成長過程としてのひきこもり
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成長過程としてのひきこもり

2020年06月07日(日)9:46 PM

自我の成長とともに自己を確立していくのが人ですが、その自我の成熟に人と人との関わりが重要であることは言うまでもありません。確かに自分が自分以外の人と関わることによって「自分らしさ」が成長していくわけですから、自我の成熟を促す要素として人間関係が重要であることは間違いありません。

 

しかしながら、それだからといって「自分らしさ」を育てるために、いつでも他人がいなければならないのかというと、そうではないこともまた自明です。古来、自我の成熟を図り、自己を確立するために、宗教者や剣術家は直接的な人間関係を絶って山ごもりをしたと言われています。

 

そこまでしないまでも、私たち自身が自分を省みても、あるときはひとりきりになって自分と対峙することで、自分を見直そうとしたことがあるはずです。つまり、そのときが自我の危機であったわけですが、その自我の危機を早めに察知したからこそ、自我の成熟を図ることを試みたと言えます。

 

「自分らしさ」を作り出すためには、自分との対話が必要なのです。つまり、自己を確立するための成長過程にあっては、ときには人間関係を避けて自分自身と対峙しながら、自我、つまり私の言う「自分らしさ」を育てる必要もあるということです。それは、ごく一般的な言い方をすれば、「孤独が自分を育てる」ということにもなるでしょう。

 

「孤独に耐えられるようになってこそ、一皮むけた自分になるのだ」ということもよく言われますが、孤独であることの意義は、そこにあるとも言えるでしょう。学校社会からの「ひきこもり」や家庭社会からの「ひきこもり」であっても、「ひきこもり」をしている心性には、「孤独」が大きな位置を占めていると考えられます。

 

その意味からも、ある時期に体験する「孤独」は、けっしてその人の人生にとってマイナスになるものではなく、むしろ、「孤独」を通して自分を見直し、新たな「自分らしさ」を作り出す自分づくりであると考えることができると思います。「ひきこもり」の中には、こうした意味もあることに気づかなければいけません。

 

「ひきこもり」は、自分がそのときに所属しなければならない社会からの退却、社会的退却であると考える向きもありますが、そのときの社会的退却をマイナス面から見るばかりではなく、プラスの面からとらえる必要もあるのです。

 

自分の心に傷がついたり、自分の心が壊れたりしないように、無意識のうちに自分の心を守ろうとする心の働きを、自我防衛機制と言いますが、この自我防衛機制にはさまざまなものがあるとされています。

 

自我防衛機制を働かせるには、心のエネルギーがかなりいるものから、比較的心のエネルギーの消費が少ないものまでありますが、もともと心のエネルギーを豊かに持つ人は、自分の心に浮かびかねない危険な考えを無意識的に阻止しようとする「抑圧」という力強い防衛機制を使ったりします。

 

また「反動形成」という自我防衛機制は、こうした危険な考えを逆転させて、無意識的に行動しますが、たとえば性的な関心が強い人ほど性的嫌悪を示すことが知られています。これも、かなり心のエネルギーを必要とする防衛機制と言えるでしょう。

 

こうした自我防衛機制のうち、心のエネルギーをさほど必要としないものもあります。心のエネルギーを使い果たしてしまってわずかしか残っていない人や、心のエネルギーをためてこなかった人は、自分の心に傷がついたり傷がつきそうになったりしたとき、心のエネルギーをあまり必要としない自我防衛機制を使います。

 

 

その代表が「逃避」です。この「逃避」という自我防衛機制は、傷つくことから自分を守るために空想に逃避したり、その反対に現実に逃避したりします。空想に逃避するという中にも、「疾病逃避」のように病気に逃げるものもありますし、現実に逃避するものには、「仕事逃避」にように熱心に仕事に励むことで家庭問題から逃げる逃避もあります。

 

さて「ひきこもり」ですが、こうした「逃避」の防衛機制で説明されてきたものとは異なって、「孤立」という自我防衛機制を無意識的に駆使して、自分が傷を負わないようにしているものもあります。

 

「逃避」という自我防衛機制によって行われる「ひきこもり」には、ともするとマイナスイメージがつきまといますが、これも自分の心に傷がついたり、心がズタズタになるよりもよいという意味もあるわけで、けっしてマイナスイメージで語られるばかりではないはずのものなのです。

 

「孤立」という自我防衛機制は、「逃避」よりもずっと心のエネルギーを必要とするばかりか、俗に言う「名誉ある孤立を選ぶ」ともいわれるぐらいのプラスイメージをもつ防衛機制と言ってもよいでしょう。その意味でも「ひきこもり」はけっしてマイナスイメージで語られるばかりではないことを私たちは知る必要があります。

 

「ひきこもり」は、自分を傷つける人や自分を傷つけることからの一時的な退避であるとともに、心のエネルギーを溜め込む積極的な足踏み状態であると考えることができるのです。

 

 

人を傷つけないためのひきこもり

 

 

「名誉ある撤退」や「名誉ある孤立」の中には、自分が傷つかないために社会から退却したり撤退することもありますし、孤立を選ぶこともあるのですが、人を傷つけないために「引きこもり」をすることもあるということを知っておかなければなりません。つまり、人を傷つけたくない人にとっては、人と接することを極端に少なくするしかないのですから、孤立したり逃避したりして、できるだけ人と接しないですむ生き方を選択するようになってしまいます。

 

これは、自我の防衛機制というのとも少し、異なった心の働きであり、自己愛的な傾向が強い、やや未熟な心性に基づくものと考えてもよいでしょう。

 

ということは、相手を傷つけたくないとは言うものの、もしも相手を傷つけてしまったら、傷つけてしまった自分を許せないと思い込むことから始まった「ひきこもり」であったり、相手を傷つけてしまったときにどうしてよいかわからないし、そんなときに自分がどんな態度をとってしまうか考えると恐ろしいから、人と接することを避けているという「ひきこもり」もいるのです。

 

自分がとった態度や自分のとった行動に、自分が責任をもてないということなのですから、その心性はきわめて未熟なものですが、「ひきこもり」をすることによって、自分を破綻に追い込まないという意味では、防衛的であり、肯定的に捉えることのできる「ひきこもり」ということができるでしょう。



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