非現実的な言動が見られるひきこもりは、病理性が高い
「非現実的な言動が見られるひきこもりは、病理性が高い」ということについてここでは書いてみたいと思います。ここで言う非現実的な言動とは、妄想がらみの言動を指します。その一つが、「誰もいないのに、人の声がしてくる」というような幻聴などの幻覚症状です。幻覚には、このような幻聴ばかりでなく、「そこにないものが見える」という幻視がありますし、味覚では幻味、臭いでは幻臭、皮膚知覚では幻触などがあります。妄想には被害妄想や関係妄想などがあります。
被害妄想には「誰かに監視されているようだ」という注察妄想や、「毒ガスが充満しているところには出て行けない」といった被毒妄想があります。関係妄想には、「道を行く人が自分を見つめているし、何か文句をいいたそうだ」というような妄想気分もあります。こうした現実には起こりえない体験や考えを、幻覚や妄想と言いますが、このような病的な体験や考えに発した「ひきこもり」体験を「病理性が高い」と言うわけです。病的な体験や非現実的な考えが、「ひきこもり」の背景になっているということがわかれば、「病理性が高い」ということはすぐに判断できると思います。
このように、どちらかというとわかりやすい病理性の高さを問題にしてきましたが、「ひきこもり」を判断するときに難しいのが、人格形成との関係で病理性を判断しなければならないときではないかと思います。ごく一般的に言えば、その年齢に応じた人格形成がなされていなければ、年齢にふさわしい行動ができませんから、それを問題行動と見ることもできます。ただ、それを病理的と考えるか否かが問題把握の分かれ目になると言えます。そして、そのことにとてもよく当てはまるのが「ひきこもり」なので、あたかも「ひきこもり」が病気であるかのように言われるのです。
「ひきこもり」はその人の行動パターンの一つであり、そのような行動パターンをとらざるを得ないということに病理性を感じるときもあるのですが、すべての「ひきこもり」が病理性に裏付けられているというわけではありません。でも、かなりの「ひきこもり」には、人格形成上の問題が潜んでいることは確かなのです。そこに焦点を当てている私は、心の育ちとその歪みから「ひきこもり」を考えようとしたり、心の仕組みの発達とその歪みから「ひきこもり」を考えようとしてきました。
しかしながら、背景にある病理性がどのようなものであれ、表れとしての「ひきこもり」と、「ひきこもり」をすることによって当人がどのような苦しみを味わっているかということを考えないわけにはいきません。その当人が味わっている悲しみや苦しみ、あるいは焦りやあきらめなどを、私たちは感じたいものです。そして、彼らが感じているこのような苦しみを、なんらかの方法で軽くすることもまた重要なのです。つまり、「ひきこもり」をしている人の人格の成熟を待っていればよいというわけではないということなのです。ましてや病理性が高い「ひきこもり」にあっては、まずはその病理を改善することから始めなければならないでしょう。
病理性の高い「ひきこもり」は早めに精神科医に診てもらう必要がありますし、早く治療のレールに乗せることが望ましいというのはその意味です。それだけに、病理性の高い「ひきこもり」と、そうでない「ひきこもり」との鑑別をできるだけ早くしなければならないのです。そして、病理性が高いとはいえなくても、人格の成熟が遅れているようなタイプの「ひきこもり」の人には、時間をあげて人格の形成を待つことや、安心できる人との二人三脚をそれとなく勧めたり、安全感がもてる場所を提供して安心感を醸成することも心がけなければならないのです。
また、ピアカウンセリングを受けるチャンスを作ったり、あるいは薬物療法を導入したりすることも必要なのです。いったん「ひきこもり」が始まると、ずっと「ひきこもり」続けるというわけではありません。いえ、人は必ず「ひきこもり」から脱却していくものなのです。それを私は「ひきこもり」からの生還と言ってきました。その「ひきこもり」からの生還は、多くの場合は、その人の人格の成熟がもたらしたものと言ってもよいと思います。ということは、「ひきこもり」をするというのは、その年齢にふさわしい人格の成熟がみられていなかったということになります。
おもしろいことに、人格の成熟は思いがけないきっかけで進展することがよくあります。事情があって人格の成熟が遅れていた人でも、ある人との出会いによって、ぐいっと成熟が進むことがあるのです。安心できる人と出会って未熟さから抜け出る人もいますし、自分が近づきたいと思う人と出会って人格の進展を見る人もいます。人に信頼されるという体験が自分を変えることがあるように、自分を振り返るきっかけをつくってくれた人に出会って自分が変わっていく人もいます。言うまでもなく、人格が成長するには時間がかかります。その時間のかかり方は人によっても違いがありますから、年齢だけでは決まりません。
多くの人は、その年齢にふさわしい人格をつくることができるのですが、でも何らかの事情で、その年齢にふさわしい人格の成熟が妨げられることもあるのです。その事情によっては病理性の高いひきこもりもあるので注意を要しますが、病理性の高い「ひきこもり」とて、その病理に対して適切な治療をおこなえば、必ず「ひきこもり」から抜け出ることができると私は考えています。
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