ひきこもりの事例~パーソナリティ障害の26歳男性のケース~
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ひきこもりの事例~パーソナリティ障害の26歳男性のケース~

2020年09月20日(日)4:07 AM

 

 

 

Aさんのひきこもりは、中学時代のいじめによる不登校に端を発しています。Aさんは、もともと人付き合いが苦手で内気な性格だったため、クラスの仲間になかなか馴染むことができませんでした。

 

 

そのためか、「あいつは暗いやつ」「何を考えているかわからない」という言いがかりをつけられ、無視や忌避、また言葉による嫌がらせや、時には暴力によるいじめを受けたこともあったそうです。

 

 

彼はいじめられるようになるにつれて、学校に行くことが苦痛になってきました。「あんな連中がいる学校なんかには、もう行かない」はじめのうちは両親も、Aさんの不登校には批判的でしたが、本人の腕を引っ張って学校へ連れて行くこともできず、そのまま放任しておくことしかできない状態でした。

 

 

学校へ行かないAさんは、自室にひきこもったまま生活するようになっていき、そのうち家族とさえ接しようとしなくなってしまいました。彼の生活パターンは、家族と顔を合わせる機会がある昼間は寝ていて、皆が寝静まった深夜にもっとも活動するという、昼夜逆転したものになっていきました。

 

 

Aさんの父親は酔っ払うと母親によく暴力を振るうこともあって、もともと家族間のコミュニケーションがうまくいっていない温かみに欠ける家庭であったことも、彼が家族との接触を避けるようになった一因かもしれません。

 

 

Aさんは自室にひきこもりながらも勉強は続けていたため、高校に進学することはできましたが、通学したのは最初だけで、一年生の夏休みが終わると再び不登校になってしまいました。

 

 

彼はどうしても、集団生活に馴染めない性格だったようです。こうして一年生の二学期で早くも高校生活は破綻し、中退という結果になってしまいました。

 

 

その頃からAさんは気分が落ち込み、何もやる気が起きず、たまに妄想的な発言をするようになりました。そのため、家族に勧められて精神科を訪れたところ、統合失調症と診断され、その後数年間にわたって統合失調症患者として通院し、服薬治療を受けました。

 

 

そんな通院生活が二年ほど続いた十九歳の時に、「この治療法では、自分は良くならない」と感じた彼は、自ら治療を受けることを中断してしまいました。

 

 

そして、別の診療所で受診し直したところ、「パーソナリティ障害」と診断されました。その後七年間ほどひきこもり生活をしていますが、集団生活になじめないため、一度もアルバイトなどを含め仕事に就いたことはなかったそうです。

 

 

また、学生時代から友達ができなかったので、外で一緒に遊ぶような友達は一人もなく、一日中自宅で過ごしています。相変わらず昼夜逆転した生活をしており、テレビゲームをやったり、マンガや本を読みながら過ごしています。

 

 

分裂病質パーソナリティ障害は、ひきこもりに一番多く見受けられる症例で、彼らに共通する特徴として、DSMーIV(アメリカ精神医学会の作成した診断基準)には次のように書かれています。

 

 

社会的関係からの遊離、対人関係状況での感情表現の範囲の限定などの広範な様式で、成人期早期に始まり、さまざまな状況で明らかになる。以下のうち四つ(またはそれ以上)によって示される。

 

 

①家族の一員であることを含めて、親密な関係を持ちたいと思わない、またそれを楽しく感じない。

 

 

②ほとんどいつも孤立した行動を選択する。

 

 

③異性と性体験を持つことに対する興味が、もしあったとしても少ししかない。

 

 

④喜びを感じられるような活動が、もしあったとしても少ししかない。

 

 

⑤親きょうだい以外には、親しい友人または信頼できる友人がいない。

 

 

⑥他人の賞賛や批判に対して無関心に見える。

 

 

⑦情緒的な冷たさ、よそよそしさ、または平板な感情。

 

 

分裂病質パーソナリティ障害の人は、人との付き合いにあまり関心がなく、またそのことで悩みもしません。いつまでも自分一人で生活していることが苦にならないのです。

 

 

Aさんも、一緒に遊ぶ友人はいませんが、そのことを本人はほとんど苦にしていませんでした。また、家族の行動についても無関心です。この年頃の健全な青年ならば、異性に興味を持ち始めるのが自然ですが、Aさんはあまり性的なことへの関心は持っていません。

 

 

一人で淡々と自分のペースで暮らしていることが、もっとも気楽に感じられるようです。ドイツの精神医学者E・クレッチマーのいうところの「分裂気質」という類型の特徴として、非社交的、物静か、内気、生真面目、変わり者、敏感などが挙げられますが、分裂病質パーソナリティ障害の人たちは、極端に偏ったこれらの症状を呈しているわけです。

 

 

関心の矛先が自分にしか向かわず、他人には興味がないため、感情をうまく表現することができず、どこか「冷たさ」を感じさせ、そのことがさらに他人を遠ざけてしまう結果になります。

 

 

分裂病質パーソナリティ障害の人は、自分から好んで人を避けてひきこもりになっていく傾向が、他の障害と比べてより多く見られるようです。社会に出て人間関係のしがらみにとらわれたくないという思いが強いのか、まるで彼らの心の深奥には、他の誰の干渉をも受け付けない独自の世界があるかのような感じさえ見受けられることがあります。



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