不登校の子供の対人回避傾向
家庭訪問をしようとしたり、面接を勧めたり、友達と遊ばせようとしても、多くの不登校の子供は嫌がって拒否したり回避したりします。
それはこれまでも書いてきた「保安操作(自己安全確保のための操作)」に裏づけられた行動であって、子供の意志が弱いとか、意欲がないとか、生活を改善する気持ちがないということとは別なのです。
どんな子供でも、自分の心の活動領域や安全領域を持っています。その心の安全領域内の出来事ならば「保安操作」をしなくても済みます。
しかし、自分の安全感を保つ心の領域を侵犯してくる人や事象に対しては、心身を守るための「保安操作」をしなければ、自分自身の安全性を保つことができません。
もちろん満足感も獲得できなくなります。その領域は、育てられた環境や日常生活での経験や、獲得できている感情の範囲などと関係しています。
学校の教師が、家庭訪問をしたり、同年齢の友達が訪ねてきたりしても、不登校の子供は「会いたくない」と拒否することがよくあります。
家庭訪問が可能なのは、子供が生活してきて、育てられてきた環境について理解できている人に限られるのです。「家の中で、一人でテレビや漫画ばかり読んだりゲームばかりしている」のは、子供が、かつての対人関係の中で嫌な体験やつらい体験や恐怖を感じるほどの体験をしていた証拠なのです。怠けではありません。
その証拠に、そのような一見楽なことをしていても、子供たちの疲労感は増すばかりです。怠けの子供は楽なことをして、反社会的な行動のためのエネルギーを蓄えます。
同じ「保安操作」であっても、非社会性の方向へ向く生き方と、反社会性の方向へ向く生き方の差異は、子供がそれまでの対人関係の体験で獲得し蓄積してきた価値観や学習能力や情緒の安定性などに影響されて方向づけされるのです。
言い換えれば、かかわってきた人との関係に影響されるということです。
「保安操作」は自己防衛手段である
したがって、子供とのかかわりを継続していこうと思う大人は、この対人関係性に注目しなければなりません。子供が保安操作を多用することも理解しなければなりません。
大人たち(ときには同年代の子供たち)が行った、その子供の心への侵犯には注目せずに、侵犯によって子供が引き起こしている「保安操作」のための行為にばかり注目し、その行為を直そうとするとかえって子供の心の傷を深めてしまいます。
例えば、私が家庭訪問をして、初対面の子供に会う場合、「臨床心理士の○○」だと子供は大変に警戒しますが、「獣医師の○○」だと比較的会うことができます。
それは、獣医師なら自分(子供)の心の安全領域にまでは侵入してこないだろうという予測が立てやすいからです。むしろ、自分が大切にしている犬や猫の話ができるので、心に侵入されなくても済むという思いで話がはずみます。
これらのことから、子供とのかかわりを考えてみましょう。現在の子どもの状態が「保安操作」による現象であれば、その現象を直そうとはせずに、そのような保安操作をしなければならなかった背景にある人間関係に注目してください。
不登校の子供に「保安操作をするな」と指示することは、「裸で道路を歩け」と言うことに等しいのです。子供はその背景となる出来事や事象を排除しようとしたり、忘れようとしたり、遠ざかろうとしたりしています。
だから、これから子供とのかかわりを継続していこうとする人は、保安操作の背景となる有害刺激や侵入的な外部の要因を取り除く作業が最初に必要です。
そのような作業は、子供と共同で行うことができます。その時に注意したいことは、子供の表現を引き出すことです。
子供の言い分をすべて無条件で黙って受け入れて、作業を黙々と片付けてしまったのでは、せっかくの援助も効果は半減してしまいます。
本人の意思なり気持ちを、二人の対話を通して明確にしていくことが大切です。多くの不登校の子供は、自分の表現が正当であるかどうかが心配で、本当に主張してもいいかどうかがわからずに不安になっています。
このようなときには、援助者は子供が何を言ってもフォローが可能であることを保証してやる必要があります。失敗は成功のもとであることは、ぜひとも教えておきたいことです。
そのような保証をすることで、子供の内に固定されてこだわりになっていたマイナス感情を動かすことができるようになり、その時その場でのエネルギー変換のパターンが多彩になっていきます。
多くの不登校の子供は、一見、遠慮してモノを言えないように見えますが、実はそれも保安操作で沈黙しているのです。あれを言ったらいけない、これをしたらいけないという狭い社会性(こだわり)からの解放は、援助者が子供のエネルギー変換パターンを多彩にしやすくなるように協力することで解決します。
このようなことなら、子供に寄り添いながら実行できるはずです。子供が引き起こしている保安操作には、直そうとして直接手を加えない方がいいのです。
多くの人たちは、保安操作により引き起こされる現象にばかり気を取られて、その行為行動を直そうという態度で子供の人間性への侵入的なかかわりをしています。
子供が望むことは心の領域を「侵犯する」指導ではありません。そのような態度を取らなければ(保安操作をしなければ)ならなかった状況の理解と、子供の心の安全の保証(有害刺激の除去)なのです。
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