ひきこもりの理由がわからない親のズレを直す
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ひきこもりの理由がわからない親のズレを直す

2020年02月22日(土)9:45 PM




「何も言ってくれないからわからない」親、「どう話していいかわからない」子


うっかり見誤っていることというのは、人生においていろいろとあると思います。わが子の子育てについてこそ、いろいろとありがちのものです。



わたしは二十年くらいカウンセリングを続けてきて、これはもう痛感することです。親が相談室に来所してわが子についていろいろ問題を訴えます。



聞いているわたしは、往々にして親が一人合点でそう思い込んでいるのであって、子どもの思いは実はそうじゃないのではないかと直感することが多いのです。



はからずも、わが子のひきこもりが続いている現状について、手がかりがないと思い込んで途方に暮れて久しく、とりたてて何の問題も見えないように思うのにと嘆く親の声を聞くとき、わたしは思うのです。



子どもが何の原因もなくてひきこもりを続けている道理がないのに、と。もともと、親が子に向かい合う時の接し方に、基本的にズレが生じがちになります。



早い話、子どもが親に伝えるべきこと、つまり何が原因かを子どもは親に伝えていないのです。伝えるべきことがなんなのか、子どもは言葉で説明する力がない、というのが圧倒的な現実です。



なのに、親は懸命に言葉での説明を求めるのです。親は、「何かあるのなら言ってよ」と子どもに問いただします。どう言ったらいいのか分からず、子どもは窮して黙ってしまいます。



子どもの力ではとてもうまく言い表せないのは、実は子どもの「気持ち」そのものなのです。言葉なんかではどうにも表せない「気持ち」です。



「何も言ってくれないから分からない」と、親は嘆きます。親にそう嘆かれると、子どもはただでさえうっとおしいのに更にうっとおしくなります。



向き合っている親との気持ちの隔たりが重荷になって、子どもは「もういいよ。なんでもないから」と、不本意ながら親を退けようとしてしまいます。



親に「気持ち」が伝わらない子どもの苛立ちなのです。軽視された残念さのあまり「なんでもないことなんかないでしょ。そんなうっとおしい顔してないで。ねえ、お願いだから言って」と親に食い下がられるのではこのところその繰り返しなためにもはや耐えられなくなって、「いいったら、いいんだよ。なんでもないんだから。母さん、放っておいて。構わないで」となってしまいます。



もはやそのあとは、いらだちや腹立ちの応酬で、親が「いいわよ。こんなに気にしてあげてるのに、それが余計なお世話というのなら、もう今後、あなたのことなど一切気にしてあげません。わたしは知らないからねっ」と捨て鉢になり、「なんだよっ。余計なお世話ばっかりしたがっているくせにっ」と子どもがわめき返します。



つい、せっかちに親は”事態”とか”事情”とか”事柄”とか”原因”そのものを言葉で説明させたがります。子どもはその前に、自分の嫌な”気持ち”やうっとおしい思いに”共感”を示してもらいたがります。



感じ取ってもらいたいのです。親と子とそこがズレてしまっているのです。「何も言ってくれないから、分からない」と”分からない”を連発される代わりに、「言わなくても、見れば分かる」”分かる”と親に”共感”を表明してほしいのです。



親が言葉で表すのです。「見れば今、ほんとにうっとおしい気持ちでいるようだとわたしには分かるも分からないもない。うっとおしい時はうっとおしいものよ。うっとおしくてやりきれないのね。あなたの心が体全体にあふれているわよ。親だもの、感じとれるわよ。まあ、このお茶でも飲んで」



すると、子どもは黙って湯飲みに手を伸ばします。「うまく入ったわね。このお茶。ああ、おいしい」とかの親の声を聞きながら、子どもは思いがけず入れてくれたお茶をぐぐーんと飲み干した後、せんべいをつまんで口に入れたのも自分で気づかずに、親との”情緒の共有”を味わいます。するとにわかにウーンと息を吐き出したりして、その一瞬後、一気に息を吸った後、「ねえ、母さん、見て。わたしの手、変じゃない?」



気になりすぎるほど気にしていて、意識過剰になっていたために、親に以前からきりだしかねていたひと言が、思わず口にしてしまえたのでした。指の開き方が友だちのみんなの様子と自分は何か違うように思えてならないのでした。W子さん、中学一年生の事例です。



小学校の低学年から、ピアノのレッスンを続けて今日にいたっています。指に関してはこの頃やっと気になりだしたことで、はっきりそうだと分かることが恐ろしくて親にも打ち明けられなくて、うっとおしい顔になってしまいがちだったのです。



W子さんは、人には絶対に言わないでおこうと心に決める一方で、母親にさえ、自分の心配が打ち明けられないことが大変な苛立ちに高まる時があり、時に死にたいとも思うほどの絶望でもあったのでした。



このW子さんという中学生の場合、学校を休みがちになり、部屋にこもりがちになり、親はそれがどうしてなのかをつきとめようとして、親なりに懸命になったことが逆に親と子の隔たりのもとになりました。



W子さんの場合、親が来所して何の理由もなしに学校を休みがちになって、友だちとの関係がうまくいかなくなって部屋に閉じこもりがちになったという、その理由が分からないとの訴えを聞いて、今ここに書いたような親子のズレを修正する運びを提案したのでした。



その結果、思いもかけず、手の指についての気がかりを率直に、W子さんが親に伝えることができました。親には、W子さんの出生時にさかのぼって思い当たることがありました。



あの高熱の時、小児科医は曖昧で、そのまま時間が経過し、W子さんはもう中学生になっています。手の指の開きがぎこちなく、ピアノの鍵盤の一オクターブに指が届きにくいのは、小児マヒと名づけるほどではないものの、あの時の熱の後遺症かもしれないと、子どもの訴えをもとに、知り合いの医師に相談したり、インターネットで調べたりしながらそれなりの思いに至ったのでした。



W子さんが一人でひそかに気にしていたのが、実は小学三、四年の時からであったことを打ち明けられてみれば、親は子どもの心の内を知らないことがあるものだと胸をつまらせてしまったものでした。



結局、指の開き方というのは、人によって違うので、親指を反らすと直角以上に反らせる人もいれば、ほとんど第一関節が硬くて反らせることができない人も多いようで、家族とあるいは友だちとも気にしないで話せることになったことが、W子さんにとって大きな解放感になりました。



この少女の例は、重苦しいひきこもりにならずにすんだ一例ですが、一般にいうひきこもりこそ、このような思いきって言いたいことが言えないままに、こだわりがこだわりを生んで、どうにも身動きがとれないまま、本格的なひきこもり状態になってしまったと言えるかもしれません。



人間は、自分の内奥の人に知られたくないことでも、安心のできる話しやすい人になら、気がついたらもう話してしまっているということにもなるものです。



長期間のひきこもりも、ひきこもりの始まった当初、あるいはどの時点においてでもこだわりや羞恥心を持たずに心のありようを受け止めてくれると思う人に内心が吐露できたなら、心になんらかのきっかけができ、人との関わりを持ちたいと願う人間本来の欲望や願望が表に表れるものなのです。



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