不登校~ある家族のケース~
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不登校~ある家族のケース~

2020年04月27日(月)6:53 AM

「わたしは再婚です。だから少し躊躇はしたんですが・・・・。男の子を連れた40過ぎの男と結婚してくれる女性なんていないと思ったんです。まして妻は初婚です。妻の感情的なところは、わたしが補っていけばいいと思ったんです。もしかしたら、わたしは妻に遠慮しながらも、もう二度と不幸な家庭をつくってはいけないと躍起になっていたのかもしれません」




Qさんは定年のことを気にしつつ、中学3年になる娘さんの不登校と、浪人生活を続ける息子さん(21歳)のことで関東自立就労支援センターの相談室を訪れていました。




「子どもが、それも2人ともこんなふうになったのは、親であるわたしの行き方に反省を求めているのでしょう。だったら、いままでわたしは何のために生きてきたんでしょうかね。会社のため、家族のため、それともわたし自身のため・・・・・どれもそうとは言い切れないのです。




考えてみれば、そのいずれに心を奪われていることもなく、とにかく一生懸命であったのが、いままでであったといってもいいと思います。ただ、完全主義を目指していただけで、犠牲者のことなんか考えたこともありませんでした。そうだなあとゆっくり見ていくゆとりさえ、計画的、マニュアル的だったんですね。




この性格はいまさら簡単には変えられないと思いますが、気がついた今から、わずかでも努力して、いい方向に持っていきたいと思います。いや、変えなければならないと、わたし自身は決めました」Qさんは唇をかみ締め、自問自答するようにうなずきました。




わたしは思わず、「またいつものくせが・・・・・」と言いそうになって、あわてて口ごもりました。そんなわたしの様子に、Qさん自身が自分の「くせ」に気づいたらしく、改めてわたしを見つめました。




「これがいけなかったんですね。直さないと。わたしには余裕がないんです。定年になって変わっても、それはわたしの努力ではなく、たんにひまになったにすぎないんです。暇だから余裕がある人間になったというのでは情けないですね。わたし、本気ですから、よろしくお願いします」




わたしはQさんの、失敗は許さないという気迫に息が詰まりそうで、こちらのゆとりがなくなっていくのを覚えました。相手に「逃げ場」を与えつつ、こちらの気持ちをくみとってもらうというコミュニケーションが必要なのですが・・・・。




わたしのとまどった表情に気がつき、Qさんはあらたまった様子で言いました。「ああ、ちょっと強迫的でしたね。自分で言うのもなんですが、わたしはいつもまじめすぎて、人間関係もぎくしゃくしてしまうんですよ。




上司と部下の関係ならこれでいいかもしれませんが、家庭までこれじゃあ、息苦しくなってしまいますよね」ひきこもりの子の親の一つの傾向に、まじめさが強迫にまでなっている人が見受けられます。




あいまいさを許さないコミュニケーションは、会話の芽を摘みやすいです。そして、無口になっていることを、「つまらない話をしてもしかたがない」とすりかえてきたケースがあります。




Qさんも、そんな父親のひとりでした。「わたしは妻の純真さにひかれたんです。やはり、わたしと同じで何事にも一生懸命なんです。それだけに、妻は間違ったことや約束がふいになったり、妻なりの正しさが思い通りに進まないと、とても苛立ちます。




その性格をわかりつつも、わたしも生身の人間ですから、頭で受け入れようと思っても、いつの間にか体が疲れていたんですね。そのまじめさが妻のわがままに思えたころから、子どもたちの教育は、妻任せになっていったと思います。




結局、わたしは仕事を口実にして妻や家庭のゴタゴタから逃げていたんです。そのわがままな両親の犠牲者が子どもたちだと思います。だから、子どもたちも人間関係の間合いがとれないんです。親と同様にわがままで、甘えていいところ、がまんしなければいけないところのポイントが理解できないんです」




わたしはQさんの「分析」に感嘆しつつも、わかっているだけにつらいだろうなと思わずにはいられませんでした。「娘も受験期に入ったためか、将来のことについていろいろと話してくれるようになりました。




でも、表面的で深まっていかないですね。あれをしたい、これをしたい、クリエイティブな仕事がしたいとか・・・・。でもね、以前に比べたら、ずっと元気になったと思いますよ。成長している部分もあります。




ただ、ちょっとあきっぽくて、自信がないんです。安全でないと動き出そうとしないところもあって。息子もおかしなことを言う子で、大学受験のとき、わたしにA(息子の名)は〇〇大学に合格するという誓約書を書けと命令するんです。




お守りのつもりかなと思って書いたんですが、今でも何かあるとそれを持ち出してきて、お父さんは合格すると約束したのに、僕は合格できなかったと言いがかりをつけてくるんですよ」




Qさんは困惑した顔つきで語り、一息つくと、遠慮がちに言いました。「先生は聞き上手なので、つい愚痴ってしまいました。こんな我が家の恥、誰にもいえるわけではありませんよね。まして、家族が家族のことをけなすんですから、さびしいですね。結局のところ、わたしは自分の都合だけで一生懸命になっていたんです。




わたしの気に入るように人がやってくれないと、自分が否定されているように思えてしまうんです。もう家族のことで失敗したくないので、一つ一つ確かめたかったんです。でも、こんな親、ほかにいますか」




わたしは、Qさんがいつのまにかきちんと間をとって話していることに気づきました。わたしはただ、うなずいているだけでした。ひきこもる子どもたちが親に求めることに、「納得してくれなくてもいいから、うなずいて聞いてほしかった」というニーズがあります。




わたしたちはいつの間にか、理解しようと努めている姿としてのうなずきを忘れているのかもしれません。



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団体名
関東自立就労支援センター
理事長:
大橋秀太
理事:
大畑健太
理事:
杉下真理
住所
東京都東久留米市浅間町1-12-9
TEL
042-424-7855
メール
ki6jt7@bma.biglobe.ne.jp
活動内容
・若年者の就労支援、
 学習 支援、生活訓練
・共同生活寮の運営
・教育相談の実施
・各種資格取得支援