引きこもりを抱える家族の精神病理
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引きこもりを抱える家族の精神病理

2020年02月25日(火)12:15 AM



引きこもりを抱える家族の精神病理については、引きこもり本人の場合と同様のことが言えます。すなわち、もともと何らかの問題を抱えている家族であったがゆえに、引きこもりが生じたとは一般的には言えません。


精神科医の斎藤環氏の調査でも、「父親は大卒の会社員で母親は専業主婦、経済的には平均以上で、特に問題となるような家庭状況はない」といった「普通」の家庭であることが多いとされています。しかし、それでは引きこもる人を抱える家族には全く問題がないのかというとそうとばかりは言えません。


本人の精神病理と同じような現象が家族にも起こってくることがあります。つまり、正確には、本人が引きこもることによって家族にも新たに問題が生じてくるのです。それでは、家族に生じる精神病理とはどのようなものなのでしょうか。まず最初に生じる現象は、家族自身の不安と焦りであると思われます。


子供が引きこもり始めると、はじめのうちはちょっと体調を崩したのかなどと思いつつもそれほど心配もしていなかったのが、不登校や欠勤や外出もしないといった状況が長引くにつれて心配が増してきます。


そして、本人に理由を問いつめたり励まし始めたりします。このような行動はまったく自然なものであり、一般的な感覚からは何ら非難されるべきものではありません。


しかし、本人自身ははた目からは想像もできないほど追いつめられているのです。そのため、家族の側からすれば当然のこのような働きかけも、本人にとっては不安や焦りを増強させるものにしかならない場合が多いのです。


やがてひきこもっている期間が数カ月という単位になってくると、家族や焦り、またどうして引きこもってしまったのかという疑問、育て方に悪いところがあったのかもといった罪悪感、怠けているという非難、本人の考えていることが全く分からないという戸惑い、子供の将来に対する心配や場合によっては失望、暴力がある場合にはそれへの恐怖感など、様々な感情が高まってきます。


また、家族の中で犯人捜しのような非難の応酬が行われることすらあります。そして、本人に外出や就労させようとする家族の圧力は次第に大きくなっていきます。しかし、この時期には本人の状況もよりいっそう苦しいものになっているので、これらの圧力はますます本人を追い詰める方向に作用してしまいます。


家族の側も、本人のつらさを感じて言いたい事も言わずに我慢したりする一方、一度言いはじめると今度は我慢していた分だけ感情的になったり、理詰めの説得を続けたり、脅迫的な叱責になってしまったりします。


この時期になると、本人の心の状況、ひきこもっていることそのもの、家族の心の状況、の三者が、お互いがお互いを刺激し合ってますます状況を悪くしていくという悪循環が定着してきます。


このような状況になってしまうと、家族の力だけではやはり相当難しいと言わざるをえません。家族だけでもよいから専門の援助機関につなげることができれば、それだけでもかなり可能性が開けてくるのですが、それは第三者の存在によってこの悪循環の作用を弱めて断ち切っていくことが期待できるからです。


不幸にして適切な援助を得られなかった場合には、家族なりに様々な方策を尽くしても効果が上がらない状況が続く可能性が極めて高く、やがてある種のあきらめが家族に生じてきます。


あきらめとは言っても、本心からのあきらめはそう簡単に生じるものではなく、現状から目をそむけてまるで問題が存在しないかのように振るまう「否認」に近い状態になります。


この振るまいとは、家族外に向けての、言いかえれば社会に向けての家族の振るまいですが、このようになってしまうとますます外(社会)からの援助を受けることができなくなり、家族は社会の中で孤立無援の感覚を持ってしまいます。


そしてその家族の中にあって本人もまた孤立感をもつという二重の孤立構造ができあがってしまいます。時には家族同士の間でさえそのようなふるまいが定着してしまう場合もあり、家族の一人ひとりが引きこもりという問題の前で孤立状態に置かれてしまいます。


こうなると、引きこもりという問題に立ち向かっていく家族の力はほとんど失われてしまいますし、ある意味では、家族が引きこもり状態を保つ役割すら果たしてしまうことになります。このように社会、家族、本人の三者がその接点を失い悪循環に陥っている状態がよく見られます。


本人の精神病理が入れ子構造のように家族の精神病理にもあてはまるのであり、本人と家族、家族と社会の間の接点を回復させることが非常に重要であることがご理解いただけると思います。


引きこもりという状態自体が本人と家族を巻き込み、悪循環の中で引きこもり状態をより強固にしていく作用を持っているということです。家族外への接点を失うことなく、適切な援助を求めることを世間体などを考えてためらわないようにすることが大切だと思います。



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