ひきこもりが長期化するメカニズム
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ひきこもりが長期化するメカニズム

2020年09月16日(水)7:17 PM

 

 

 

人がいったんひきこもりになってしまうと悪化の一途をたどり、長期化するようなメカニズムが存在しているようです。これはちょうど、昨今の日本で言われている「デフレ・スパイラル」に似ていて、デフレがデフレを呼ぶようなスパイラル(螺旋)が経済市場に存在しているように、ひきこもりがひきこもりを呼ぶような「ひきこもりスパイラル」が確実に存在しているようです。

 

 

「このぬるま湯にいつまでも浸かっていたい」と思っているうちは軽度のひきこもりであり、しかるべき処置をすれば比較的容易に社会復帰が可能ですが、「抜け出したいけど、抜け出せない」と苦悩し始めたら、それはもはや軽度のひきこもりではなく、悪循環の構造の中に取り込まれてしまった、長期化するひきこもりです。

 

 

ひきこもりが長期化するということは、ただ軽度のひきこもり状態がダラダラと長引くようなケースもありますが、たいていの場合、先のひきこもりのスペクトラムに従って、軽度のものから中度、さらには重度のものへと悪化していく傾向にあるようです。

 

 

中度より悪化したレベルのひきこもりは、家族や第三者によるサポートがなければ、自力で社会復帰することはまず不可能となりますので、ひきこもりという現象が現れ始めたら、早いうちに何らかの対応を施していくことが重要です。

 

 

では、ひきこもりが長期化するこの「ひきこもりスパイラル」とはいったいどのようなメカニズムなのでしょうか。ひきこもりについて語る時には、ひきこもっている本人の問題、その家族の問題、そして家族を取り巻く社会の問題の三つの視点から考えてみる必要があります。

 

 

ここでは、ひきこもり状態にある個人の問題と、彼と関わりをもつ家族の問題について見ていきましょう。まず、ひきこもっている個人についてですが、当然のことながらひきこもり生活が長引けばそれだけ、人との交流や社会経験といったものが剥奪されていくことになります。

 

 

さらに、人との接触がない期間が長くなれば、それだけその人のコミュニケーションスキルも衰えていってしまうはずです。ひきこもり状態にある人々が一応に語ることに、社会に出て人と会ったり話したりすることへの不安感や恐怖感があげられます。

 

 

彼らは自分の世界にひきこもればひきこもるほど、ますます外の世界に出づらくなるという悪循環にとらわれてしまっているのです。私たちが自分自身の姿を見るためには、鏡という道具が必要であるように、私たちが人として成長していくためには、また社会的な活動を営んでいくためには、他人という鏡が不可欠です。

 

 

自分はいったい何者であるか、自分とはいったいどんな人間で、世界に対してどんな存在意義を持っているのかといったことは、他者の存在によって知りうるものなのです。

 

 

自分自身の殻に閉じこもり、他者との接触を断ち、いくら自分自身の内面と向き合ってみても、けっして探している答えは見つからないのです。精神科医の斎藤環氏は、その著書「社会的ひきこもり」(PHP研究所刊)のなかで、ひきこもり状態にある人が自分の行動から自己嫌悪に陥って、さらにそれが悪化するという悪循環を、アルコール依存症などの嗜癖患者にみられる悪循環と似ているとして、「自分の靴紐を引っ張って自分の身体を持ち上げようとする」努力にたとえたG・ベイトソンの一文を引用しています。

 

 

さらに斎藤氏は、何らかの原因によって人が外界との接触を断ちひきこもり状態に陥ると、それはさらに悪化するというメカニズムについて、次のように語っています。

 

 

「ひとたびひきこもってしまうと、対人関係によって補われるはずの治癒の機会が奪われてしまいます。そう、外傷やストレスは他人から与えられるものですが、同時に他者からのサポートなくして、外傷からの回復もありえないのです(中略)つまりひきこもっていることそれ自体が、外傷に等しい影響を持ってしまうのです」

 

 

このメカニズムの場合は、心的外傷型のひきこもり(対人関係のトラブルや失恋などを直接のきっかけとしてひきこもるタイプ)のケースに特に当てはまるようです。

 

 

また、「普通の人たちと同じように、自分も働かなければならない」という、地震の中に形成された自己規範によっても、彼らは自己嫌悪を感じて罪悪感にさいなまれることになります。

 

 

このような自己処罰的な心理プロセスは、自らの自尊心を傷つけ、自己評価を低下させてしまうのです。そうなると、さらに世間からひきこもらざるをえなくなっていくのです。

 

 

いったんこの悪循環の中に取り込まれてしまうと、なかなかそこから脱出することは難しくなります。なぜなら、この循環は単なる二次元的なサークルではなく、悪化の方向にベクトルが働いている三次元的なスパイラルになっているからです。

 

 

では次に、ひきこもり本人を取り巻いている家族の問題という視点から、この悪循環の構造を見ていきましょう。ひきこもりが論じられる時に、しばしば「親の甘やかし」という言葉を耳にしますが、成人した我が子がいつまでも職につかずに家でダラダラと無為に過ごしているのを知れば、たいていの親は心中穏やかではいられません。

 

 

子供の将来に対する不安や焦燥感、はては口惜しさや激しい怒りさえも抱くようになります。「よその子はちゃんと働いているのに・・・・・」「早く外に出て真面目に働いて欲しい」「いったい、いつまでこんな状態でいるつもりなのだろうか?」「こんな子供なんか産まなければよかった」たいていの親はひきこもっている子供に対して、ついつい感情的になって世間で流布している一般認識をもとにお説教を始めてしまうでしょう。

 

 

それによって子供の方も激昂して口論になったり、時には取っ組み合いの喧嘩になったりすることも少なくないようです。しかし、このような口論を何度も繰り返しているにも関わらず、子供のひきこもりはいっこうに好転することがなく、やがて双方ともに疲れて、ひきこもりについて議論すること、あるいは親子間でコミュニケーションをもつことすらなくなってしまうこともあるのです。

 

 

精神科医の近藤直司氏は「青年のひきこもり」(岩崎学術出版社刊)のなかで、次のような悪循環が存在していることを指摘しています。

 

 

ひきこもり→家族の不安・焦り→叱咤激励・外出刺激→本人の劣等感(わかってもらえない)→ひきこもり

 

 

長期間ひきこもり状態にある人たちは、自分自身でもその状態から抜け出せずに葛藤している場合がほとんどなのです。本人自身も悪循環のスパイラルの中に取り込まれて苦悩しているのに、家族との関係においても悪循環にとらわれてしまったら、これはもう家族間で片付けられる問題ではありません。

 

 

このスパイラルから脱出するためには、外部から何らかの力を加えて循環を断ち切るしかありません。ひきこもりを抜け出した人たちの中には、親の死をきっかけに社会復帰したというケースもあります。

 

 

これは不幸なきっかけですが、親が亡くなったことで悪循環の輪が切られたという結果になったことによるものでしょう。



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