人間関係を拒絶するひきこもり
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人間関係を拒絶するひきこもり

2020年06月12日(金)11:20 AM

ひきこもりとは、人間関係を取り結ぶことに悩み、学校、社会、友人、そして親からさえも逃避し、人間関係を拒絶することです。それは他人との関わりや付き合いを苦手とする段階からさらに進み、怖いとおびえ感じるところまで追い詰められてしまったものです。ひきこもる子どもたちは、根底では社会(特に同世代)と関わりを持ちたい(触れ合い欲求)と思いながらも、それができない自分に失望し、将来への自信をしだいになくしていきます。

つまり、本当は触れ合いたいのに触れ合えないのです。社会との関わりは、わずらわしい人間関係をも受け入れていくことですが、そういうわずらわしい人間関係を受けとめきれない状態なのです。声をかけることができないどころか、長期化すると声をかけられるのも恐ろしいと感じることもあります。人間関係がつらく、わからなくて、そして信じられないのです。そんなわずらわしい人間関係が襲ってくるから、意に反してまでもそれを遮断し、人間関係を拒絶することによって自己保存(自己防衛)をはかるのです。ひきこもりには「燃え尽き息切れ型」と「一人遊び嗜好型」の二つの傾向があるように思います。

燃え尽き息切れ型とは、小さい時から親や周りの過度の期待と仲間との競争の中で過ごしてきたために入学と同時に燃え尽きたり、入試に失敗して先がまったく見えなくなってひきこもってしまうタイプです。どんなに活発な子どもでも、受験の挫折によって心が折れてしまい、人間性がまったく変わってしまうことがよくあります。学歴や能力主義の価値観しか知らず、またそれが絶対と信じて、10代を受験競争だけに突っ走ってきた子どもたち。だから、自分の学力の限界が見えたときが、人生の限界になってしまうのです。

一人遊び嗜好型の子どもは、もともと内向的かつ神経質、几帳面で、いわゆる「親の言うことをよく聞くいい子」が多いようです。このまじめさが、成長し中学生くらいから、人間関係を強制されると裏目に出て、人間関係の「遊び」「あいまいさ」(融通ということ)の部分を受け入れられない不自由さを呼び起こすことがあるようです。そのために、どうしても「几帳面」にいかない人間関係の集団に対して苦手意識が強くなってしまいます。勉強のように理屈どおりにいかないのが人間関係ということが「体」で理解できないのです。

このタイプの子どもは、何かのきっかけで不登校になったり高校を中退し、一人でいる時間が長期化してしまうと、本質的に持っていた内向的で人との関わりに過度のエネルギーを要する性質が加速されて、2、3ヶ月でひきこもってしまうことがよくあります。いずれにしても、昭和40年代以降に誕生した子どもたちに、このひきこもり現象をよく見かけるのです。そこには、人間関係の希薄・合理化(群の喪失)した生活スタイルの中で育てられてきて、人間関係を学ぶチャンスにめぐり合っていない影響があるように、私には思えるのです。

ひきこもる子どもたちは自己の世界に満足しているわけではなくて、友達がほしいけれど、一方で作れないためにやむをえずあえて「一人が好き」と言うしかないつらい状況、非常に相反する葛藤の中で苦しんでいるのです。現在ではゲームが子供の遊びとして定着しています。人気が高いのはロールプレイングゲームと言われるもので、相談室に通ってくる子供も、ゲームも通した友達と一緒に楽しんでいます。

ロールプレイングゲームというのは、ゲームの中の特定の人物に自分がなり、仲間をつくったり、知らない町を冒険したり、敵をやっつけたりするゲームです。こういうゲームを通じて、昔我々がやっていたかくれんぼなどの遊びを疑似体験しているという気がします。本当なら心と心の交流を重ねて遊びたいのですが、現実の世界で人間関係を取り結ぶチャンスが与えられず、その「能力」に不安をもつ子供にとっては、画面の中で人間関係を結べるゲームは、とても安心感があるのでしょう。

それは自分の思い通りにいかない生身の人間関係とは違って”征服”できるからです。問題は、人は一人称では生きて行けず、すべてと言っていいくらい二人称、三人称の中で人間関係をつくり生活しているわけです。にもかかわらず、一人称のライフスタイルができあがり、人間関係が当たり前に獲得されていた時代から人間関係を学ぶ(残念ですがコミュニケーショントレーニングとして)時代にシフトされているのです。そして皮肉にもその人間関係を学ぶ苦労から逃げられる場が「勉強」になっていることもあるのです。ある若者が中学時代を振り返り、こう言いました。

「中学で人間関係に襲われた僕は勉強という”安全地帯”に逃げ込んだんです」と。つまり、ひきこもる子供にとっては勉強もゲームも人間関係からの回避行為としては同じことであり、そのつらさを紛らわしているといえそうです。そこで一人称生活が定着している現在、このままだと子供たちが現実の人間関係の結び方を学ぶ機会がますます少ないということです。ここで問題なのは、この子が、ゲームでしか遊べない子供なのか、ゲームでも遊べる子供なのか。それを見極めることだと思います。

遊びの中のひとつとしてゲームがあるのか、現実の世界で人間関係を取り結べないから、ゲームの中で埋め合わせしているのか、ということです。後者の場合だと、ひきこもりに入っていく可能性があります。とかく親は、子供が長時間ゲームをしていると、「この子はゲームでしか遊べないのか」と思いがちです。しかし、その子の生活をずっと見てみると、意外と、ゲームでもほかのものでも遊べるという面が見えることがあります。

その場合は全然心配は無用でしょう。ゲームでしか遊べないこの場合、心の問題、とくに友達作りへの悩みに気配りが必要と思います。ともあれ、ゲームがすべて悪いと単純人見てしまうのは少し考え物ですが、友達とのふれあいを強く求めているひきこもる子供たちの心情は「いいとは思わないけど、友達がいない自分にはないよりあったほうがいい」ようです。四年間家にひきこもっていたある若者が相談室に躊躇しつつ来てくれた初日のつぶやきが忘れられません。「どんなに楽しいゲームも、友達とのふれあいに優るものはないですね」と。



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