親子関係について~小学三年生A君のチック症~
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親子関係について~小学三年生A君のチック症~

2020年05月23日(土)10:46 午前

誰だってぎくしゃくした親子関係を望んではいません。まして親の庇護を受けずに、心安らかに成長できない子供ほど、その思いは強いものです。




ただただ願うのは窮地に陥ったときに、自分に対して親がなりふりかまわずに無償の愛情をかけてほしいとそれを望んでいます。常日ごろはどうであろうとも、いざというときに、自分を親の胸に引き寄せて欲しいと願っています。




たとえ子である自分がどんなにふがいなくても、かけがえのない存在として抱きかかえてくれることを願っているのです。




では親として、そうした子供の苦悩を目のあたりにして、逃げることなく、手抜きすることなく、子供に真正面から向き合えるでしょうか。




手出し、口出しすることなく「ただ聞いているだけで、親なのか」という邪念にも似た感情が親に芽生えたとしても、なりふりかまわずにわが子を抱きしめることができるでしょうか。




理屈や理論は必要ありません。マニュアルも必要ありません。親が無力であっても、親として子どもとともに泣けるでしょうか。ただ、それだけが重要だと思うのです。それは、まず「じっと」子供が辛さをつぶやくまで聞くことです。




親のできることはそれしなかいと思います。そして心して子供の「そうなるしかない」気持ちを手間をかけ、推し量り、「じっと聞く」ことだと思います。




「聞き流しているだけではないのか」という親としての苦しみに襲われても、あきらめることなく「じっと聞く」ことが大切なのです。




子供にとって「いざその瞬間」が親の懐に抱かれるときです。そう思うと、親子関係がある限り、いくつになっても子供は親の抱っこが恋しいのです。




また、懐かしいのです。子供たちの相談現場に身を置く立場として、わたしはくやしい思いにかられることがよくあります。それは瀬戸際に立つ子どもがつぶやく、切なる思いを親が理解できないことがあまりにも多いからです。




不思議なことに「他人の子供なら理解できるが、わが子となると・・・・」と、親自身が迷ってしまうのです。たとえば、次のような言葉です。みなさんも、自分の子供がつぶやいたとして、子供の気持ちを「心で推察」してみてください。




僕は、おねえちゃんと、ネンネするから、おかあさんは、おとうさんと、ねなさい!これをつぶやいたのは、小学校三年生のA君です。A君はチック(首や肩が頻繁に傾く、まばたきが激しくなるといった症状)がたびたび起きる子供で、母親に連れられて相談室を訪れました。




母親はA君のつぶやきに、こう答えました。「だいじょうぶよ。きょうはおかあさんと寝ようね」心の距離は、物理的距離ともなります。子供は父親と母親のあいだに、どんな心の溝があるのか、具体的にはわかりません。




話をされても、小学校三年生では困惑するばかりでしょうが、それでもやっぱりわからないのは子供心にも不安です。だから必死に両親の距離を近づけさせようと、少し照れながらも母親に「命令」したのです。




そして、母親が父親と向き合うことから逃げて、息子である自分に夫への不満の埋め合わせとしてなんらかの期待を寄せていることに、A君は気づき始めていました。だから、自分と母親の距離を少し広げて、両親の溝を埋めようとしていたのです。




母親はA君の言葉をかみしめながら、「そういえば・・・・」と、今は中学一年生になる長女が、幼稚園のころに母親につぶやいた言葉を思い出しました。おかあさん、もうペン(たたく)しなくてもいいよ。わたし、ことばで言えば、わかるから。




長女もまた、母親のいらだちを幼稚園児にして見抜いていたのです。そんな母親の行き詰まった気持ちを察して「ペンしなくてもいいよ」と優しく、母親の非を自分が背負ってそう言ったにもかかわらず、母親はこう反論してしまったというのです。




「言葉で言ってもわからないから、手があがってしまうんでしょ」「自分が悪い」と間接的に母親をかばった長女の健気さに、母親は残念ながら気づくことができなかったのです。




親として、常に子供をリードし、守り、導いていかなくてはならないと責任感を持って臨んでいる母親にしてみれば、子供から自分の心の揺らぎを見透かされ、いたわられることは、子供から親としての未熟さを指摘された、と思ったのでしょうか。




ときに、母親が高飛車に子供にあたってしまうのはそうしたあせりの現われともいえます。子供は知恵ではなく、心で親と接しています。心の中で親のプライドを傷つけてはいけないと思っています。




それがときに唐突な甘えとなったり、ふざけとなって現れるのです。「お父さん、お母さん、いまのままでいいよ。がんばらなくても、今のお父さん、お母さんが大好きだよ」という子供からのメッセージが、前の2つのつぶやきだったのです。




子供は頭ではなく、心でささやきます。だから、親も心で接することが大切なのです。おかあさん!呼んでみただけだよ。おかあさん、そんなにびっくりしないでよ。




おとうさん!父親だろう。たまには子どもと遊ぶ時間をつくりなよ。「そういえば、Aも長女もわたしにいろいろとつぶやいていたんですね」母親は。ようやく気づき始めていました。




そして、過去のA君たちのつぶやきを思い出したのです。「『用事がなかったら呼ばないでよ。小学生のくせに、生意気なことを言うわね』なんて、Aの気持ちとずいぶんすれ違った返事をしていたんですね、わたし」




母親は、A君のチックの意味がようやく理解できたようでした。ためこんでいた気持ちをチックでしか吐き出せなかったのです。



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