ひきこもり~父親と息子の不器用な関係
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ひきこもり~父親と息子の不器用な関係

2020年04月24日(金)1:14 AM





声をかけ、返事をしてくれるうちが花です。いつまでも相手の誠実さの上にあぐらをかいていたり、自らの傲慢な態度に気づかずにいると、見捨てられてしまうことがあります。




わが子から見捨てられた親ほどつらいものはありません。「お父さんがおはようと声をかけているんだよ。もっと大きな声で挨拶をしろ。なんだ、そのしまりのない声は。それでも男なのか」




それでも挨拶を返してくれているうちが花です。門限だって、守ってくれているうちが花です。怒鳴りちらす前に、「心配していたぞ」の一言があれば、そこまで悪化することはないはずです。




門限に遅れたのは、それなりの理由があるはずで、幼さゆえにその言い尽くすことのできない部分を汲んでやってこそ、親の存在意義があるというものです。




そうした努力する姿に接したとき、相手はふたたびつながろうとして重い腰をあげます。だから、関わりをあきらめてはいけません。小学校教師のAさん(50歳)はいつも慎重な話し方をする人で、口数も少ないです。




関東自立就労支援センターの相談室でもけっして感情的になることはありませんでした。ところが、この日の彼は多弁で、いつになく人なつっこい一面を見せていました。




Aさんは教職員の研修会でわたしのことを知り、中学2年のときの不登校がきっかけでいまだにひきこもる次男(16歳)について、相談に訪れていました。




それは、前回の面接から2ヶ月、夏休みも終わって、1ヶ月になろうとしているころの面接でした。「今日はなんとなく血色がいいですね。何かうれしいことでもありましたか」




わたしの言葉に、Aさんは照れくさそうに答えました。「えっ、そうですか。まあ、いつも浮かぬ顔で来るわけにもいきませんから」「それにしても、今年の夏の暑さは厳しかったですね。わたしも年ですね、すっかり疲れてしまいました」




わたしは水を向けてみました。すると、Aさんはすばやく反応しました。「それなんですよ。わたしはその疲れてしまったという言葉が気軽に言えなかったんです。




それを恥ずべき泣き言だと思っていたんです。それが人には傲慢で無愛想で冷たく、威張りくさっている人間のように見えていたんでしょうね」それからAさんは声のトーンを変えて言いました。「それが、半年振りに息子と話ができたんですよ。うれしかったですね」わたしは思わず身を乗り出しました。「それは嬉しい出来事ですね。息子さんのほうも、うれしかったんじゃないですか」




「さあ、情けないけど、わたしにはまだ息子の気持ちはわかりません」「どんなふうに話ができたんですか」「あの子を誘って、下の子(小学校6年生)と家内の4人でナイター見物に行き、帰りに夕食でもとろうかという話になったんです。




でも、問題は、誰があの子に声をかけるかです。わたしは家内に頼んだんですが、家内は、言い出したのはお父さんだから、あなたから言ってくださいと言います。




でも、わたしはあの子とは半年も口をきいていないんですよ」おまけに、当時、息子さんは自室のドアに「話しかけるな」と書いた紙を貼っていたといいます。




「でも、父親のあなたがやるしかないでしょう」「ええ、いつも不器用な父親を見せることが大切だと言ってましたし、そこで、わたしは勇気を出して、思い切ってドアをノックし、返事がなかったので、入るぞと言って中に入りました」




わたしは内心、「よくやった、えらい!」と叫んでいました。「そして、背中を向けてゲームをしているあの子を、ナイターに誘ったんです」「それで、息子さんは何と・・・・」




「やはり、首を小さく横にふるだけでした。一瞬、わたしはカッとなりましたが、言いつけを思い出し、ひと呼吸おいてから、できるだけおだやかな口調で話しかけました。




おまえは家族がそんなに嫌いなのか。お父さんがそんなに信用できないのかって。すると、あの子がこう言ったんです。信用するもしないも、まだそれほどつきあっていないじゃないか、そう返事をしてくれたんですよ。




半年ぶりにあの子の声を聞けたんですよ。わたしはうれしくて、もっと話したかったんですが、焦ったらいけないんでしょう。だから、ちょっとかっこう悪かったけど、そうだなって言ったんです。いや、ほんとうにそう思ったんです。




長男のときと比べると、あの子は母親にまかせっきりで、わたしは仕事一辺倒でした。いつの間にか、家族にとってはとっつきにくい人間になっていたんでしょうね。




そのことに、自分でも気がつかなかったんです」そして、Aさんは晴れ晴れした表情で言いました。「でも、せっかくそんな父親をもう一度相手にしてやろうと返事をしてくれたんですから、この機会を大切にして、努力しなければいけませんよね」




関心を寄せるその意欲が、ひきこもる子どものコミュニケーション能力を高めていくのでしょう。



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