきました。「引越ししました。息子も一緒です。父親が運転する家の車で逃げるようにしてきたのですけれど、こっちに来たら気持ちが軽くなったのか、よく手伝ってくれます。しきりに体力がない、体力がないと独り言をいっています。仕事はクリーニングチェーン店の取次店を始めることにしました。落ち着いたらまた相談に伺います」

 

 

2週間後、母親がカウンセリングに見えました。幾分、雰囲気が明るくなっていました。

 

 

母)息子は最初、他人の着た汚れ物なんて触れないと言っていたのですが私が孤軍奮闘しているのを見て手伝ってくれるようになりました。私が「無理しなくてもいいよ。洗濯されてきたものを整理したり、パソコンの入力をやってくれればいいのよ」と言ったのですが、黙って仕事を手伝ってくれます。さすがに、お客さんが来るとスーッと奥に引っ込んでしまいますけど、今のところそれでいいのですよね。

 

 

私)もちろんそれで上出来ですよ。お父さんはどうでしょうかね。話をしていますか?

 

 

母)話はまだ私とだけで、他の家族とはしません。食事も一人でしています。

 

 

私)食事は声をかけるぐらいで無理に誘わない方がいいと思います。彼を特別視しないで自然体で家族は対応してください。部屋はどうしていますか。

 

 

母)お客様の預かり物ではなくて、場合によっては在庫のハンガーなど、店で置けなくなったら置かせてもらうということを話してあります。

 

 

私)それでいいと思います。自然体が一番いい対応方法ですね。

 

 

その後、息子さんは仕事内容を徐々に広げていきました。そして1年後には、チェーン店の会議にまで母親のかわりに出かけるようにもなりました。また、弟・姉・義兄・父親の順番で家族とも会話を始めました。

 

 

この事例は、長い引きこもり生活を終え、社会に復帰したケースです。引きこもりの人に対しては、カウンセリングを通しての心のケアも大切ですが、引きこもりが長引いてしまった人は、葛藤が萎えてしまい引きこもりが日常的になるために、あまり効果があがりません。親とのコミュニケーションを基本として、引きこもりが日常化した家族構造を大きく変化させ、引きこもりの人の生活環境をつくり変えていかなければならないでしょう。

 

 

しかし、その環境の変化は、同時に他の家族の土台を揺るがすことにもなるので、その家庭の状況に応じた無理のかからないやり方を取っていくことが成功の秘訣となります。

 

 

 

 

 

 



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