子育てについて~両親の力~
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子育てについて~両親の力~

2020年07月14日(火)4:25 PM

 

 

A君の家族は両親と姉、そして元気なおばあちゃんの五人です。A君は地元の小学校に通っていましたが、軽度の知的障害があります。いじめられたりからかわれたりすることがあるようで、時々ズル休みをしたり、母親に甘えたように学校に行きたくないと訴えることがありました。

 

 

父親はそんな様子を知っていましたが、大層には考えず様子を見ておればよいと考えていたようです。姉も学校におけるA君の様子から、あまり無理なことを言っても仕方がないと思っていたようです。ただおばあちゃんだけは違っていました。

 

 

わが家の長男が、こんな甘やかした子育てで、だらしのないことになってゆくのはたまらないと思っていました。しっかり者の祖母にかなわない母親は、自分の気持ちや言い分を受け止めてくれる人を求めていたのでしょう。ちょうどいい人が見つかりました。家庭児童相談員です。

 

 

市役所の窓口で、子どものことで……と相談したところ、すぐに会ってもらえました。母親の訴えを丁寧に聞いて、とても温かく受け止めてくれる相談員に、母親は感激していました。どうぞまたいらして下さいと言われたので、一週間後に再度訪ねました。

 

 

A君のことがそれほど差し迫った心配だったわけではないのですが、聞いてもらえる喜びに、母親は胸のつかえが一気におりるようでした。継続面接の約束ができて、毎週一度通うようになりました。でもこのことは家族には秘密でした。

 

 

そんなことを言うと、内輪の問題を他人に洩らすなんてと、おばあちゃんに批判されるような気がしたからです。A君はあいかわらずズル休みしたりしていましたが、母親の心は穏やかでした。息子の状態は逐一相談員に話していましたし、じっくり様子を見てしっかり受けとめてあげましょうとアドヴァイスされていたからです。

 

 

自分が相談員にしてもらっているように、A君にしてやっている気持ちでした。A君のことが私達の相談所に聞こえてきたのは学校からでした。登校したりしなかったり、授業中にも遊んでしまったり。知的障害のことを考えたとしても、今のような学校生活の過ごし方がいいこととは思えない。

 

 

もう少しきんと学校生活を送るようにさせたいが、親が甘くて……というものでした。このメッセージは家庭にも届きました。両親は一緒に考えざるを得ない事態になりました。そしてそれはおばあちゃんの耳にも当然入ることになりました。

 

 

大人三人の話し合いになると、筋で押すのはおばあちゃんです。それに対して気持ちのことをボソボソ自信なげに語るのは母親です。父親は何となく両者の調停役のようなポジションに置かれました。母親の意見が劣勢に傾きかけた時、切り札が出ました。

 

 

「じつは私はしばらく前から、A君のことが心配だったので専門家の先生のお話を伺いに行っているんです」父親とおばあちゃんは寝耳に水でした。はじめは専門家のアドヴァイスという言葉に圧倒されていましたが、しばらくすると、家族に内緒でそんなことが進められていたことへの腹立ちや落胆が動き始めました。

 

 

最初、父親とおばあちゃんの思いは同じだった訳ではありません。そして自分が孤立しそうだと感じた母親は、二人の前に専門家を登場させる心づもりをはじめていました。このような設定が用意されてしまうと、どんな相談員にももやは自由はありません。

 

 

母親は自分の強力な援軍としての相談員を期待しています。一方、父親とおばあちゃんは、よく知らない他人にわが家のことをなんだかんだ言われたくないと思っていました。

 

 

特におばあちゃんは、嫁が何を言っているか知らないけれど、こんな者の言うことを鵜呑みにしている専門家なんて……と思いはじめているのでした。そんなことは知らない家庭児童相談員は、A君の顔を見るつもりで気軽に家庭訪問を引き受けました。

 

 

そして手ぐすねひいて待っていたおばあちゃんと対決させられる羽目になりました。母親が仕掛けた代理戦争でした。後日会うことになった父親とも、多少の違いはあっても結果は同じようなことだったそうです。こんな状態を打開したいと考えた家庭児童相談員から、私達に助言の依頼が寄せられました。

 

 

話を聞いて考えたのは、A君の問題解決よりも、まずは現状の整理でした。これまでの流れは、三者三様のバラバラ状態が不安だった母親によって援軍が引き込まれ、その結果、父親と祖母が連帯することになり、二対二の互角勝負になってしまっています。

 

 

問題解決に取り組むためには先ず《祖母・父親組》vs.《母親・相談員組》、この図式から抜け出さないとどうにもならないと考えました。家庭児童相談員の意見は、「正直なところ、不本意な役回りを引き受けてしまって反省しています。何とかしてさしあげたいと思うのですが、現状はますます膠着してゆくばかりで……」とのことでした。

 

 

そこで解決の目処の立たない方向で形成されてしまった状態を打破するために、今後は彼女に身を引いてもらうことにしました。そしてそれを母親に家庭児童相談員自身から伝えてもらうところから始めました。この相談が、本当に望んでいた結果(A君が元気で学校に行くこと)を手に入れるのは、まだしばらく先のことでした。

 

 

一人放り出されるように感じた母親が無口になってしまったり、自分の主張が受け入れられたと誤解したおばあちゃんが子育て演説をぶったり、いろいろありました。

 

 

しかし基本的な方針はあくまでも、家族外のメンバーを巻き込んで不自然に出来上がってしまったチームを解散し、妥当な編成に組み替えることでした。あるべきスタンダードな形が作れなかったために、変則が侵入してきてしまうことになったのです。

 

 

ならば今回のことをきっかけに、本来あるべき形を回復しよう、そうすれば現在抱えている課題にも正面から取り組むことができる、結果は神のみぞ知るでもいいのではないか、こんな考え方でした。

 

 

そのあるべき形とは、両親がともかくペアで機能することでした。長年続いた嫁-姑間の闘いは、A君の問題そのものではなく、問題を解決する方法を競うかたちで争われていました。それに対して私は、誰が正しいかではなく、どんなチームを作るべきかに置き換えて働きかけました。その結果、誰かの意見に巻き込まれることなく、なんとか終結までたどりつくことが出来ました。



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