非行~中学3年生の女子生徒のケース~
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非行~中学3年生の女子生徒のケース~

2020年06月01日(月)10:31 AM

中学三年生のQ子さんが急速に非行化し、周囲の人たちは困惑していました。二年生までは勉強もできるほうだったし、家庭でもよく手伝いをするいい娘だったようです。これといった原因も思い当たらないので、悪い友達でもできて誘い込まれたのだろうと関係者は推測していました。

 

Q子さんは兄と弟二人の四人兄弟のただ一人の女の子です。父親は全国チェーンの販売店の統括マネージャーで、日本中を飛び回っています。母親は結婚、出産後、あらためて看護学校に通い、卒業後は看護師としてがんばっています。

 

兄は工業高校の三年生、弟は双子の小学一年生です。ずいぶん歳の離れた兄弟だなあと思っていたところ、事情がわかりました。父親は二度目の結婚でした。兄妹二人の母親は、十年近く前に病気で亡くなっています。

 

現在の母親は、父子所帯で生活していた彼らに何かと親切にしてくれていた、父親の元部下だった女性です。小学生二人を抱えた父子所帯に、よく嫁いできてくれたと感謝の念がある父親は、兄妹に母親の手助けをするようにいつも言って聞かせてきたといいます。

 

再婚後、数年して双子が生まれました。やがて双子から少し手が放せるようになると母親の中に、何か自分も確かな仕事をしたい気持ちが沸きあがってきました。

 

昔は結婚よりも、仕事を選択して生きていくつもりだったのだそうです。母親が再び勉強をして、それを活かした仕事を持ちたいと希望したとき、父親は大賛成でした。そして兄妹には、「これまで以上に母さんを助けて、みんな仲良くがんばっていこう」と言ったそうです。

 

具体的な手伝いとは以下のようなものでした。兄妹は日曜日を除く一週間を半分ずつに分けます。そして自分の当番の日には、弟たちが保育所に通っていた時代には彼らを迎えに行き、母親のメモにしたがって夕飯用の買い物をして帰宅します。

 

そして夕方、母親が戻るまでの間、弟たちの面倒を見ながら掃除と風呂わかしをします。これを実行するために、兄妹は学校のクラブ活動には参加していません。それに兄は当番日以外は、ファーストフード店でアルバイトをしていました。

 

こんな生活の中でQ子さんの非行が始まったのです。なぜだろうと皆が思ったのも当然のことでした。わたしは、何か問題が起こったからといって、必ず原因があるとは考えません。

 

問題行動の原因などというと、一見客観的なような気がしますが、その大半はほかにもいくらでも考えつきそうな説明です。それより人のすることにはそれぞれ、事情や理由があるのだと思います。だからこそ人は、誰かにわかってもらいたいのです。

 

彼女の場合はこんなことでした。兄は来春、高校卒業後は就職を希望しているそうです。父親が大学卒だと聞いていたので、意外に思っていました。希望すれば大学進学できる家庭条件ですし、両親もそれを望んでいるように思われました。

 

しかし兄は自分から就職を希望し、加えて妹にこんな話をしていました。「自分は高校を卒業したら、この家を出て一人で暮らす。そのために就職をするし、今、アルバイトでお金をためているのもそのためだ・・・」これまで兄妹は、分担して家事を支えてきました。それぞれの意思を尊重しあう両親の決めたことを、一生懸命守ってきた兄妹でした。

 

けっして不満ばかりあったのではありません。しかし自分たちの努力に対して、理解やねぎらいはなかったと感じていたようです。兄があと半年で役割を降りたいと決意を打ち明けたとき、兄がしてきた我慢がわかるだけに、お兄ちゃんだけ逃げ出すのはずるいとは言えなかったのです。

 

そしてあと半年たったら、毎日自分がこの仕事を引き受けることになってしまう・・・・これからの高校生活三年間がそんなふうに浮かんできたのでした。

 

面接における父親のQ子さんへの見解は厳しいものでした。皆で力を合わせて築いてきたものに対する冒涜であると、母親の前向きな生き方と対比させて語りました。

 

母親は黙って聞いていました。そのころ家出状態だったQ子さんは、地域でもちょっと有名な、高校中退の無職少年のアパートに転がり込んでいました。

 

いい噂を聞かない少年であることは彼女も知っていました。「でもあそこにいるとほっとするし、彼は優しい・・・」Q子さんは面接室で静かにこう言いました。兄妹はよくがんばっていたのだと思います。与えられた条件によく対応していたのです。

 

しかしその二人に対する家庭の反応は特にありませんでした。当然としか受け止めてもらえていなかったのです。母親は四人の子育てと、自分の生き甲斐を考えることで手一杯でしたし、父親は多忙なため、順調にいっていることには鈍感になっていたのです。

 

泣いても応じてもらえない赤ん坊は、やがて泣かなくなると言います。受け止めてもらえる希望がないと思ったとき、人はそこに向かって働きかけなくなってしまうものなのでしょう。相手の言いなりになるのではなく、お互いが言うべきことを言い合い、応える事が大切なのを再認識させられた出会いでした。



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