長期の不登校
ホーム > 長期の不登校

長期の不登校

2020年05月12日(火)8:11 AM

「他人の痛いのは、いくらでも辛抱できますよ!」「当事者にしかわからないことがあるんです!」こんな台詞が聞こえる場面に居合わせたことが、誰にも経験があるかもしれません。




いきさつはいろいろでしょうが、要するに、本人のたいへんさを簡単にわかったように言わないでくれと憤慨しているのです。もっともなことです。当事者と第三者が同じ体験をしているわけがないのですから。




ところがこんな発言と背中合わせに、人は他人に分かってもらいたいと思っています。受け止めてもらいたがっているのです。それでもできるだけ自分の説明するとおりに、他人に理解して欲しいと思っています。




問題を抱えた人は、少しでも早く解決したいと思いながら、一方でまず気持ちを受けとめてもらいたいとも思っています。しかしこの二つが両立しないことも多いのです。ここにジレンマがあります。カウンセラーという名の他人はそんな交差点で、交通整理をしているのか、それともゴチャゴチャにかき混ぜているだけなのか・・・・。




相談面接が長期化しているのには二つの場合があると思います。ひとつは問題解決のために必要な長い道のりが確かにたどられている場合で、もう一つは、あまり成果もないのに何となく長引いてしまっている場合です。




これはさらに二つに分かれます。一つは役に立たないどころか、事態がどんどん悪くなっていっている場合です。こんな時にはためらっていないで、さっさと他をあたった方が良いと思います。




そしてもうひとつは、良くなってはいないけれども悪くもなっていない、結果的に現状維持になっているものです。相談における現状維持とは何なのでしょう。なんとかしたいと願って努力を続けているはずなのに、さっぱり変化がありません。




身体の病気ならば、他の医療機関をあたるのが普通です。ところがそうは言い切れないのが面接のおかしなところです。そこでは来談者も暗黙のうちにそれを求めていて、気づかないところで合意が成立していたりすることもあるのです。




長期にわたって不登校を続けている中学二年生のA子さんは、両親との三人暮らしです。父親は働き蜂といわれ、母親は一人娘にべったりと言われる、よく見られるパターンです。




最初にA子さんの母親と面接をしたのはSという相談員でした。本人の外出は難しいという話でしたので、可能になったらいっしょに来談することを目標に、母親との面接を開始しました。




とても几帳面な方で、約束の時間には遅れずに必ずやって来ました。面接時間がついつい延長してしまうほど、母親はS相談員を頼って何でも話していたようです。




そのうちA子さんも、ときどき顔を見せるようになりました。一年足らずの時が過ぎて新学期を迎える頃、担当のS相談員が家庭の事情で関東自立就労支援センターを退職することになりました。




再出発するにはいいタイミングだと考えたわたしは、再登校への具体的な取り組みの話をしました。そして同時に担当者が変わることも伝えました。とはいっても、一年ほどの間に母親とS相談員の間に作られた信頼関係を引き継ぐことはできません。




A子さんとの関係も変化せざるを得ないと思いました。母親とS相談員で作られて維持されてきた関係を、わたしが引き継ぐことになったのです。




引き継ぎの面接中に気がついたのは、これまで形成されてきたものは信頼関係という名の現状維持ではなかったかということでした。




A子さんの不登校を主訴に母親は几帳面に相談室に通ってきていましたが、状態に変化はありませんでした。なのに、その点についての不満や不安の訴えはいっさいありませんでした。




しかし今度は状況が否応なく変化します。関係も変化せざるを得ません。そこで思い切って、「担当者も替わることですし、これからの面接はお父さんも含めた家族全員で行ってはどうでしょうか?」と提案しました。これは前任者の空席に後任者がすっぽりはまって引き継いでも、問題解決にはならないと思うと表明したことになりました。




不登校状態のままであることを気にかけていた前任者もいいアイデアだと言い、母親も、「それで学校に行けるようになるでしょうか・・・・・?」とつぶやきました。




再スタートの初回、家族全員が来る予定になっていましたが、実際は誰も来ませんでした。そして母親からは、A 子さんの気持ちを考えてしばらく様子を見たいと断りの電話がありました。




父親にこの日の面接のことが伝わっていたのかどうかの確認もとれないままでした。そしてその後、面接再会の話にならないまま中断してしまいました。振り返ってみると気づくことがいくつかあります。




まず第一は、新しく設定した全家族面接は、母親の希望ではありませんでした。経過から考えて、A子さんや父親の欠席は予想できることでしたが、母親も来なかったのは、求めていたものと違っていたのでしょう。




第二は担当者についての注文です。前任者は母親の期待に添う人だったのでしょう。たとえ一年以上かかって再登校の兆しさえ見えてこなくても不満はなかったのです。




後任のわたしはまだ何も始まらないうちに拒絶されてしまいました。理由のいかんを問わず、結果からみて後任のわたしが未熟であったことは大いに反省すべきことでした。




そして人が口に出して求めることと、心の中で求めていることのギャップを思いました。人への働きかけは、まず本当に相手の求めることをしっかりつかむところから始めなくてはなりません。




いずれ変更してゆくとしても、まずはそこからでないと何も始まりません。感情を受けとめることを抜きに、理を伝えるのは無理というものでした。逆に感情さえしっかりつかんでおけば、理が通っていなくても人は許すところがあるとも思いました。



メニュー

過去の記事

団体概要
団体名
関東自立就労支援センター
理事長:
大橋秀太
理事:
大畑健太
理事:
杉下真理
住所
東京都東久留米市浅間町1-12-9
TEL
042-424-7855
メール
ki6jt7@bma.biglobe.ne.jp
活動内容
・若年者の就労支援、
 学習 支援、生活訓練
・共同生活寮の運営
・教育相談の実施
・各種資格取得支援