家族の風景~一家団欒~
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家族の風景~一家団欒~

2020年05月20日(水)9:22 午前

独特の緊張を持った関係のひとつに嫁・姑の関係があります。A君は小学六年生です。身体的にどこも悪いところはないのに、気持ちが悪いと訴えて登校しないことが最近増えています。




五年生頃からそんな状態でしたが、六年生になってから欠席がいっそう多くなりました。とくに問題なく生まれて育てられてきたのですが、何かにつけ少し成長が遅い印象であったとのことでした。




面接でもA君は小さな声で曖昧にしか話しません。家族は五人です。脱サラして昔からの夢を実現した、子どもに優しい父親、高校卒業後、就職で地方から出てきて三年目、二十一歳の若さで上司であった夫と結婚した母親です。




家事はすべて姑に習ったといいます。そして夫を早く亡くした後、女手一つで四人の子どもを育て上げた祖母がいます。姉は、クラブ活動に熱中している中学二年生です。A君のことについて父親は、無理はしないほうがよいと考えています。




母親は不登校に関する本をたくさん読んで勉強をしています。加えて、祖母の何にでも挑戦する生き様を見て自分も力づけられたと、卓球、生け花などにも精を出しています。




A君もわたしを真似てくれたらと思っているといいます。「今、ご家族にとっての問題は何ですか?」と確認しますと父親が、「おばあちゃんが、何かにつけて口うるさく干渉するので、子どもたちが家の中で乱暴になります」と説明します。




母親も同意し、「Aのことをあちこちへ言いふらしたりして困ります」ということです。具体的に聞いてみるとそれほどのことではなく、整理整頓、後片付けの指示などは、祖母の言うことも常識の範囲内に思えます。




「A君の学校のことでいらしたのかと思っていましたが・・・・」そう返すと、「それはわかっていただけると思っていました」と父親が弁明しました。祖母が問題だとのことですので、今日の初回面接におばあちゃんが来所していないことについて聞きました。




すると母親は、「子どもへの干渉がとても多くて、本当に日々悩んでいます。今日もどんなお話になるのか分かりませんし、子どももいっしょですので・・・・」と言い、父親は、「おばあちゃんには『わたしも仕事が忙しいし、姉も学校があるから、母親とAの二人で相談に行くのだ』と嘘をついて、外で待ち合わせて四人で来たのです」と言います。




面接中も四人は和やかそのものなのに、祖母の話題が出たとたんに緊張が漂います。祖母がいると気が張るので、いないところでは出来るだけ楽しく和やかにと心がけていると父親が言いました。




日ごろ、父親は帰宅すると家庭の中をできるだけ朗らかにと思い、仕事のことやその日の出来事をとてもよく話すそうです。つまりA君の心配はあっても、穏やかに朗らかに暮らそうと努力しているのでした。




そして余計な波風は立てないように、祖母との間には一線を画して、情報を流さないことでこれまでやってきたのです。一つ屋根の下で暮らす祖母に対する過敏さが度を越しているように思いました。




次回はぜひおばあちゃんもいっしょに来て欲しいと伝えて面接を終了しようとしました。すると父親が、「今日、四人でうかがったことは、おばあちゃんにはご内密にお願いします」と言って立ち上がりました。




次回、祖母を同行する代わりに、今日のことは伏せておいてほしい、つまり次回の面接をまるで初対面のようにやってくれと言いおいて帰ったのです。良い悪いは別にして、これは父親の力です。わたしがこの一言にとらわれると、これから先ずっと窮屈な思いをすることになります。




裏で密約を結んだ家族と面接することになるのです。祖母の同行した二回目の面接の最初に姉に向かってわたしはこう切り出しました。「毎日多くの方と面接をしていますと、記憶が曖昧になってしまいます。皆さんと以前お目にかかったのはいつでしたかね?」




気まずい沈黙がしばらく続きました。姉は困って父親の方をチラチラ見ています。やがて父親が覚悟を決めたように、前回の面接のことを話しました。祖母はそれを受けて、「そんなことだろうと思ってました」と言いました。




面接の後半でわたしは、「これまでのようなやり方もあるけれども、いっしょに暮らしておられるのだから、情報はしっかり伝えたうえで、わたしたちがやるからおばあちゃんは見ていてくれとおっしゃる方が、よりよい方法だと思います。




今日までの経過について、おばあちゃんにここで報告してみませんか?」と提案しました。しばらく無言の時間が静かに流れました。そして決心の末、父親が丁寧に経過を話しました。




その後わたしが、現在両親ががんばっていることは、口では簡単に言えても実行は難しいことで、それを二人でとてもよくやっておられるのだと祖母に強調しました。




これまで採用してきた対策の変更を促したのです。父親はなかなか賢い人でした。自ら変化を起こしたのです。家族の誰もがすぐに気づいた大きな変化でした。父親が食卓で話さなくなったのです。




しばらくの間は、家族全員が父親に、「どうかしたのか?」「以前のように話して欲しい」「黙っていると、気詰まりで食事が美味しくない」と口々に訴えたと言います。しかし父親は譲りませんでした。




みんながあきらめてそんな食事時間を受け入れるようになると、食卓は変化してきました。みんなが少しずつ気遣って、自分から話すようになったのです。姉がクラブ活動の話をし、母親が買い物先での出来事を話し、A君がゲームの話をします。




祖母も話に加わっています。父親だけが一見不機嫌そうに黙って聞き続けていました。これまで父親は、みんなを気遣って和やかさを作り続けてきました。しかし結果的にはその配慮が、祖母と家族の関係が深まるのを妨げていたのでしょう。各々を信頼して直接のやりとりになる場にしたとき、変化は起こったのです。



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