不登校~中学三年生の女子生徒のケース~
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不登校~中学三年生の女子生徒のケース~

2020年06月03日(水)9:19 PM

A子さんは中学三年生で、二歳下の妹がいます。父親は小型トラック一台で便利屋をしていて、母親もそれを手伝っています。他にもクリーニングの取次ぎと配達をしていて、一日中電話の対応、配達、窓口での受け渡しと忙しいようです。

 

A子さんの相談は、長期化している不登校のことでした。両親は注意深く娘の状態を見ていました。A子さんの訴えには、考えられるかぎりの医療的な対応もしていました。ですから、必ずしもわたしたちのところに相談したかったわけではありません。

 

受診していた病院から紹介されて、しぶしぶ来談しました。医療的にはもう行うべきことはなく、不登校への取り組みやはたらきかけは心理面からのアプローチのほうが適している・・・比較的長い間様子を見てきた医師の判断でした。

 

面談の第一回目、両親が来ました。しかし本人は来ていません。面談室に入って椅子に腰掛けたとたん、父親から深いため息が洩れました。姿勢を見ても、疲労困憊と言ってよさそうな状態でした。わたしは思わず「お仕事は忙しいですか?」と聞きました。

 

すると、仕事がたいへんなうえに体調がすぐれず、医者通いの毎日だと言います。そして話は母親にバトンタッチされ、父親が薬をもらっているのは精神科で、娘も同じ先生に診てもいらおうかと思うが、どうだろうかと質問してきました。

 

「初めてお目にかかりますので、いきなり聞かれてもちょっとお答えできません。それよりもまず、ご家族のことを紹介していただけますか?それに二人の娘さんたちは、今日はどうしておられるのかもお聞きしたいです」と話をスタート地点に戻しました。両親それぞれが名前や年齢を簡単に話しました。

 

そこまではよかったのですが、子供の話になったとたん、延々とA子さんに対する心配の羅列が始まりました。不登校に関しては、「あの子は神経質なところがあって、本当は学校に行きたいのだけれど、クラス替えで新しいグループができつつあって、その中に入ることができないのです」と母親が言います。

 

すると父親が、「わたしにもともとそういうところがあって、会社勤めよりも自営業を選ぶことになったんです。

 

A子もそういうところを受け継いでいて辛いのだと思います。わたしには良くわかります。」と言い、そしてまた母親が、「主人も仕事柄、同業者との忘年会などに付き合わなくてはならないのですが、お酒も飲めないのに出費はかさむし、そんなところで本当にたいへんで・・・」と、とどまるところをしりません。

 

誰のことを、どのように理解しようと構わないのですが、話し手の気持ちと内容までが混乱してしまっているように感じました。主語はどれで、述語はどれなのか。誰に起こった出来事で、誰の気持ちなのか。それが明らかでない話は、全体で一つのように見えてしまいます。

 

それに面談において、そこにいない人の心の内の推測ばかりしているほどつまらないことはありません。来ている人は尊重されず、いない人に時間が食い尽くされていくからです。加えて、話されているのが本当に話題になっている人の気持ちなのか、ここで話している人の考えなのかもはっきりしません。

 

できるだけ両親自身の気持ち、あるいは何かが起こったときに両親はそれぞれ何をしたのかを聞こうとしました。しかしこれは相当努力を要する仕事でした。ちょっと油断していると、いつの間にか、A子さんの気持ちや考えの予想を両親が交替で訴えるのでした。

 

このような状況は、時々見かけることですが、大きな問題を含んでいます。たとえばあなたが家族でどこかに出かける準備をしているとします。ところが子供たちの中に一人、元気のなさそうな子がいます。気になるあなたは、どんなふうに話しかけるでしょうか。

 

「どうかしたの?」と問いかける人、「頭痛がするの?」と聞く人、「しんどいなら、出かけるのはやめておこうか?」と言ってしまう人などさまざまです。あなたはどのタイプの人でしょうか。A子さんの両親は、そろって、「出かけるのはやめようか?」と言う人でした。

 

そして、「病院へ行こうか?」と提案する人たちでした。確かに、人間のことに万全はありません。医者に診せないで万が一のことがあったらと思う気持ちが、まったく不合理なものだとは言いません。

 

しかし親だからといって、子どものことが100%分かることはないのですから、できるだけ本人が、自分のことは自分で表現できる力を育てておくことが大切です。

 

そのためには日常的に、自分に属することは自分の言葉で伝える習慣を持つ必要があります。離れている二人の間で、分かってもらいたい事が生じたところに、言葉は生まれます。目と目で通じたり、あうんの呼吸で了解できてしまう関係は一般的なものではありません。

 

胸の内や表情を読みあって理解した気持ちになるより、相手に耳を傾けるほうがお互いを育てると思います。



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