ひきこもりの社会復帰支援について
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ひきこもりの社会復帰支援について

2020年06月16日(火)1:30 PM

ひきこもりの始まりから、ひきこもりの本人はもとより、家族も苦しみを背負うことになります。社会復帰のための支援にもっていくまでの期間はそれぞれ異なっているものの、数ヶ月から数年を要するのが一般的です。さらに、ひきこもり本人の社会復帰支援が始まってからも、多くの 場合は紆余曲折を経て、ひきこもりから脱出するまでに通常数年間を必要とします。このようにひきこもりの社会復帰支援はなかり長期にわたるものとなります。

家族はどうすれば、長期間の支援や治療に耐えていけるのでしょうか。ここではひきこもりの息子の社会復帰支援と治療が長期化しているA君を紹介したいと思います。A君は33歳の男性です。父親は都市銀行の銀行員で、仕事熱心な転勤族です。A君が小学生の間は、家族一緒に転勤していましたが、中学生になってからは単身赴任をしていました。

母親は専業主婦で教育熱心でしたが、3人兄弟の長男であるA君に対してとくに熱心に取り組んでいました。A君も母親の期待にそうように、勉強ができる子として中学・高校を優秀な成績で通過し、東京の有名私大へ進学しました。大学生活は、A君にとって楽しいものでした。大学卒業後は、地元の自動車メーカーに就職しました。就職して約半年後に仕事上のミスを上司に叱責されたことをきっかけに、出社できなくなり、それ以降、ずっと自宅に引きこもるようになりました。

現在まで、約11年ひきこもったままです。関東自立就労支援センターには両親だけが3年前から来所していて、面談を定期的に受けています。A君がひきこもり始めたとき、父親は、「おまえの育て方が悪かったから、こんなふうになった」と母親を責め、「おまえがなんとかしろ」と言って、A君のひきこもりには無関心でした。母親はなんとかしようと保健所に相談に出かけたり、医療機関に問い合わせをしていました。

しかし、結局は、「本人を連れてこないと、どうしようもない」と言われて、状況はいっこうに変化しませんでした。A君はその後もひきこもり続け、家族ともまったく話をせず、食事も一人でとり、昼夜逆転の生活を送っていました。5年ほど経過し、父親が銀行の早期退職制度を利用せざるをえなくなり、両親とA君の生活となりました。父親はもどってきた当初は、A君に対して説得や批判を繰り返していましたが、A君は相変わらず口をきかないままでした。

ようやくひきこもりはじめて8年が経過した頃に、関東自立就労支援センターに両親が初めて来所しました。そして、これまで両親は面接に定期的に通い続けています。A君は依然としてひきこもったままですが、両親が面接を受けていることは気にしています。そして、最近ではときどきではあるものの、面接でどんな話をしているのかたずねてくることもあります。

母親はもともと好きだった園芸をはじめ、父親も老人福祉センターのボランティアをはじめました。以前よりは、両親の表情もやわらいでいます。A君のケースのように、「ひきこもり」が長期化することは多いのです。ひきこもり本人ももちろん苦しみ、痛み、悲しみを抱えるのですが、それを取り巻く家族も同じような感情を抱きます。長期間にわたるひきこもりの人を支えていく家族が必要なのと同じように、ひきこもりの家族を支えていく人も必ず必要であると私は考えています。

それは支援施設のスタッフであっても、精神科医であっても、臨床心理士であっても、精神保健福祉相談員であってもいいと思います。家族の苦しみ、痛み、悲しみを受けとめてくれる人を見つけてください。それが、ひきこもりの人自身の回復にもつながるのです。また、家族も自分らしく生きてください。家族それぞれが生き生きとしていることが、ひきこもりの人の苦しみ、痛み、悲しみを結局はいやしていく効果があるものなのです。


ひきこもりはなぜ、男性に多いのか


ひきこもりには男性が多く、それも長男に多いといわれています。確かに関東自立就労支援センターにおいてもひきこもりの人は男性に多く、もちろん全員ではありませんが、長男が多いのも事実です。これはなぜでしょうか。その理由をわたしなりに考えてみます。まずひきこもりの人の年齢としては、20代から30代の人が多いという事実があります。この年代の人は当然のこととして、社会の中心的担い手であることが期待されています。

この期待の度合いが男性のほうが女性よりも強いのではないかと思います。女性の社会進出が叫ばれて、男女雇用機会均等法が施行されても、今なお、社会に出て就労していることへの社会的総意としての無意識的圧力は、男性に強くのしかかってくると考えられます。だからこそ、ひきこもりが長期化してくると、それを言葉にすることがなくても周囲の無言の圧力を感じて苦しむのは、男性のほうが多いのではないでしょうか。

もちろん、これだけがひきこもりの原因ではなく、女性にはそのような無意識的圧力がかからないのかといえば、けっしてそうではありません。ただひきこもりの人がそのひきこもりという事態に苦しむ転帰となるのは男性のほうが女性よりも陥りやすく、その結果、ひきこもりという病理として表出しやすいのではないかということです。



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団体概要
団体名
関東自立就労支援センター
理事長:
大橋秀太
理事:
大畑健太
理事:
杉下真理
住所
東京都東久留米市浅間町1-12-9
TEL
042-424-7855
メール
ki6jt7@bma.biglobe.ne.jp
活動内容
・若年者の就労支援、
 学習 支援、生活訓練
・共同生活寮の運営
・教育相談の実施
・各種資格取得支援