発達障害を背景とするひきこもり事例
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発達障害を背景とするひきこもり事例

2020年03月30日(月)9:11 AM






事例





1  ケースの概要





Sさんは、通常よりかなり時間を要したものの、普通分娩にて誕生しました。乳児期はミルクを吐きやすく、脱水症状になり入院も数回体験しました。





また一歳でヘルニアの手術を体験しました。三歳で保育園に入園すると、保育士から食の細さと食べ方の遅さを指摘され、母親はSさんの食事について長いこと悩まされたそうです。





Sさんは動作が緩慢で、集団での活動についていけず、一人で昆虫や絵本を眺めることに集中するような子どもでした。自分から積極的に他の子と関わろうとはしませんでしたが、他の子から誘われるとついていくような受身性が目立ちました。





小学校に入学してからも、教師から「大人しすぎる」と指摘されていました。運動が大の苦手で、体育の時間は「具合が悪い」と言ってはよく休んでいました。特に、水への恐怖心が強く、体育の時、水泳の授業はプール脇で見学することがほとんどでした。





ゆっくり考えすぎてすぐに行動に移せなかったり、課題を授業時間内に仕上げられなかったりすることがしばしばでしたが、いったんやり始めれば、コツコツと丁寧に作業するような子どもだったようです。





小学校高学年になると、同級生からいじめを受け、何回か学校から突然いなくなったり、夜になっても家に戻らずに捜索され、空き地や公園で一人でいるのを発見されたことがありました。Sさんは小・中学校を通して反抗的な態度をとることはなく、内向的でいつも我慢している子どもでした。





中学生になるとさらに寡黙になり、帰宅時は自室に閉じこもりがちになり、成績も下がってきました。この頃、ときおり登校を渋ることはありましたが、積極的に家庭訪問して登校を促す担任に強い抵抗を示すことはなく、不登校が長期化することはありませんでした。





高校は私立の普通高校に進学しました。親密に付き合う友人こそできませんでしたが、行き帰りの電車で通学を共にする同級生がおり、Sさんは「高校はそれなりに楽しかった」と言います。





自宅から通学可能な私立大学に推薦入学を果たし、孤立しながらも大学を卒業しました。大学生活では、クラブ活動や仲間関係を楽しむことなく、書店での立ち読みやパチンコ通いをして過ごすことが多かったようです。





卒業が近づいても、Sさんが自ら就職活動をすることはなく、卒業後は父親の知人が経営している運送業の事務職として働き始めました。そこでは、どの部署に回されても、仕事を期限内で仕上げることができず、二年後に解雇となりました。





その後、職業訓練校に通い、実践で活用できる技術を習得し、その技能が活かせる職場への再就職を果たしました。しかし、「仕事が遅い」と言われることが多く、Sさんは上司や同僚の言動に立腹し、衝動的に仕事道具を壊したり、物を投げつけたりして職場を解雇されました。





その後は就労する意欲がなくなり、時折、家族へのかんしゃくが見られました。夜間に本屋やビデオショップに行くほかは、昼近くまで寝ている生活を一年間ほど続けていましたが、二十代後半になったところで母親がSさんを連れて関東自立就労支援センターに来所しました。父親の病気による入院と退職が、来所の大きな要因になったようです。





2  相談経過





細身のSさんが母親に連れられて来所しました。姿勢が悪く、肩に力の入ったぎくしゃくした歩き方をする特徴があります。話し出すのにも時間がかかり、いざ話し出すと小声で早口なので聞き取りづらい感じがします。





個別相談の場面でスポーツや作業を取り入れてみると、スポーツは何をやっても苦手で、運動技能、特に粗大運動の苦手さは顕著でした。





病院へ行って知能検査(WAIS-R)を実施してみると、知能指数は八七(言語性IQ八三、動作性IQ九五)で平均値でしたが、検査時間に三時間弱を要し、制限時間のあるものについてはクリアすることが難しかったようです。





医師からは、生育歴などからSさんは発達性協調運動障害と診断されました。この障害特性は生産性を問われる就労場面において不適応をもたらす要因となったものと思われました。





さらに、過剰緊張が著しく、相手に質問したり助けを請うたりする対人技術が適当に獲得できていないため、危機場面において適切な対応ができず、衝動的に行動化するか、ひきこもるしかなかったものと思われました。





その後、精神保健福祉センターに通い、スクイグルやゲーム的要素の強い台本読み、リズム打ちなどのアクティビティ、あるいはSST(社会技能訓練)などを中心としたセッションを継続しました。





これによって、しだいに言語表出がスムースになり、自発的な会話が増えてきました。一年後には言語的な面接にも不自由を感じなくなり、家族関係においてもかんしゃくが激減しました。





さらに一年後には、関東自立就労支援センターに通い、他人との交流の練習をしながら対人関係を学び、短時間ではありますがアルバイトを始め、現在も継続しています。



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団体概要
団体名
関東自立就労支援センター
理事長:
大橋秀太
理事:
大畑健太
理事:
杉下真理
住所
東京都東久留米市浅間町1-12-9
TEL
042-424-7855
メール
ki6jt7@bma.biglobe.ne.jp
活動内容
・若年者の就労支援、
 学習 支援、生活訓練
・共同生活寮の運営
・教育相談の実施
・各種資格取得支援