ひきこもりの事例~対人恐怖の33歳の女性のケース~
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ひきこもりの事例~対人恐怖の33歳の女性のケース~

2020年09月22日(火)5:37 PM

 

 

 

Aさんと初めて出会う人は、誰もがその風貌に驚くかもしれません。なぜならAさんはいつも、顔の半分が隠れてしまうほどの不自然に大きなマスクをしているからです。

 

 

何も風邪をひいていたり、花粉症だからではなく、彼女がマスクをしている理由は、「自分の醜い顔を他人に見られたくない」という羞恥心からでした。

 

 

彼女は「醜い」という表現からは想像も及ばないほど容姿の整った女性ですが、今までずっと、自分の容姿だけではなく自分自身そのものに自信が持てず、そんな自分が嫌で嫌でたまらなかったといいます。

 

 

「自分はなんて醜いんだろう」Aさんがそんな妄想に取り憑かれるようになったのは、高校を卒業後、将来看護師になるために看護学校へ進学した時からです。

 

 

人と食事をする、人前で話をする、異性と話をするといった対人場面で、「相手が自分の容姿を醜いと思っているのでは?」「そんな容姿を持った私を相手は見下している、馬鹿にしているのではないか」などという思いに悩まされるようになったのです。

 

 

そのため、対人場面で赤面してしまったり、気分が悪くなったり、手や指が震えるなどの症状が起こるようになり、数ヶ月で看護学校をやめてしまいました。

 

 

その後は、人とコミュニケーションをとらなければならないような状況を避け、両親の元で10年以上のひきこもりを続けています。生育歴を聞くと、優秀な姉といつも比較され、「お姉ちゃんに引き換え、お前は駄目な子だ」と叱られることが多かったそうです。

 

 

そのためか、他人に対して異常なほど競争心が強く、容姿や学歴をはじめ、相手のちょっとした優れた点を見つけては、「自分は相手よりも負けている」という激しい劣等感に襲われるようになりました。

 

 

そして、その劣等感は特に容姿といった外見に関して、強く感じてしまうようになったのです。「なんで私をこんなに醜く生んだの?」「私が人とうまく付き合えないのは、お母さんの育て方が悪かったからよ!」

 

 

10代後半から20代前半にかけて、Aさんは自分の容姿やうまく人と付き合えないことについて、しばしば母親と口論になり、時には暴力を振るうこともあったといいます。

 

 

年齢の経過とともに、家庭内暴力はなくなっていきましたが、今でも激しい言い争いが起き、食器を壁に投げつけたり、窓ガラスを叩き割ったりなどと、物に八つ当たりすることもあるそうです。

 

 

対人恐怖とは、対人場面において強い不安・緊張・恐怖を感じ、対人関係を結ぶことが困難になることをいいます。特に、相手と視線を合わせることが強いという視線恐怖や、赤面してしまうという赤面恐怖、自分の体臭が臭うのではないかという体臭恐怖、自分の顔が醜いのではないかという醜形恐怖などの症状を訴える傾向があります。

 

 

Aさんの場合は、醜形恐怖を主な症状としているようです。醜形恐怖は、感覚的に女性に多いように思われるかもしれませんが、男性にも同様に見受けられるものです。

 

 

男性の場合は、薄毛などの頭髪の悩みや性器の形状を気に病んだり、ニキビを気にしたりするなどがあります。これらは、周囲の人がいくら否定しても本人は聞き入れることはなく、強迫観念のように取りつかれてしまっているのです。

 

 

「体が小さい」「筋肉質ではない」などと自分の体型を気にするあまり、アナボリック・ステロイド(筋肉増強剤)などを飲んで筋肉質な肉体になりたいと思っている男性は意外と多くいるものです。

 

 

女性に比べて男性は、自分が容姿のことで悩んでいることを恥ずかしがって公言しない傾向にあるようですが、最近は男性でも整形手術を受ける人たちが増えていると聞きます。

 

 

自分の外見に執着するのは、男性も女性も同じようです。外見を重視する時代のせいでしょうか、Aさんのように醜形恐怖がもとで対人場面に困難が生じるケースが最近増加傾向にあるようです。

 

 

「もっと目を大きくしたい」「顎のラインを細く見せたい」「鼻すじをスッと通したい」など、具体的な要望を持って整形手術に頼る人たちも少なくありません。

 

 

しかし、彼らの問題の根幹は、外見の不具合ではなく、自我レベルでの自信喪失にあるために、その根本にある問題を解決しない限り、一度の手術では満足せずに、気に食わないという理由から2度3度と整形手術を繰り返す「整形マニア」になってしまうことも珍しくないのです。

 

 

うまく人間関係を構築できないのは、その人の容姿に責任があるわけではないはずです。だからといって、自分の性格に問題があることを認めるのは、自分の内面と向き合わなければならず、大変苦痛を伴います。

 

 

時には、自分が今まで築いてきた人格を否定しなければならない危険性もあるからです。そのために、性格の問題を安易な容姿の問題にすり替えてしまうのです。

 

 

そもそも対人関係の根っこの部分には、この自信の喪失という問題が横たわっています。この自信の喪失は、親との関係で自分が十分に認められず、否定されるようなことが多かったのが原因ではないかと考えられています。

 

 

Aさんの場合は、優秀だったお姉さんと比較されることが多く、そのために、「自分はお姉さんよりも劣っている」「自分は何をやってもお姉さんに勝つことができない」といった、自己否定的な感覚にとらわれるようになっていったのではないでしょうか。

 

 

今現在、対人恐怖だからといって、もともと人間嫌いだというわけではありません。むしろ、通常の人たち以上に、強い対人希求の傾向があるようです。

 

 

そのような意味でも、DSMーIV(アメリカ精神医学会の作成した診断基準)が定める回避性パーソナリティ障害とかなり近縁の障害と考えられるかもしれません。

 

 

 



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