人とのコミュニケーションが苦手な男性のケース(不登校・家庭内暴力)
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人とのコミュニケーションが苦手な男性のケース(不登校・家庭内暴力)

2020年04月30日(木)6:32 PM

1年間にわたる母親との面接を経て、やっとAさん(19歳)自身が関東自立就労支援センターの相談室を訪れてくれました。




彼は、幼いころからやんちゃな子どもでした。感じたままを遠慮なくストレートに表現するので、まわりは感心したり、あわてたり、とまどったりもしました。しかし、それを彼の天真爛漫さと受け取っていました。




地元で大型書店を営む二代目社長の父親も、その上に会長として君臨する祖父も、また祖母も、彼の屈託のない行動力に、「三代目」を話題にするありさまでした。




ただ、母親だけは、わが子の感受性の強さに、少しばかり手を焼いていました。小学校4年生のとき、Aさんは自分がクラスでいじめにあっていることをはじめて母親に告白しました。




「僕が先生から当てられて話しているのに、友達は静かに聞いてくれない。先生もそのことをちっとも注意してくれないんだ。僕が意見があって手をあげても、みんな、最後まで静かに聞けといって、言わせないようにするし、先生も、まるで僕が悪いみたいな顔をしているんだ」




しかし、母親はその訴えにまともに付き合おうとはしませんでした。むしろ、「他人の神経を逆なでする子」という見方を強めていきました。




仕事がら、Aさんと接する機会が少ない父親や祖父も、かわいがる一方で、大人の話にすぐ口を出すAさんに手を焼くようになり、彼が近づいてくると、ことなきをえようと、早めに「言いくるめる」態度をとるようになっていました。




クラスメートたちも、Aさんが話し始めると、すぐに沈黙の態度をとりました。Aさんが落ち着きをなくし、苛立ちを強めるようになったのは、6年生の冬休み明けでした。




「あんな奴らと同じ中学に行くのは嫌だ」両親に相談しましたが、父親から軽く一蹴されてしまいました。「私立は遠いし、いまからではもう遅い、がまんしろ」




中学に入ってからAさんは店でアルバイトをするようになりましたが、あるとき、いきりたつようにこんなことを言い出しました。「この家には、子どもの意見を親が聞かないという血が流れている」経営方針をめぐる父と祖父の確執を鋭く見抜いた発言でした。




そして、中学の3年間を通じて家庭内暴力を繰り返し、「他人のことを思いやるほど余裕はない」と言っては、小学生のころのいじめの件をもちだし、母親に「俺の人生を返せ」と迫りました。




母親は相談施設を探して各地を歩き回り、「あなたのことをわかってくれる人がいる」と言って、Aさんを説得し、連れて行きました。ですが、どこも1日か2日滞在するだけで、長続きはしませんでした。そして、それらの施設に着いても、「ここには人の意見を聞かない血が流れている」と指摘して譲りませんでした。




しかし、立ち去るときには、彼はいつもこうつぶやいていたといいます。「また本気になって、嫌がらせをしてしまった」彼にとっての信頼のメッセージは、「差しで話す」ことでした。ですが、それは相手にとっては信頼の押し売りでした。




Aさんには信頼関係を築きあう時間がまどろっこしかったようですが、縁を実りあるものにするためには、それなりの時間がかかるものです。互いの気持ちを推し量ることの積み重ねが、信頼感となります。それを欠いてはけっして成就しません。




初対面の日、わたしはあまりに無愛想なAさんに困り果て、反応を求めて思わず刺激的な言葉を投げかけました。「あまり気乗りしていないようだね」「そう人の心に踏み込むような言い方はしないでくれよ」




「あっ、ごめん」謝ったあと、催促されないかぎり、言い訳はしない、それはわたしなりの面接の鉄則です。間をとっていると、やはり緊張感が漂ってきます。「よく来てくれたね」




「そういうことを言わないでくれ。来たくはなかったと言わなければならなくなるだろう。そんなことを言ったら、またあんたからも俺は「嫌な奴」と思われ、俺は傷つくんだよ。カウンセラーならそれくらいわかるだろう」




「なるほど、そうか」そう言いながらも、内心、「傷つくのはこっちも同じだ」と焦りました。「どうせまた、こんな俺に困り果てて、やっかい払いだろう。ここだって同じだろう」




Aさんの傷ついた心を受け止めようとしますが、たまった膿を出し切ろうとする彼の執念の前には、わたしは無力でした。「せっかく来たんだ。まずはこれからだね」




「呼んだのはあんただよ。どうする気だ」「どうするって、来たのは君じゃないか」わたしは彼の言葉だけを聞いて、その気持ちを聞くことができなくなっていました。




「じゃあ、俺、帰るわ」机を蹴り上げ、運動靴をはきかけたまま階段を駆け下りていきました。彼の態度に応える気力の尽きている自分が惨めでした。信じることなく、縁を生かすことはできません。彼もわたしも、「声をかけられているうちが花」だったはずなのですが・・・・。




相手の気持ちを汲み取り、こちらの思いをつぶやいていく、こんな循環的コミュニケーションを子育ての中に取り戻していかないと、間のとれない子どもたちは増えるばかりです。



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団体概要
団体名
関東自立就労支援センター
理事長:
大橋秀太
理事:
大畑健太
理事:
杉下真理
住所
東京都東久留米市浅間町1-12-9
TEL
042-424-7855
メール
ki6jt7@bma.biglobe.ne.jp
活動内容
・若年者の就労支援、
 学習 支援、生活訓練
・共同生活寮の運営
・教育相談の実施
・各種資格取得支援