ひきこもりの居場所での学びと社会的自立
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ひきこもりの居場所での学びと社会的自立

2020年02月21日(金)11:27 PM






ひきこもりの若者たちが、自分が幻想的につくり上げた「普通」の社会像に圧倒されることなく現実の社会と出会っていけるよう、居場所では社会参加の学びが追及されています。





居場所で長い時間を過ごし、仲間との信頼関係を結ぶことができるようになると、今度は社会そのものとのつながりを回復するときがやってくるのですが、その場合に彼らの学びの場そのものが狭い居場所から外の世界に開かれていくことが必要になってきます。





多様な人々や人の営みとの出会いが作り出されなくてはならないし、場合によっては、居場所の外の時間と空間の中に棲み込むことを通して、社会イメージをもっと複合的で奥行きのあるものとしてとらえ直すことができなくてはなりません。





長い間、社会から離れてひきこもっていた若者たちは社会に参加する体験を通して、身体感覚で社会とのつながりを取り戻すしかないからです。





十分とは言えないまでも、もはや気持ちが自分の内面だけに向かうこともなくなり、また、暗かった社会イメージにも少しではありますが明るさが射し始めたころ、そんな若者たちを居場所から外の世界に連れ出し社会参加のさまざまな機会を作り出していきます。





居場所は、学校(社会)のなかに親密な仲間関係を築けなかった若者たちにとって、それを代償するいわゆる親密圏です。





親密圏としての居場所は、「自分が自分であっていい」空間であり、「自分の素の姿を見せることのできる」安全な空間です。





しかしながら、居場所の外に広がる公共的空間には、居場所とは違って実に多様な人々がいるのも事実であって、「不登校は怠惰である」「居場所のような甘いところで生活しては社会に出ていけなくなる」と信じて疑わない批判的なまなざしも存在します。





そもそも居場所は、お互いの生がケアされ支援される受容的な空間として構成されているから、その居場所の生活の中で守られてきた彼らが、居場所から社会へと直線的には渡ってはいけないとしても無理はありません。





そこで、居場所に外の世界を取り込むか、あるいは、外の世界のなかに居場所を移動させるか、いずれにしても学習空間の拡張が必要になってきます。





でも考えてみれば、居場所が形成してきた学びの内容のなかにこそ、公共空間に生かすべきものが蓄積されているはずです。





居場所ではメンバーたちは、あるがままの自分が保障され合う応答的で共生的な関係に支えられていますが、『公共性』(岩波書店、2000年)の齊藤純一氏の定義にしたがい、公共空間とは互いの生な関係性こそ、公共空間の構成原理であるはずです。





そうであるならば、居場所の若者たちが自分たちが学び身につけてきた価値観や諸規範を外の世界へと押し広げていくことはできないのか、その活動を通して居場所から社会へと渡っていくことはできないのか、などと夢見てしまいます。





そんな過大な期待を抱くことは慎まなければならないとしても、いずれにしても居場所はまず外へと開かれたものでなくてはなりません。





確かに居場所は否定的体験を共有する自助グループの陥りがちな、狭い共同性への同化と抑圧の空間に転化してしまう危険性を常にはらんでいます。





そうした居場所の生活を通しては若者たちは外の世界への信頼を再生することはできないし、したがって、新しい世界に飛び立つ勇気は生み出されてはきません。





だから居場所は、出入り自由な開かれた空間として形成されなければならず、自分の生が保証されない空間であるならば、すぐにでも撤退する自由が保障されていなければなりません。





そのためには、参加するかどうかも含めて自分に関わるすべての事柄が自らの自由裁量に委ねられる曖昧な空間であることが不可欠な要件となります。





メンバーたちは幾度となく居場所と外を往還しながら、外の世界にも居場所を発見したり、外の世界でもそこそこやれる自分を感じとったり、そのような自立への学びを重ねながらしだいに社会に加わっていくことができるようになります。





居場所の若者たちが居場所から外の世界へと参入していくプロセスは、彼らが社会的に自立していくプロセスでもあります。養護施設からうまく社会に出ていける子どもは、「他人に上手に依存できる子」であると聞いたことがありますが、それは教育学者の折出健二氏が『市民社会の教育ー関係性と方法』(創風社、2003年)で論じている「依存的自立」という自立の形に重なります。





自主独立という意味での自立は、現代のような激しい競争的関係の文脈においてとらえると、競争関係にうち勝ち、他者を押しのけてでも自分は勝ち残っていく競争的な自立の意味合いを肥大化させてとらえられがちです。





しかしながら、新自由主義的な自己責任が訴えられる今日、自立という意味をもっと「誰かと一緒に、または誰かの力に支えられて自分でできること」という意味合いにおいてとらえ返すべきでしょう。





このように、自立を他者との共生的な関係性のなかから立ち上がってくる世界への安心感や信頼によって支えられ遂行されていくプロセスとしてとらえると、居場所の若者たちもさまざまな社会参加を通して出会う世界や人々への信頼を増大させ、安心して自分をそこへと依存させていくことができるようになってはじめて、社会的自立へと踏み出すことができるようになります。





それまでしばらくの間、居場所(親密圏)は彼らが外の世界(公共圏)へとカミング・アウトしていくのを支え、世間の厳しさからお互いを守り合う出撃基地としての機能を果たさなければならないでしょう。



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