いじめが原因で不登校へ~中学三年生男子生徒のケース~
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いじめが原因で不登校へ~中学三年生男子生徒のケース~

2020年05月15日(金)3:00 AM

一年以上もいじめられ続けて不登校状態になった中学三年生のA君、両親はいじめられている事実にまったく気がつかなかったと言います。




このような感受性の親にA君は期待しておらず、ずっと我慢していました。毎朝トレーニングウェアでジョギングに出かけて、泥だらけになって帰ってきたのは、近くの川原でプロレスと称して殴られたり、蹴られたりしていたからでした。




理由不明の欠席が続いたことがきっかけで、いじめが発覚しました。これはたいへんなことだと学校関係者が積極的に動きました。両親とも話し合いが重ねられた結果、学校主導で加害者、被害者双方が傷つかないような収集案が動き始めました。




ちょうどみんな受験を控えていたので、加害者の少年たちの進路も考えてのことでした。A君が勉強に集中できなかったのも無理はないと、推薦で入学できる高校を保証する話まで両親に提案されたのです。




ところがそこでA君が激怒しました。そんな話に丸め込まれてしまう両親を怒鳴りつけたのです。「賢い奴らに、いつでもペコペコしやがって、バカヤロー!」そう言うと、自室に閉じこもってしまいました。それからは来客にはいっさい会おうとせず、母親に脅迫的な言葉を吐き続けました。




恨みつらみの洪水と、家庭内暴力の中で時が過ぎていきました。自分自身への否定的イメージからか、何度も、「もし弟か俺かどちらか一人しか助けられないようなことがあったら、どっちを助けるんだ!」としつこく追求します。




A君を助けるといってもらいたいのに、母親がそう言っても、「嘘つき!本心は弟を助けたいんだろう!」と叫ぶのでした。しばらくしてからのことです。A君が心理テストを受けるために両親と相談所に顔を見せました。




その一週間後、検査結果を聞きに来たのですが、意地っ張りそのものの態度でわたしとぶつかって、怒って帰ってしまいました。そしてその後の家族面接には、一度も出席しませんでした。両親と弟はその後数回面接に来所し、A君の様子をいろいろ話してくれました。




その中で両親は、A君の力になってやれることの少ない、頼りない親であったことを痛感しているようでした。今からでも彼のためにしてやれることをしたいと考えて、母親は、いじめられていた時の悔しさを吐き出す相手になることを決意しました。




逃げなくなった母親にA君は、一年以上にわたるいじめの実態と、復讐のために用意したナイフやロープなどの話を、飽きることなく繰り返したそうです。一方父親は、A君の今後のことを考え始めました。もうあとわずかで卒業です。




担任は足しげく訪問してくれていましたが、A君は拒絶したままでした。そこで父親と相談のうえ、中学校には頼らずに彼の進路を考えることにしました。




父親はあちこちの専門学校を回って入学案内を集めて、父親なりに考えたA君の進路の話を毎晩語り続けました。パンフレットに書かれた高額な学費を気にするA君に、「これくらいのことは、お父さんが何とかするから心配するな」と言い切りました。




そんな中、自室にこもっている兄のところへ弟が友人からゲームソフトを借りてきてやったのがきっかけで、A君が少し前向きに動けるようになりました。




世間は私立高校の入試、発表、そして公立高校の入試と慌しい時期でした。でもA君の家では別の時間が流れていました。その中で親子は、ゆっくりお互いの信頼を回復していきました。ビアスの『悪魔の辞典』のなかの「フレンドシップ」の項には、天気の良い時だけ二人乗れる小舟と書いてあるのだそうです。




天気が悪くなると自分ひとりで乗りたくなるということでしょう。なかなか鋭い意地悪な指摘です。そう考えると、家族面接に来続けた弟と両親は、遭難しかけた兄のところへ荒天をものともせず出港した、家族全員が乗れる船の乗組員だったのでしょう。




「いざとなったら俺のことなんか助けてくれない!俺だけ降ろすつもりなんだろう!」と自己否定的なイメージに苛まれながら問いかけるA君を、一家が支えたのだと思いました。




いじめがない社会や学校を夢想する楽天主義には同意できません。そんなものを到達目標のように語る人に限って、なんら具体的なことには手をつけず、言葉だけで済ませてしまおうとする気配を感じるからです。




でも、いじめをなくそうと声をあげ、その努力をすることに意味がないと思っているわけではありません。時代のエピソードはいつも、何かの必然的な動機を持って姿を現しているものです。




そういう意味で、「いじめる、いじめられる」の問題がわたしたちに見せているのも、単純な一過性の子供社会の現象などではないと思います。いじめの経過を聞かされるといつも、わたしの心の中で反応するところがあります。




それは、いじめられている当人が、自分が被害者であるにもかかわらずそれを恥ずかしいと思い、他の人、特に親に知られまいとしている点です。




心の奥底では助けてと叫んでいるにもかかわらずです。世の中には理不尽なことがたくさんあります。このように被害者であるのに、それを恥じる心の動きを学ばせる、マスコミをはじめとした世論もそのひとつでしょう。




自分にも落ち度があったのだとか、いくじなし、弱虫と言われるような気がするのでしょう。それゆえに彼らは内にこもったり、意地になったりしていってしまいます。




何があっても学校は休まないぞとか、誰の世話にもならないというわけです。でもこの決意は彼らをどんどん孤独にさせていきます。助けて欲しいと思いながら、なんでもない風を装うことで、負けない、負けない・・・・・と孤立の道を進んでいくのです。




助けて欲しい!と叫ぶことがこんなに難しいことだとは、傍観者は理解できません。後になって人々は、一言いってくれればよかったのに・・・・・などと無責任に語ります。




あまりに平安を願いすぎる世間の心情が、思いがけない目にあっている人が助けを求めて告白する勇気を鈍らせているのではないかと思います。




現実にはさまざまなことが起きています。それにもかかわらず他人に助けを求めづらくしてしまった人間関係の中で、心細くひたすら何事もないように祈りながらみんなが暮らしています。




それをいじめ現象があぶりだしているのだと考えると、これは現在のわたしたちが共通に抱える問題だといえるのではないでしょうか。



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