内因性精神疾患型ひきこもりの対処法
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内因性精神疾患型ひきこもりの対処法

2020年10月11日(日)1:46 PM

 

 

 

内因性精神疾患型のひきこもりは、独り言をいう(独語)、独り笑いをする(空笑)などをはじめ、身辺の不潔、被害妄想、意味不明な言動などの症状が現れることが少なくないため、本人の周りにいる家族などが異変に比較的気づきやすいといえます。

 

 

しかし、実態としては、このような症状が見られるようになったにもかかわらず、本人が受診や入院を拒否するケースが多いため、ひきこもりの状態を放置したままでいる家族が少なくありません。家族側も、本人の症状が軽いうちは気分転換や休養をとれば治るのではないかと、事態を安易に捉えてしまいがちのようです。

 

 

また一方で、内因性精神疾患であることを認めたくないという心理から、本人を世間から隠そうとするケースすら見受けられます。このような家族の対応から、ひきこもりの人の症状が進行していき、髪がぼうぼうに伸びたり、一年以上も入浴しない、大声でわめく、近所に迷惑をかけるといった状態になって初めて相談に訪れるというのが現状となっています。

 

 

犯罪に繋がったようなケースでも、もっと早期に発見され、治療がなされていれば予防できたのではないかと思われることが少なくありません。内因性精神疾患型のひきこもりの人の場合、本人に説教する、叱咤激励する、外出に誘うといった行為は無力です。躁うつ病患者には、「もっと頑張りなさい」という励ましさえ絶対にしてはいけないと言われています。

 

 

彼らはもともと頑張り屋が多いため、そのような励ましによって現実と直面させられ、「自分はダメな人間だ」と自信を喪失し、自殺してしまうような事態にも陥りかねないからです。また、本人に幻聴や妄想がある場合、周囲の人が、「そんなことはない」「お前の言っていることはおかしい。間違っている」と指摘したり否定してもまったく効果はありません。

 

 

それどころか、「自分はおかしくない。おかしいのはお前らだ」「あいつらは俺のことを騙そうとしている」と、相手に不信感や敵意を抱くようになり、よりいっそう自分の殻に閉じこもってしまいます。彼らの脳内では、幻覚妄想が現実のものとして認識されています。つまり、彼らは現実検討能力を失っているのです。

 

 

内因性精神疾患は、脳内の分泌物質が異常をきたしているわけですから、まずとらなければならない対処法としては、いかにして医療機関と本人とを結びつけるかを考えることなのです。最近では、副作用も少なく治療に効果的な薬が登場していて、内因性精神疾患の治療は薬物療法を中心に行われています。薬物の適正な投与によってめざましい回復も期待できるのです。

 

 

統合失調症などの内因性精神疾患を背景に持っているひきこもりの人に対しても、抗内因性精神疾患薬が有効であると考えられます。抗内因性精神疾患薬は、強力精神安定剤(メジャー・トランキライザー)とも言われ、幻覚妄想など、統合失調症の症状を軽快させる働きがあります。統合失調症は、脳内神経伝達物質であるドーパミン過剰によるものとする仮説がありますが、抗内因性精神疾患薬にはドーパミンを遮断する作用があります。

 

 

副作用としては、口の渇きや排尿困難、便秘などが挙げられるようです。さて、ひきこもり本人には自分が病気であるという意識がなく、そのため病院に行きたがらないため、本人を医療機関に連れて行くことは至難の業です。内因性精神疾患の場合だけに限らず、ひきこもりの人を医療機関にかからせるためには、やはり段階的に説得することがポイントになります。

 

 

 

一、  まず外来通院を試みる

 

 

 

ひきこもり本人に、「頭が痛い」「めまいがする」といった自覚症状があれば、比較的容易に外来受診を勧めることができます。「良いお医者さんがいるから行ってみよう」と誘うだけで、本人は苦痛から解放されたいために説得に応じる可能性があります。本人の言動のおかしさを指摘して、無理に精神科の受診をさせるのではなくて、「辛い」「苦しい」という現実に起こっている症状を強調して、受診すれば楽になることを伝えてあげることが重要です。

 

 

 

二、  どうしても外来に行きたがらない場合

 

 

 

かなり症状が重いにもかかわらず、どうしても外来に行きたがらない場合は、入院を考えざるをえないこともあります。この場合も同じように「辛さ」に焦点を当てて、楽になってほしいからという理由で本人を説得すべきです。しかし病院に行くことに同意してくれればいいのですが、多くの場合は拒否されます。

 

 

そのような場合、賛否両論がありますが、親類など人手を集めて半ば強制的に連れて行くか、さらには、民間救急会社などに依頼して連れて行ってもらうという方法もあります。ただしその結果、病院での診断で何の異常も見られなかったり、パーソナリティ障害などのケースではそのようなことが原因で、後に裁判沙汰に発展する恐れもあるので、なるべく保健所や専門家などの相談を受けながら進めることが大切です。

 

 

本人に受診する意思がない場合には、本人の代わりに家族の誰かが精神科を受診して、治療者のアドバイスを受け、まず家族療法によって、徐々に精神科受診に結びつけるように努力することも大切です。ここで実際に、内因性精神疾患型のひきこもりのケースを扱った治療例を紹介してみたいと思います。

 

 

 

トシヒコさん(仮名・十七歳・男性)のケース

 

 

 

母親によれば、トシヒコさんは一年以上にわたって自室にひきこもったまま、入浴もせず、髪は伸び放題で、家族との会話もほとんどないといいます。食事の時は、お膳にのせた食事を母親に自室まで持ってきてもらうような状態です。

 

 

そんな彼の母親に対する唯一のコミュニケーションが暴力でした。トシヒコさんは何か気に食わないことがあると、その怒りの矛先を母親に向けて発散していたのです。息子の様子があまりにも急激に変化し、まるで別人のようになってしまったことから、母親だけが相談機関の受診に訪れました。

 

 

当然のことながら、トシヒコさんは精神科治療を受けることを強く拒否したからです。母親との面接から得られた情報によれば、トシヒコさんの場合、あまり目立った精神症状は見られなかったのですが、過度の不潔やその他の言動を総合的に判断して、内因性精神疾患の疑いが強いという結論が、精神科医とソーシャルワーカーの話し合いで出されました。

 

 

その結果、本人の意思に反して強制的に入院させるという法的処置が取られました。そして、入院した本人を注意深く観察してみたところ、妄想と思考停止が認められたのです。ただちにメジャー・トランキライザーによる薬物療法が開始されました。

 

 

入院からおよそ一ヶ月が過ぎた頃、本人と母親との面接場面に変化が現れました。表情はやや乏しいものの、本人は穏やかに母親と会話することができるようになっていました。そして三ヶ月後には、笑顔も見られるようになり、無事に退院することができました。その後は定期的に外来受診をしていますが、本人の生活スタイルも大きく改善されているようです。

 

 

この青年は、最終的に統合失調症と診断されましたが、そのひきこもりの状態から治療者側の予測が的中し、脳内のドーパミンという物質を薬物でコントロールすることで、症状が劇的に改善した事例と言えます。



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