夫婦関係のしわ寄せで荒れる子ども~家庭内暴力と強迫行為~
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夫婦関係のしわ寄せで荒れる子ども~家庭内暴力と強迫行為~

2020年04月26日(日)3:50 PM





「わたしにとっては最低の夫が、子どもにとっては最高の父親だったということに気がつきませんでした」思春期の娘のことで相談に来ていた母親が、数年前に離婚した夫についてつぶやいた一言です。




行き詰まった夫婦関係のなかでは、とかく子どもの人格がないがしろにされやすいものです。よく「子はかすがい」と言われますが、この言葉にしても、夫婦間の満たされない思いを、子どもをだしにしてごまかしているような雰囲気がうかがわれます。




不幸の犯人探しをするとき、どうしても味方になってくれる人がほしいものです。よそにそんな存在を見つけにくい状況であればあるほど、子どもへのしわ寄せがきつくなりやすいです。




子どもは、そんな両親の気まま身勝手さにふりまわされつつ、心がさいなまれていきます。「分かれた妻のことをとやかく言いたくはありませんが、あいつは身勝手ですよ。わたしだって鬼じゃない。自分の息子のことだから、それは正直心配ですよ。だけど、連絡するにしても、言い方ってもんがあるじゃないですか。




夫の責任はないけど、父親としての責任があるだなんて、まるで恫喝ですよ。突然、黙ってしまったり、泣き出したり、わたしはあいつのヒステリーにほとほと疲れてしまいました。息子も母親に期待されすぎたんでしょう」




投げやりな口調でそう言うAさん(40歳)は、3年前に離婚した先妻に頼まれて、やむなく相談室を訪れたのでした。離婚後、自分が引き取った小学6年生の一人息子の強迫行為と暴力に悩まされた母親のB子さんからわたしが相談を受けたのは、それより1ヶ月ほど前のことでした。




B子さんとの面接のなかで、子どもが父親への愛着を捨てきれないでいるらしいことを察したわたしは、父親との面接を希望しました。子どもの言動がエスカレートすることを恐れた母親は、不本意ながらも、息子の父親であるAさんに連絡して、相談室に来てもらうことになったのです。




離婚した元の夫に連絡をとることは、子どもにとって無力な母親となったB子さんの命乞いでもありました。断られることに不安があった彼女は、依頼のさい、こう付け加えたそうです。「面接料は、もうわたしが支払っておきましたから」




年齢に似合わず、「男やもめ」を自称する地方公務員のAさんは、身なりにはわりと無頓着で、素朴さと切実さが伝わってくるような人でした。時間が経つにつれて多弁になり、B子さんに対する愚痴も、別れた妻に対する未練のようにわたしには思われました。




2人は職場仲間に誘われて参加したサークル活動で知り合いました。数ヵ月後にはB子さんが妊娠し、あわただしく結婚式をあげました。「あいつは両親が離婚していたので、息苦しくなるくらい、絶対に離婚しないで幸せな家庭を築こうと言っていました。




テレビドラマを見ても、新聞の週刊誌の広告を見ても、何かにつけて、メソメソしてそのことを口にしていました。それで、いつもあなた離婚したいと思っているでしょう、と確認を求めてくるのです。




もっとも、4歳で母親が妹を連れて家出をし、父親の手で育てられたんだから、そうとう傷つき、家庭の崩壊を恐れていたんでしょうね、でも、こっちとしては、いつも疑われているような気がして、嫌になってきますよ。




付き合い始めたその日に、遊びならここまでと言われたんですよ。結婚してからも、毎日、今日は何があって、誰とどんな話をしたかを話し合うんです。こっちは平凡なサラリーマンですから、毎日そうそう変わるものじゃないし、聞くほうだって、いいかげん疲れてきますよ。




ときどき寝込んでしまうことがあるんですが、朝起きると、枕元に置き手紙です。(うっとうしいですか。ごめんなさいね)って。もう、これ自体がうっとうしいんです」




へりくだって出端をくじく、B子さんのやり方は、まさにそんな感じです。わたしは思わず相槌を打ちました。「それはダブル・バインド、つまり二重拘束というやつですね」




「そうそう、それですよ。そして、顔を合わせると、表情は暗いのに、不自然に明るい声を出して・・・・。とにかく、あいつの機嫌をとっている、毎日でした。息子が3歳くらいからだと思いますが、自分の気持ちを正直に言っていこうと話し合いましたが、それ以後、ささいなことでけんかが絶えなくなったんです。でも互いに頑固で譲れないのです。子どもだったんですね」




当初、B子さんに強いられて面接に来たAさんは、わたしにある種の警戒心を抱いている様子でした。それ以前にわたしはB子さんから彼に対する不満を聞かされていたし、そのことで子どもの心になんらかの影響を与えているのではないかと疑っていたからです。




わたしは率直に聞いてみました。「少し言いにくい話ですが、奥さんに対する暴力もあったのではありませんか」「あっ、やっぱり、あいつ、言ってましたか。そうなんです。わたしが弱かったんです。ご機嫌とりにも疲れてしまって・・・・・。30歳を過ぎても、夫婦そろって子どもだったんです。




それに見せびらかすように精神安定剤なんか飲まれたら、おまえだけが悲劇の主人公になるなと、つい手も出したくなりますよ。でも、暴力はいけないと思ってできるだけ無視する努力をしたんですが、すると、わたしのことなんか気にもとめてくれないと泣き叫んで挑発するんです。




妻はあの子を連れて実家の父親のところに行ってしまいました。隣町でしたが、別居して半年、妻は父親を通じて、戻りたいけど暴力が怖くて戻れないと何度も言ってきましたが、娘かわいさで怒鳴り散らす義父への意地もあって、わたしは戻ってきてほしいとは言えませんでした。結局、わたしが戻れないなら、俺が出ると言って、お互いに新しい生活をスタートさせたわけです」




AさんがB子さんの胸の内を語るほどに、「あいつ」が「妻」に変わっていきました。わたしはそんなAさんの揺れる感情に、このときばかりと問いかけました。




「分かれてから3年、わりと近くに住んでおられて、お会いすることは?」「不思議とないですね。いや、道を避けて走っているのかもしれません。でも、恥ずかしい話ですが、つきあっているころ、妻がつけていた香水の臭いを感じたり、思い出の歌を聞いたりすると、つらくなります。それにしても、3人とも意地っ張りですよね」




「息子さんはお母さんに、お父さんを家に呼び出して、土下座させろと要求しているのですか」すると、Aさんはかすれた声で言いました。「ああ、わたしは、自分が父親だったことまで忘れるところでした」




家庭内暴力もなく、いわゆる「落ち着いたひきこもり」の子と暮らす親たちがときどきもらす言葉があります。「ひきこもって苦しんでいるはずのわが子のことを何も考えずに1ヶ月も2ヶ月も過ごしてしまうこともあります。それが親としていいのか、と思い、そうなっていく自分が怖いんです」



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