夫婦関係と娘
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夫婦関係と娘

2020年03月28日(土)1:15 午後



制服を着た、高校一年生の裕子さん(仮名)は、ちょっとふてくされ気味に面接室の椅子に腰をかけ、足を組むと傍らにいる母親に斜めに構え、目をそらして言いました。




「別に、お母さんに働いてほしくないと言っているわけじゃないんだから誤解しないでよ。私がね、一番安心できたのは学校から帰って来て、『お母さん、おなかがすいたよ』と言ったときなんだよ。『もう、眠たい』といって膝まくらしたとき、お母さんが布団をかけてくれたときなんだよ。





最近のお母さん、少し変だよ」母親は一瞬、たじろぎましたがあらためて背筋を伸ばして下を向きました。





40代半ばの年齢を感じさせないほどに若々しい母親は、俗にいう輝く女性です。裕子さんと大学三年生の長男がいるとは、私にはとても思えないセンスで身をまとっていました。





母親が職域対象の営業職に就いたのは、裕子さんが小学校5年生になったときでした。





大学を卒業してから、2年ほど会社勤めをした母親は、知人の紹介で夫と出会い、1 年後に結婚しました。





それから数カ月後に長男が誕生しました。夫の将来が安定していたことと、子育てを楽しみたかった母親は、専業主婦を満喫したかったようです。





そして夫の転勤、単身赴任につれて大学時代に関心を寄せていた専門分野の蔵書も図書館に寄贈してしまいました。





長男が年長児になると、裕子さんが誕生しました。このころから夫は過密なスケジュールをこなす身となり、家庭での夫と父親の顔は、次第に消えていきました。





帰宅時間は毎日深夜で、ほとんどが翌日になりました。母親は、子供についての相談と合わせて翌日になった理由も少しだけ聞いてみたいと思っていました。





返事はいつも決まっていました。「俺、仕事で疲れてるんだ。子育ては、お前に任せた」母親は、子育てを夫に頼もうと思っていたわけではありませんでした。





互いの気持ちを理解しあうことで、子育てを一緒にしているという実感が欲しかったのです。





そして夫は「いちいち答えるのが面倒だ」といった顔で翌日になる理由を、夫のからだを心配しつつも不満を募らせる妻である母親に言いました。





「そんなに気になるなら、いつでも俺の後をついてきたらいいんだ」





母親は、夫と深いコミュニケーションをとっていくことにしだいに意欲をなくし、子育てに専念しました。





ふっと気がついたら長男は高校へ、娘は女性になっていました。いつの間にか夫の「わがまま」に付き合ってきた自分に嫌悪感をいだき、女性の自立に焦るように刺激され仕事に就きました。





仕事への評価が高まると、夫と同じように翌日に帰宅することもありました。中学三年生の冬、裕子さんは母親が父親に向けた言葉を聞き、勉強が手に付かなくなりました。





「それならあなた、いつでも私のあとをついてきたらいいのよ」。父親は唖然とした顔で、母親をただ黙って見つめていました。



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