ひきこもり~人間不信の青年との面談~
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ひきこもり~人間不信の青年との面談~

2020年05月13日(水)7:41 AM

ある日のことです。その日は、十数か所もの各相談所を渡り続けたあげくに、関東自立就労支援センターの相談室にたどり着いたという青年の来談日でした。




事前に母親からは、青年の人となりは聞いていました。心に深い傷を受け、いまだに癒されずにいるのだと言います。だから、わたしとしてもそうした傷口にはなるべく触れないようにと気を使いつつ、柔らかい言い回しを心掛けました。




ところが、青年はそうしたわたしの心情を無視するかのように、わたしを「挑発」してきたのです。憎しみを掻き立てるような言い回しを随所にちりばめ、わたしは内心「そこまで不信をもたれては、カウンセリングは続けられない。




こちらから頼んだわけでもないのに、そんな言い方はないだろう」と、腹を立ててしまいました。でも口には出せません。でも、どこかに強ばる表情や態度が出たのでしょう。わたしが怒る気持ちを抑え、無理して笑い顔をつくると、彼は顔を緊張させ、怯えた口調でこう言いました。




俺、優しくされると怖いんだよ。冷たくされたほうが楽なんだよ。これ以上、俺を惑わさないでくれよ。こんな俺、本当はアンタ嫌いだろう。はっきり、いいなよ。親も教師もカウンセラーも子どもを心配する顔が上手いよな。




瞬間わたしはやられた、と思いました。完全にこちらの心を見透かされていたのです。でも彼は、このつぶやきを通して、わたしに何かを訴えたいのです。




言葉だけをとらえれば、まさに彼の言うとおりだし、彼がわたしのことをそのように見ていることに、あえて反論はできません。わたしに悪態をついても、彼にとって何もいい事はないのです。それでもわたしに挑発的な態度で迫ってくるのは、きっと何かを訴えたいからなのだと思いました。




彼の言った「怖い」「惑わさないでくれ」の言葉に、わたしは切ないものを感じました。きっと、ここに彼の本心が隠されているのかもしれない、そんなふうに感じたのです。




彼は怖がっているんだ、そしてもう惑わされたくないのだ・・・・・そう思うと、彼の気持ちに寄り添うことができるような気がしたのです。




信じて裏切られた怖さに、もう耐えがたく、だからこそ最初から心理的な距離をとろうとして攻撃的な態度を装っていたのだと思います。




でも、彼はまだ人間関係を捨ててはいませんでした。悪態をつくのは、その願いがかなうならば関わりたいというエネルギーの発散でもあるからです。




しかしその一方で白けた雰囲気も醸し出していました。「人間なんて、しょせん打算だ。勝手な動物だ」彼はそう言います。だから関わることすら意味のないことにも思えてくるのです。この矛盾する二つの気持ちが、彼の心の中で交錯し、揺れ動いています。




人を信じたいけれども、裏切られることが怖い・・・・・過去にそういう苦い過去があるから・・・・。人は信じるに値しない・・・・・だから冷め切った人間関係を選択し、相手を信じない生き方をするのも、やはりつらすぎる・・・・。




どちらにどう転んでも、彼にとっては辛いのです。二者択一問題、でも、二者とも選びたくはないのです。そういう彼の心に寄り添うと、彼のつらさが肌を通して沁みてきます。




「そうだよね。見透かされちゃったな。でも、こんなカウンセラーにでもいろいろ話してくれてうれしいよ」そんなふうにこちらの弱音を吐き出すことができれば、彼は少し表情を崩すことができるのです。



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