親の価値観に苦しめられるひきこもり・不登校の若者たち
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親の価値観に苦しめられるひきこもり・不登校の若者たち

2020年06月14日(日)12:28 PM

モノが手に入れば幸せになれるはずだという親たちの価値観を押し付けられることは、豊かな時代に育った若い世代には苦痛でしかありません。NHKは2003年にインターネットを利用したひきこもりのサポートキャンペーンをしましたが、その投稿コーナーを見ると、親の価値観に苦しめられる若者が多いのに愕然とさせられます。親の価値観を忠実に生きてきた若者は、ある時、もっと自由で多様な世界があることを知って、今までの自分の人生は何だったのかと自問し始めます。「良い子」だった若者がひきこもりになるのはこんなときです。希望を失った彼らは一歩も前に進めなくなってしまいます。

「中学生のとき、不登校になりました。社会に出てからも人間関係に苦しみました。親や周りを責めました。そして自分を責めました。生きづらくて仕方ありませんでした。そして、自分の内側を見つめまくって、やっと気づきました。原因は親や周りの関わりによるゆがんだ価値観でした。そして立ち直るのに必要なことは、今の自分の感情(喜怒哀楽)を認めることです。自分の価値観を人に押しつけないということです。自分の人生を他人からとやかく言われる筋合いはないということだと感じました。(NHKひきこもりキャンペーンの投書より)

若者たちは、時代錯誤となった親や学校の価値観に苦しみながら、日々生活しています。貧しさの記憶がしみついた親の世代が「我慢しろ」「今の時代はモノがあって幸せなんだ」「最近の若者は考えが甘い」と言ったり、学歴志向の親が子供を「エリート」にしたがる気持ちはわかります。しかし、厳しい言い方ですが、こうした親はモノの豊かな時代に育った子供の人格を否定しています。マスローの法則で言えば、子供たちは「社会的つながり」や「自己実現」を求めているにもかかわらず、親から一番下の「衣食住」の価値観を押し付けられています。親の世代は自分らしい生き方を求める子供の心が見えないのです。

団塊の世代の親は、衣食住が手に入るならば何でも我慢し、子供をエリートにするためにはどんな努力も厭わなかったのです。そんな人たちがひきこもりを、「怠け」「甘え」と見るのも仕方のないことかもしれません。しかし、だからこそ、新しい価値観を持つひきこもりは日本社会に居場所がありません。

ひきこもりを体験した男性は、一種怒りを持ってこう言います。「自分は、自分の過ごしてきた時間や環境について、ものすごい理不尽感に苦しんでいる。これまでに出会ってきた人間たち、特に家族に対して・・・・。自分の周囲に、自分の思いつめたジレンマや葛藤の構造を理解してくれる人は誰一人いません。しかし、そういう理解してくれない人たちが結託して、社会というものを形づくり、働いて生活をつくり、自分ひとりだけがそこに入っていけない状況なので、どうしようもない。」

つながりを求める若い世代は、親と同じことをすると苦痛、絶望、あるいは恐怖さえも感じてしまいます。彼らは、親の世代のように馬車馬のごとく会社で働くことができません。日本の若者たちは、会社だけに支配された親の世代に幻滅を感じ、会社という組織の奴隷のような生活に絶望しています。しかし、人間らしい人生を求めても手に入りません。物の豊かな時代になれば、マスローの法則によると、人間は精神的満足感を求めます。

ところが、「自己実現を求める自由」は日本社会には存在しないのです。異質の人間を排除する文化は今に始まったことではなく、日本では昔からありました。太宰治の「人間失格」の主人公、葉蔵も価値観の違う世間への「恐怖」と居場所のない「不安」を体験しています。

「つまり、自分には人間の営みというものが未だに何もわかっていない、という事になりそうです。自分の幸福の観念と、世のすべての人たちの幸福の観念とが、まるで食いちがっているような不安、自分はその不安のために夜々、てんてんし、呻吟し、発狂しかけた事さえあります。自分は、いったい幸福なのでしょうか。自分は小さい時から、実にしばしば、仕合せ者だと人に言われて来ましたが、自分ではいつも地獄の思いで、かえって、自分を仕合せ者だと言ったひとたちのほうが、比較にもならぬくらいずっと安楽なように自分には見えるのです。(『人間失格』新潮文庫版)」

太宰は裕福な家庭に生まれました。貧しい農民ばかりの津軽の地、小学校に馬車で通学する子供時代を過ごしました。そんな太宰が衣食住うに関心を持たず、生きる意味とか、自分とは何かに関心を持ったことはとても自然なことでした。しかし、周りは「食べることに必死な人たち」ばかりで、彼の気持ちを誰一人理解できませんでした。周囲と違うと気づいたとき、太宰は自分と世間の幸福の概念が根本から違う苦しみを体験しました。価値観の違う太宰は、ひきこもりと同じように、日本社会に自分の居場所を失ってしまったのでした。



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