幻想と現実世界との折り合いがつかないひきこもりの人たち
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幻想と現実世界との折り合いがつかないひきこもりの人たち

2020年06月25日(木)2:09 AM

ある人から、「以前なら、たとえどんなに今の生活が苦しくても、明日はきっと今日よりもよくなると思えた。でも、今の日本ではとてもそうは思えない。むしろ、明日は今日よりも必ず悪くなると思える。だからこそ、私たちの世代はもう、いつなくなってもいいんだと思える」という話を聞きました。

 

この話は、私にはとても興味深く思えました。私は今となっては死語となっていますが、いわゆる「新人類」と呼ばれた最初の世代で、高度経済成長期の申し子といわれていました。

 

そして、私の子ども時代には現代のように物が満ち溢れているわけではないけれど、戦後の貧しさはなく、食べるのに苦労した記憶はありません。当時の若者の世相を表す言葉としては、これも死語ですが「しらけ世代」があり、私たちは三無主義、つまり、無気力、無関心、無感動な若者といわれていました。

 

私の当時の印象としては、自分たちの将来に対してそれほど大きな不安はなく、日本という大きな船に乗って、ささやかであるがなんらかの自分自身の役割を果たしていくのだと漠然と考えることができたと思います。

 

しかし、現代はこの話のように、明日は確実に今日よりも悪くなると思えるほどに社会情勢が暗く、希望的観測が期待できないと思えます。社会参加していても希望がもてないということは社会参加する意義が見出せないということであり、社会から撤退する人を増加させる一因になっていると考えられます。

 

「ひきこもり」はその報告が一九九五年以降に増加しています。それまでは、一九八〇年頃に報告されるようになったスチューデント・アパシーという概念がありました。これを少し詳しく説明しておきましょう。スチューデント・アパシーは言葉通りに大学生の無気力であり、生業不安、つまり、安定した職業に就くことへの不安を訴えていました。

 

だから、そのうちのある者はフリーターのような固定されないアルバイトを続けたり、ある者は留年をくりかえしながら、ようやくあきらめて就職したりしていました。

 

このスチューデント・アパシーは、私の大学生時代によく報告されるようになりましたが、これは先ほどの私たちの世代がいわれていた無気力な若者という背景があったように思われます。

 

それでも、私たちの世代はフリーターであろうとなんらかのかたちで社会参加していて、社会から完全に撤退することはありませんでした。社会に大きな期待を抱いているわけではないものの、なんとかなるという幻想はもちえたのです。

 

私自身のことでいえば、小・中学生時代は登校すると原因がわからない頭痛や腹痛に悩まされていました。今では、それは自分が学校が苦手だったからだと理解できるのですが、そのときはまったく自覚できませんでした。

 

そして、高校時代は学校に登校できなくなり、不登校生となりました。大学時代も、あまりまじめな学生ではありませんでした。おそらく、私はなにかをさせられるとか、なにかをしなければならないという束縛感がとても苦手なのだろうと思います。

 

私のような束縛感が苦手な学生というのは、いつの時代も一定数は存在しているように思います。私のような学生が登校できるためには、学校にそれだけの吸引力があることが必要です。

 

私の小・中学生時代はそれがあったのです。高校・大学になると、おそらくそれが薄れてきて私は登校をしなくなった(できなくなった)のだと思います。

 

一方、ひきこもりの人の場合は、束縛感や拘束感が苦手というよりも、対人関係そのものが苦手で、社会からも完全に撤退してしまうのです。彼らはひきこもって誇大な幻想を抱きながら暮らしていることが多いようです。

 

ここから抜け出したいとは思っていても、彼らの幻想と現実世界との折り合いはまったくつきません。だから、彼らはひきこもり続けるのです。現代の日本は物があふれていて、ひきこもりの人がそれを意識していなくても生きていくために社会に出る必然性はないのかもしれません。

 

私は、ひきこもりの人は「ふつうに生きること」がとても苦手なのではないかと思います。もちろん、彼らは「そんなことはない」と言うでしょうが、日本の社会のように一定の成熟をとげた後では、自分自身の存在意義を見出しにくく、生き続けるための動機づけが得にくく、生への本能的なゆらぎが生じて、その結果、ひきこもりという人たちが出現したのではないかと思うのです。



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