いじめ・不登校~中学二年女子生徒のケース~
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いじめ・不登校~中学二年女子生徒のケース~

2020年05月30日(土)9:49 AM

「わたしはね、早いんです、寝るのが。仕事の関係で朝も早いですしね。ちょっとでも音がすると目が覚めるんですよ。そうするともう寝られなくてね。イライラするんです。仕事にも影響しますしね・・・・」父親がそう話すのを聞いても、まさか寝る時間が午後七時だとは思いもよりませんでした。

 

祖母、両親、そして中学二年生のA子さんの四人で暮らす家は、田舎の古い小さな一軒家です。六畳二間と台所、この空間で、音がしても電気が明るくても寝られないと主張する父親の言い分を受け入れた、まことに奇妙な暮らしが展開されていました。

 

父親は仕事が終わるとまっすぐ帰宅します。そしてすぐ入浴、そしてかなりの量の晩酌をしながら夕食、これがまだ夕刻六時前のことです。そして酔ったところで、そのまま隣の部屋で横になります。あとは夢の中です。

 

女性三人はその後、そっと静かに夕食を食べます。食後はA子さんがイヤホンでテレビを見て、祖母と母親は音の聞こえない画面を、電気を消した部屋で見て過ごすといいます。

 

想像しただけでも不思議な光景です。どんな事情があっても、対策にも程度があると思うのですが、A子さんはこのような環境の中で育ってきたのです。

 

相談は、いじめにあった末、不登校をしているということでした。A子さんは非常に元気のない感じの子で、こちらからの問いかけには答えますが、自分から何か話す気はありません。

 

将来の希望を聞くと、「家を出たい」と言います。何かになりたいとか、大学に行きたいとか、そんな答えを予想していたので戸惑いました。「なぜ?」と問うと、「酒乱の父から逃げたいとでも書いておいてください。それに祖母、母親からも逃れたいんです。二人がわたしに甘すぎるのも重荷なんです」と独特な言い回しで答えます。

 

そういわれても、相談の症状とどう折り合いをつけたものか、わたしのほうが戸惑いました。本人の意思もあって、定期的に面接をすることになりました。二週間に一度、わりにきちんとやって来るのですが、なかなか頑固でいろんな主張もしてきました。

 

家族に言っても仕方ないとあきらめていたことを、わたしに話しているように思いました。そしてたまには登校したりもしました。半年後の夏、彼女が近所に下宿先を見つけました。父親の反対や祖母の後押しなど、いろいろあったのですが、高校入試に向けて、夜勉強しなくてはならないことを理由に家を離れました。

 

朝晩の食事だけに帰宅し、他の時間は下宿先で過ごしています。本人なりに受験勉強も開始し、ときどき休みながらでしたが再登校を始めました。そして中学卒業後は家を出て、働きながら定時制高校に通う決意を固めました。わたしも含めて周囲の者は、いきなりたいへんなことを決心し過ぎだと心配しました。

 

段階的に実行してはどうかと助言していたのです。しかし、A子さんは受けつけませんでした。そして翌春、見知らぬ街で、一人暮らしをして乾物屋の店員として働きながら定時制高校に通い始めました。

 

これは思いがけない展開でした。この独立心はどこで育ったのでしょうか。過保護の問題指摘や反省を口にすることには、みんな慣れっこになっています。その反省の裏には、どこか親の自己満足の影が見えます。一方、結果的に強い独立心を育てたこの環境がほめられることはありません。

 

この父親の暮らしぶりが、A子さんの独立心を育てるためであったなどとは誰も言わないでしょう。しかし事実は、述べたとおりでした。いろんなタイプの親がいて世の中なのだと、あらためて思いました。

 

一般的には居心地のよさは依存心を育て、居心地の悪さは独立心を育てるようです。



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