ひきこもり~関係性の喪失~
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ひきこもり~関係性の喪失~

2020年04月18日(土)3:11 PM




わたしはひきこもりという現象は、その人の社会との関係をめぐる問題であり、その底流に対話する関係の喪失がある、つまり人と人との関係性の原点における問題であると考えています。ひきこもっている本人が、自分自身にしっかりとつながることが、社会との関係性の回復に必要なことであると思います。





ニートと呼ばれる人たちが日本の社会には50万人以上います。これは大人になってもどこにも所属せず、いわゆるきちんと何かをしているのではない若者たちが大勢いるということであり、ひきこもりの人々もこのなかに含まれます。





増加するニートについて「自分(のこと)が理解できていない、対人関係や意思決定、将来を想像する力もない、それは考えさせる働きかけを大人たちがしてこなかったから」という分析があります。





これは教育の視点からの提言です。それもあるのでしょうが、私はここでひきこもりと ニートという現象を、社会の成熟に伴う変化という視点から光を当てて、関係性の育ちをめぐる問題について検討したいと思います。





1.ひきこもりの入口・出口





昨今社会的ひきこもりとして問題になっているのは、社会から実質的に体を撤退した形を長期的にとっている人々のことです。しかし実は私たちのほとんどは、表面的には社会に適応した形を取りながらも、時宜に応じて一時的にひきこもったり、心理的にある部分を撤退させながら、何とか日常をやり繰りしています。





腹の立つこと、頭にくること、誤解されて悔しい思いをすることなどがあっても、酒を飲んだり友人にしゃべったり、1日さぼってパチンコやカラオケをすることなどによって憂さを晴らし、気分を切り替え自分の気持ちと現実との間でバランスをとることで、日常の中に敷かれたレールから大きく逸脱しないですんでいます。





そう考えますと、自分たちがごく日常行っている部分的・一時的な撤退が、安全弁としての機能を越え、のっぴきならない事態に陥ってしまったのが、現代の若者の社会的ひきこもりであるといえるでしょう。ではなぜ社会的ひきこもりにおいてだけ、このような特異的な事態が起こっているのでしょうか。





通常、人は何がしかの意図をもってひきこもりに入ります。大学受験に失敗したり、人との関係で傷つけられたりという具体的なエピソードがあってひきこもる場合もあれば、何となくずるずるとひきこもりに入る場合もあります。





自分がひきこもることに対して自覚的であるか否か、積極的であるか否かはそれぞれですが、いずれの場合も基本的に「自分を守るため」という点では同じでしょう。ひきこもりの初期のころには、自分に起った緊急事態への対処として、本人はとりあえず「自分の時間」をいったん停止させます。





一方、親や周囲はこの事態に驚愕し、躍起になって引っ張り出そうとします。そのような周囲の働きかけでひきこもりをやめる者がいる一方で、叫んだり暴れて拒否したり、身体症状を呈して閉じこもる者もいます。ここで外に出るか否かは、本人たちの抱えている問題の質の違いによるでしょう。





この時点で外に出ることをともかくも拒否した場合、周囲は仕方なく本人を見守る姿勢に入っていきます。これによってとりあえず自分の周囲が落ち着くと、次に彼ら自身が自分の問題を解決していく内的作業が開始される・・・・はずです。





その問題解決のありようは、意欲的・積極的であったり漠然としていたりと多様です。そして、どのような理由でひきこもりに入った若者であっても、やがて社会に復帰してゆく・・・・・・ことになります。





ひきこもりの入り口・出口を簡単に描写するとこのようになります。私はきちんと出口をでることができず、迷路に入り込んでいく社会的ひきこもりの問題点として、以下に示す出口における社会参加の在り方と、そこに至る間に必要な内的作業の二つの点を考えています。





2.「出口」における問題~社会参加をめぐって~





ひきこもりの出口における問題点というのは、何をもって社会参加というか、という定義に関するものです。近年の IT革命は生活様式や雇用形態を 一変化させました。家から一歩も出ないで情報を仕入れたり、買い物をしたり、人とコミュニケートすることが可能になってきています。





これまで私たち大人は、毎日定時に会社に出かけて仕事をし、その報酬として給料を得るという形を「社会に出て働く」ととらえてきましたが、仕事をするという形態も、自宅で自分で会社を興したり、仕事を請け負うなど多様なものに変わりつつあります。





つまりIT革命は、人々の社会参加の在り方を変化させ、在宅のまま社会に参加することが不可能ではない時代を作りつつあります。このように社会参加の選択肢は多様になったのに、ひきこもった子供や親の社会参加のイメージは、依然として「外に出て働いてお金を稼ぐ」というだけの貧しい発想がほとんどです。





この部分だけ人々は時代の変化を受け入れず、「出口はここ 1か所しかない」と思い込んで苦悩しています。ちなみに私が相談を受けているひきこもりの青年たちが、「外に出たい」とか「社会の中で働いてお金を稼ぎたい」という言い方をしたのをほとんど聞いたことがありません。





彼らは総じて「~したい」ではなく、「~しなければならない」という言い方をします。「そうしなければ一人前とは言えないから」というのがその理由です。





この「~しなければ」という言葉の背後にあるのは、自分が社会に出ていけないという負い目や引け目でしょう。働かざるもの食うべからずという伝統的な考え方も、依然として根強くあります。





そのために彼らは自由に思考することができず、社会に自分を合わせ、「社会に身柄を出す」ことが、唯一無二の回復でありそうでなければ自分は人間失格であるとまで思い詰めています。





もちろん、外に出ることができないのは非常に苦しいことです。しかし実際には、ひきこもっている人でまったく外に出ることができないのは、人にもよりますが多くの場合ある一定期間だけであり、強迫性障害などの病気がなければ出ることができます。負い目は負い目として心の中できちんと抱え、自分が出たければ出るし、出たくないから出ないと選択して行動できればよいのです。





3.人とのかかわりのありよう





ひきこもった人はたいていの場合、その質や量は様々でも、人とのかかわりに苦手意識を持っていることが多いです。対人関係のありようは、その人が本来持っている持ち味であり、個性です。





人と一緒にいるのが好きでたまらない人、人と会うことでエネルギーを充足させる人がいる一方、人と一緒にいるとエネルギーを持ち出してしまい、疲れてしまう人がいます。





人に会うと考えただけで緊張し、不安になってしまう人もいます。人に何か言われると、うまくかわすことができずに傷つき心が乱れてしまう人もいます。





相手の気持ちを配慮し過ぎて、自分の気持ちを殺してしまう人もいます。人と競り合うととても苦しく、そんなことになるくらいなら人と会わない方がいいという人もいます。





この「人と一緒にいると疲れ切ってしまう」ような人たちは、いわゆる対人関係に対する感受性が高く、対人過敏性を持っている人たちです。人といると疲れる人は、しばしば「そういう自分がダメ」だととらえ、社会に出るためには、「自分を改造しなければ」と考えてしまいます。





ここでも「なりたい、~したい」ではなく、「~しなければならない」という「べき論」に支配されているのです。ここで問題にがなるのは、自分が自分の癖に振り回されている状態であり、癖自体が悪いわけでも問題なのでもありません。対人ストレスをある程度コントロールする力を身につけることは、工夫すれば可能です。





しかしそれは、人といて平気になるということでも、鈍感になるとか別人格になるということでもありません。生きるということは内的に生き、かつ外的世界をも生きることです。私たちは内省し、自分のことをわかってくると自分が社会とどのようにかかわったらよいかということが見えてきます。





人が人とつながっていくためには、自分が自分とつながっていなければなりません。自分につながるということは、自分が自分をわかっていくということで、自分ときちんした関係を持つということです。私たちは自分が自分とうまくつながった分だけ人ともつながり、うまくかかわることができるようになります。そして、人とうまくかかわれた分だけ自分ともよりうまくかかわることができるようになるのです。





ひきこもりの入り口、つまりどのような理由でひきこもるにしろ、私は彼らがひきこもっている間になすべきことはその原因となった問題を解決することではありますが、社会に出て行く前にこの「自分と社会との関係性の調整」という内的作業ということもあるのではないかと考えるようになりました。





私が担当してきたひきこもりの青年のうち、一度降りた既存のレールに戻った者もいれば、従来の価値観とは別の考えのもと、自由に別ルートを作り充実して生きる模索をしている者もいます。





一方で、そういう内的作業をすることなくひきこもりを長期化させ、かつ、既存の常識や価値観に縛られて外で働くことだけが社会参加であるととらえ、二重三重に出口をうまくつけることができなくなっている人もたくさんいます。



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