家庭内暴力を起こす子供の性格傾向
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家庭内暴力を起こす子供の性格傾向

2020年02月24日(月)12:42 AM



家庭内暴力を生じる子供の性格傾向については、いろいろの専門家が論じていますが、本城秀氏(家庭内暴力臨床精神医学講座・中山書店)の挙げる、1、強迫性、2、他者への配慮性(過敏性)、3、対人関係の希薄性、4、自己中心性の 4項目に、依存性、情緒不安定など加えるとほぼ網羅されるように思います。


手島ちず子氏(思春期家庭内暴力~精神科外来でみられた症例の検討・臨床精神医学)は、これらを「内向的でかつわがままで欲求水準が高く、几帳面で完全浴が高いため妥協しにくいという挫折しやすい性格」とまとめています。


親の性格傾向もしくは養育態度についても、様々な指摘があります。母親について共通項をまとめてみると、内向的で不安が強く自信がないため、とりこし苦労をしがちで、強迫的になりやすく、気分も変動しやすい、この結果、子供に対しては過保護、過干渉、あるいは支配的な養育態度を取りやすいといった母親像が浮かんできます。


若林愼一郎氏(登校拒否と家庭内暴力・こころの科学)は、こうした養育態度を取りながら、「強迫的な頑固さと他罰的傾向のために、従来の養育パターンを容易に変更できず、患者への対応において患児を刺激し、暴力誘発的にふるまい、暴力をますます助長し、持続させることになりやすい」と述べています。


また、岩井寛氏(家庭内暴力と家族病理・季刊精神療法)は、家庭内暴力の家族傾向を三型に分けて論じる中で、母親に共通する点として、「夫への欲求不満」を挙げており、これも重要だと思われます。こうした母親の傾向と子供の傾向は、相互に刺激し合い、強めあって特有の密接な関係を作っており、一方の性格特徴のみ取り上げることは無意味かもしれません。


父親については、「家族の問題に対して無関心もしくは責任回避的傾向」「影が薄く、心理的不在」といったところが共通項であり、自信がないゆえに子供に支配的にならざるを得ない母親を心理的に支えられず、かつ母と子の癒着(不健康な相互依存)関係に楔を打ち込むことのできない父親像が浮かんできます。


他方で、父親自身が「子供に対して暴力的、支配的である場合もある」(若林氏)との指摘もあります。総じて、家庭の雰囲気は顕在化はしていなくても相互に他罰的で、寛容性に欠け、皆が愛情欲求不満を感じそれゆえの攻撃性を潜在させている可能性が強いように思います。


家庭内暴力発現の心理的メカニズム


こうしたどこか不寛容でゆとりのない家庭環境の中にあって、敏感かつ小心で他者の意をくむ傾向の強い子供は、自分の欲求を抑制しがちになり、健康な幼児的万能感は満たされないまま、肥大化していくと考えられます。


ところが、児童期後期から思春期を迎え、他者からの社会的視線を強く意識するようになると、一方で肥大化した幼児的万能感を維持しようとし、他方では自分への幻滅と劣等感を感じ、そこから生じる傷つきを避けるために自身のこだわりに執着する結果、よけい他者との折り合いは悪くなってしまいます。


これには、父の心理的不在と母の支配により(もちろん子どもの個性も関与して)、子供に必要な社会性が育っておらず、集団生活の中で役割を引き受けたり、仲間との人間関係に入っていく力がついていないことも関係しています。


こうした悪循環の連鎖の最中で、多くの場合些細に見える出来事が大きな挫折体験を引き起こすのです。しかし、挫折による傷つきは、既述のような母の養育姿勢のために癒されないどころか拒否にあい、むしろ強められてしまいます。


思春期には、だれしも自立と依存の葛藤を経験しますが、このような親子関係の中で子供は依存もさせてもらえず、自立もさせてもらえない葛藤的状況のなかに傷ついたまま捨て置かれるのです。


ここにいたって、子供の中に潜在していた攻撃性が顕在化することになります。しかも、この攻撃性は、満足されない「甘え」を基礎に持っているために、「恨み」に転化し、攻撃行動によって崩れることがありません。


子供は暴力をふるいながら、決して満たされず、余計に傷ついては親に依存を求めます。子供たちがしばしば「ああしてくれなかった。こうしてくれなかった」と恨みごとを言い、暴力をふるった後で幼児のように甘えるのはこのような心理からでしょう。


しかし、当然ながら暴力を振るわれる親の側には拒否感が生じるため、この甘えも満たされずに子供は葛藤のはざまで退行していくことになります。この退行が、またさらに暴力を激しくするとともに自己評価を低下させ、社会からの孤立感を増すという悪循環を生じていきます。


強迫傾向(こだわり)の激化と対人恐怖


子、母 双方の強迫性が指摘されますが、これはもって生れた性質というよりも、反応性の特質とも考えられます。斎藤学氏(家庭内暴力と夫婦間の病理・臨床精神医学)は、子供の強迫性について「素因というより、親の侵入に対する反応」と述べていますが、母親の側の強迫性も子育てに触発された不安が、夫の支えによる緩和を得られずに強迫性に転化したものと考えられるかもしれません。


いずれにしても、母も強迫的支配による侵入に脅かされて、強迫性を発達させてきた子供が母との葛藤状態に陥った場合、それは「強迫」対「強迫」の戦いとなり、子供は暴力の力を借りて、自分の強迫性を押し通そうとすることになります。


ここに「巻き込み型」と呼ばれる状態が成立し、子供は自分のこだわりを満たすために親を思うがままに操作して、文字通り「奴隷」のように扱うようになります。


私が経験した事例でも、買い物などに親を走らせるのみならず、自分がやって失敗するのが怖いためにわざわざ母親を自室に呼びつけてビデオの予約録画ボタンを押させていたケースがありました。もちろん、もし思い通りに録画ができていなかった場合には、母親を責め、謝罪させるのです。


こういった状態では、親子の間の境界は限りなく曖昧化し、退行が進みます。他方でわずかな食い違いや違和感が、「侵入」と受け取られるので、必然的に対人恐怖的になっていきます。それがまた親子関係の中への引きこもりを来すという循環に落ち込んでいくのです。


以上のように考えると、家庭内暴力は、非常に不適切でより病的な状態に移行する危険性をはらみながらも、親に対する子供の「自律性」回復の試みという側面を持っているとみられます。その試みがその家族が元来持っていた病理的関係によって絡めとられ、増幅していく場合が重症化の過程であると考えられます。



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