ひきこもりに求められる自立観とは何か
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ひきこもりに求められる自立観とは何か

2020年09月09日(水)8:28 PM

 

 

 

「ひきこもりの自立観」をどのように理解することが必要でしょうか。ひきこもりの人を自立させる支援団体のなかには、就労を自立とする理念が根強くあります。

 

 

「自分の力で飯が食っていけるようになることが自立」とする考えは正論であっても、ひきこもりの人すべてに当てはまるものではありません。これは、ひきこもり支援に関わってきた人であれば、「ひきこもりの経験があっても、履歴書の空白があっても、あなたを採用します」といういわば確約があったとしても就労しない現実が多々あります。

 

 

ひきこもりの人が、自立を意識しながら言語化はできるだけ避けるという、ひきこもり独特の心理構造が働くところがあるのかもしれません。この点がいわゆるちょっと背中を押せば就労できるようなフリーターやニートの若者と、ひきこもりとの相違点ということになるのではないでしょうか。

 

 

就労に対する何らかの心理規制によって、周囲から言われてすぐに働くということにはならないのであれば、もっと別な角度からの支援が必要となってきます。

 

 

ひきこもりの自立観を、わたしは次のように理解したいと思っています。

 

 

①就労=自立とはならない。

 

 

②自立とは常に揺れ動くものである。

 

 

③自立とはプロセスである。

 

 

④自立とは依存と対極関係ではなく、表裏一体的なものである。

 

 

⑤人間的な自立が求められる。

 

 

それぞれ簡単に説明しますと、①就労=自立とはならないというのは、例えば、とにかくどこかに職についてその実績とカウントを上げる支援が就労支援のなかにあるとすれば、ひきこもり支援からは大きくかけ離れざるを得ない課題に直面することを意味します。

 

 

職を得ればひきこもりは解決するのか、という命題は多くのひきこもりの人たちがそんな次元ではないと語ります。これは、職を得てもそれはひきこもりの脱却であったり、解決であったり、本質的な自立にはならないのではないだろうか、という投げかけでもあります。

 

 

職を得て、給与をもらい、世間から自立していると呼ばれている人たちであっても、例えば他人に優しく接することができない、こちらが挨拶しても無視する、高齢者がバスに乗ってきても席を譲らないで堂々としている人がいたら、その人は本当に社会のなかで自立している人だと言えるだろうか、私はそのことを問いたいのです。

 

 

その意味で、②自立とは常に揺れ動くものであり、③自立とはプロセスであるという見解はそこにあります。ひきこもりの人だけではなく、職についている若者たちのなかには、今ある自分を徹底して否定し、将来に対して希望を見出せないで混沌とした社会のなかでもがき苦しみながらも生きている若者たちがいます。

 

 

まさに自立とは、そうした揺れ動く社会のなかで生きるありようであり、プロセスなのだと思います。私たちが自立したかどうかの最終的な結論は、そう簡単に出せるものではありませんし、早々に諦めるものではありません。

 

 

ひきこもりの人たちが高齢となって死の間際に直面したとき、自分は本当に自立して生きてきたのか、というひとつの回答がその時になって初めてわかるのではないだろうか、と思っています。

 

 

そして、④自立とは依存と対極関係にあるのではなく、表裏一体的なものです。まったくの支えがなくて、私は自立しているという人はあまりいないでしょう。誰かに支えられ、そして支えて生きています。

 

 

頼るところがあって、どこかに依存できるところがあるから、ひきこもりの人たちは安心して自立していくことができるのではないでしょうか。辛くなったらまた休める場所があり、話を聞いてくれる家族や支援者がいる、そうした状況があるからこそ、多少嫌なことがあってもすぐに辞めないで乗り越えていくことができるのではないでしょうか。

 

 

家族の支え、支援者の支えとは、就労していない時よりも、就労してからの方がむしろ手厚く支援というものが行われていかなければならないのはそこにあります。

 

 

今、多くのひきこもりの人たちは、不安にさらされながらも社会への第一歩を踏み出そうとしています。そのひきこもりの人たちに「耐えなさい」と世間と同様な態度で一方的に叱咤激励するのではなく、ひきこもりの人にとって頼れる人として、またくじけそうなひきこもりの人たちにそっと声をかけ、簡単に脱落しないように支えになっていく、そうした支援の取り組みが求められているのではないでしょうか。

 

 

そのことは、取りも直さず、自立とは経済的自立から精神的自立、社会的自立、そして人間的自立へと向かうものであると言えないでしょうか。豊かな自立観とは、支え合う関係性のもとに行われる一つの自立観です。

 

 

これからのさまざまな危機に対抗できるのは、そうした人に対する謙虚さであり、誠実さであり、お互い様の心で支え合う人間が本来持っている力ではないでしょうか。

 

 

そのことを、ひきこもりの自立観として共有してこれからも考えていきたいと思います。



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