ひきこもりの事例~強迫性障害の29歳男性の事例~
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ひきこもりの事例~強迫性障害の29歳男性の事例~

2020年09月24日(木)4:39 PM

 

 

 

Aさんに強迫症状が見られるようになったのは、中学校時代にさかのぼります。Aさんが中学2年生の頃、クラスでいじめにあってしまったのです。

 

 

彼は学校へ行くたびに、学生服に靴で足跡をつけられたり、持ち物を隠されたり、時には殴る蹴るの集団暴行を受けたりするようになりました。Aさんは自宅に帰ってくると、いじめっ子たちに汚された学生服や、彼らが触れた筆記用具などの持ち物すべてを念入りに洗ったといいます。

 

 

それは、心の傷を洗い流したいという気持ちが行動に現れたものでした。そのようなことが続いていくうちに、外から持ち帰った物を洗ったり、手を執拗に洗うなどの潔癖症的な行為は徐々にエスカレートしていきました。

 

 

やがてAさんは、「外の世界=汚れた世界」という考え方になってしまい、公共のものや他人が触れたものには一切触れることができなくなってしまいました。

 

 

まるで「汚れた外の世界」を避けるかのように、彼は中学卒業を境にして、自宅にひきこもるようになってしまいました。そして、ひきこもり状態が続くうちに、「洗浄」にはじまった彼の強迫的な行為は、他の状況でも見られるようになりました。

 

 

たとえば、物が少しでも斜めになっていると気になってしまい、まっすぐに戻すようになったり、後で重要なものだと判明することの恐れから、ゴミを捨てることができなくなったりといった具合です。

 

 

また、日常生活では細かい決まりごとを自らに課すようになりました。たとえば、入浴の際には、「左の肘の部分から洗い始める」「同じ箇所はきっちり5回こする」など、洗う順番やこする回数を細かく決め、強迫的な行為はますます病的なものへと変わっていきました。

 

 

さらに、「完璧に行われなかったのでは?」という不安がいったん頭をもたげると、また最初から洗い直しが始まります。こんなことを一度の入浴の際に、何十回と繰り返しました。

 

 

入浴時間が3時間もかかってしまっては、疲れ果て、やがては入浴そのものがおっくうになってしまうのは自然の成り行きなのかもしれません。Aさんもついには半年に一度しか入浴しなくなってしまいました。

 

 

「やめたいけど、やめられない」現在も強迫的な思考がひどくなるとパニックを起こし、家の中の物を壊したり、母親に向かって暴言を吐いたり、暴力を振るったりすることもあるようです。

 

 

しかしその一方で、自分の心情を打ち明けたり、日常会話を気軽にやり取りできるのも母親で、Aさんはいまだに母親から自立できないでいるのです。

 

 

強迫性障害とは、強迫観念や強迫行為を反復・持続し、自らもそのことで苦悩していて、社会的な生活をすることが困難になる症状のことをいいます。

 

 

強迫観念とは、追い払おうとしても心の中に無理矢理入り込んでくる考えのことで、強迫行為とは、どうしてもやらなければならないと感じる行為のことです。

 

 

それらはあたかも、強迫性障害の人にとって生きていく上で不可欠な「儀式」と化してしまいます。それがエスカレートすると、一日に何百回も手を洗わないと気が済まなくなったり、入浴に何時間もかかってしまったり、外出する時にドアの鍵やガスの元栓などの確認に一時間以上もかかったりして、普通の日常生活が送れなくなってしまいます。

 

 

過剰な反復行為によって疲れ果て、やがて無気力になって家に閉じこもったまま動けなくなってしまう人も少なくありません。また、対人場面において、「自分が相手に何か失礼なことを言ったのではないか」と気になって、確認しないと気が済まなくなり、相手が気持ち悪がって自然と離れていったり、逆に対人関係を気にするあまり人との交流を避けるようになると、おのずとひきこもり状態に陥ってしまいます。

 

 

強迫性障害の人に、「そんなに手を洗う必要はないよ」とか「ちょっと回数を減らしてみたら?」と言ってみても効果はほとんどありません。なぜなら本人もその行為が無意味だとわかっていて、やめたいと思っているにもかかわらず、やめられずに困っているからです。

 

 

また、Aさんにも見られましたが、強迫行為が重症になってくると暴力を伴うこともあります。強迫性障害の人は、「自分の(洗浄の儀式)は正確に行われたかどうか」「自分に必要なものをゴミとして捨てているのではないか」などの確認作業に他人を付き合わせることがあるのですが、相手が質問に正確に答えられなかったり、「物を斜めに立てかける」「相手の原因で決められた時間に遅れた」など、自分の強迫行為に反するようなことを相手がすると、激しく怒り出し、暴力を振るうのです。

 

 

たいていの場合、暴力の矛先は母親に向けられることが多いようですが、平常時には母親との関係は極めて良好、むしろ年齢に関係なく甘える傾向があり、親離れが不完全なままであることがうかがえます。

 

 

強迫性障害の場合、強迫行為の遂行のために時間や体力が使い果たされてひきこもりになってしまうケースもありますが、このように人として自立できないでいることもひきこもりになってしまう原因であるかと考えられます。

 

 

強迫性障害の強迫観念・行為はだいたい次の四つに大別できるようです。

 

 

①汚染されることへの恐怖と洗浄の儀式。

 

 

②失敗や不完全さに対する不安と確認儀式(戸締りなど)。

 

 

③特に対象がなくて起こる、その他の強迫観念・行為(迷信的恐怖、宗教的強迫観念など)。

 

 

④正確さや規則正しさへのこだわり、物への異常なこだわりや儀式行為(ゴミが捨てられないなど)。

 

 

Aさんのケースでは、①の洗浄儀式や④の物の配置の正確さといった重複した強迫観念・行為が見られます。それらは儀式化されると多くの時間がとられるようになるために、生活範囲を狭めてしまい、社会に出て働くこともできなくなります。

 

 

実は、強迫性障害が原因でひきこもっている人たち以外にも、自宅にひきこもっているうちに、何らかの強迫的な儀式を行うようになるケースはよく見受けられます。

 

 

そのため、どんな精神障害が原因で本人がひきこもっているかを、見極めることが必要になってきます。今日では行動療法と薬物療法の発展によって、ほとんどの強迫性障害を治療することが可能になっています。

 

 

まず、恐れている状況に何度も直面すること、そして不安を取り払うために儀式を行いたいと思っても、我慢して行わないでおくこと、このようにして、不安をもたらすような対象や状況に慣れていくことで克服していきます。

 

 

 

 

 

 



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