学歴主義の親とひきこもり
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学歴主義の親とひきこもり

2020年05月03日(日)12:50 AM

子どもから大人への過渡期ともいえる思春期は心と体が激しく揺れ、その不安定さに孤独感が増幅していきます。まして受験を迎える時期ともなると、ストレスが症状を生むことさえあります。それほど彼らの心は強迫的になっていくのです。




「僕にとって、大学入試の合格は人間の照明なんです」Aさん(25歳)とともに心もとなく過ごした底冷えのするあの朝のことを、わたしはいまでも忘れることができません。




全身凍てつくような2月下旬の早朝5時、Aさんはわたしの不安を打ち消すように約束した駅の改札口で待っていました。4回目の大学入試にのぞむAさんは、付き添うわたしに言いました。「父親に人間の証明をしてもらえる最後のチャンスかもしれません。




そう思ったら、仮病をつかって寝すごすことなんてできませんでした」冬の寒さのためか、それとも緊張感からか、Aさんの全身は激しい震えに襲われていました。




わたしは「寒いな」とつぶやくと、Aさんの背に片手をまわして引き寄せました。進学校にいたAさんは、現役で2つの私大に合格していましたが、入学手続きはできませんでした。




「東京六大学以外、大学にあらず」という父親の口癖が脳裏から離れず、意に反して浪人生活を選ぶほかなかったのです。「長い人生のうち、浪人生活も無駄ではない。おまえがほんとうに希望する大学に行くことが大切だ。早まるな。おまえなら必ず六大学に合格できる」そんな父親の「激励」に応えて、予備校での寮生活に入りました。




公職にある父親を母、姉妹、そして自分も尊敬していたので、「お父さんの言うとおりにしていればなんとかなる」と思っていました。ところが、「高校までのホットな友人関係に比べ、寮生は友情を制限しなければ合格できないという、まさに耐学でした」と言います。




Aさんは10月から授業を休んで個室に閉じこもるようになりました。当然ながら学力は後退していきました。入試はすべて不合格でした。翌年からは宅浪しましたが、試験当日になると仮病をつかって父親の期待を裏切り、ことを先送りしてきたのでした。




そして迎えたこの年、春には父親が定年を迎えることになっていました。「父親に価値ある人間として認められ、操り人形の糸を切りたい」そんなけりをつけたい願いが、この日の決意となったのでした。




合格電報が届きました。Aさんはその電報を切り裂いて、父親宛てに送りました。もう、ひきこもることにこだわるものはなくなっていました。



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