不登校と家族~中学二年女子生徒のケース~
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不登校と家族~中学二年女子生徒のケース~

2020年06月01日(月)10:33 AM

B子さんは中学二年生の女子です。二学期から学校に行けていません。そうこうしているうちに、十一月末になってしまいました。父親は印刷会社に、母親は保険会社に勤務しています。高校三年生の兄は、大学受験間近で勉学に励んでいます。

 

まず母親から様子を聞き、次に本人に会って面談をしました。その結果を本人の了承の下に、ご両親にお話したいと伝えました。しかし、父親は多忙で出席できない、わたしがうかがって父親には伝えるからと母親だけが来所しました。

 

面談でも見られたことですが、B子さんはとても気遣いの細やかな少女でした。わたしはいいですからどうぞお先にと、何でも譲ってしまうようなところがありました。本心でそう思っているかはさておき、彼女にはそういった癖があるのです。

 

相談に乗っているほうとしては、一度でもいいから彼女の家族全員に会いたいと思いました。家族とB子さんのやりとりを見てみたいと思ったからです。しかし、兄の受験や両親の年末業務多忙とのことで、実現は困難でした。

 

話し合いの結果、B子さんが一人で週一回の面接を受けることになりました。母子で定期的に面接を受けるかたちもあったのですが、そうたびたび仕事を休めないという母親の主張も容れての結果でした。彼女は毎週、きちんと遅刻も欠席もなくなってきました。ところがある日、不思議なことが明らかになりました。

 

彼女は十四歳の小柄な中学生です。どちらかというと童顔だと思います。そのB子さんが自宅から通ってくる往復の電車、バスの運賃を子供料金で払っているのです。要領のいい子の考えそうなことだと思いました。それならなかなか抜け目のない、見込みのある不登校だなんて思ったような気がします。

 

ところが実はそうではなかったのです。子供料金を払って通ってきていたのは、母親が子供料金しか手渡さないからでした。これまでもそれで通用してきたのだからと、継続して来談することが決まった段階で、母親が言ったのだそうです。

 

中学生になったばかりの子が親といっしょに出かけるとき、まだ子供料金でもいいかな、などとこっそりごまかしたりするのはよくあることなのかもしれません。

 

しかし、もうすぐ中学三年生になる子供を、一人で面接に出す親の用意としてはおかしいと言われてもしかたがありません。経済的には十分豊かな家庭での話なのです。このことを聞かされたわたしは何か違和感が残りました。

 

そこで彼女が不登校になってからの家族のことを、あらためて考えてみました。父親や兄は自分たちの生活には何の影響も受けていません。

 

母親は児童相談所に三度、B子さんといっしょにやってきました。しかし、あとは自分のことは自分でやりなさいという構えでした。つまり、不登校状態の家族がいても、周りの人たちの暮らしにはほとんど影響がないのです。

 

人には、誰かに自分のことで思いきり迷惑をかけてみたい、心配してうろたえてもらいたいと思う気持ちがあります。幼い子供が注目してもらいたくて、何かしでかすことがあるのは誰でも知っていることだと思います。

 

理屈を言えば、彼女の家族は誰も不登校について専門的な知識を持っているわけではありません。ですから何かをしろと言われてもしてやれることがない、となればそれまでです。

 

加えて、それぞれ多忙な日々を送っていますから、学校にも行かず家でゴロゴロしているかに見えるB子さんが、家族に何かを求めることなど出来なかったと思います。

 

B子さんは、本当はみんなに心配してほしかったのではないでしょうか。元気な人だけが楽しく快適に暮らせる家ではなく、時には病む人を家族で包み込むことができる家を求めていたのではないでしょうか。

 

みんなに対してあなたたちも歳をとって弱ったり、壁にぶつかって苦しむことがきっとありますよ、そういうときにもお互い支えあえる家族になりたい、彼女の症状はそんな声のあらわれだったのではないかと思いました。



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