夫婦関係~わかりあうためにはケンカもする~
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夫婦関係~わかりあうためにはケンカもする~

2020年02月17日(月)10:35 AM






「別に妻が言うように他人事にしていたわけではありません。わたしなりにその都度考えていました。妻や子どもの立場にたってみると、いろいろと複雑な気持ちがあるんだろうなと思い、つい言葉にして返事できないんです。すると、妻は不満そうな顔をして、その場からいなくなってしまうんです。『そんなの、優しさと思わないで』とか、『あなたはわたしをバカにしているんでしょう』『いつから家族であることをあきらめてしまったの』と、悲しそうに言ってくるときもあります。





わたしはそんなとき、どう言ったらいいのか困ってしまうんです。わたしは別に、自分のことを特別に優しい人間とは思っていないし、もちろん、妻をバカにするなんて気もありません。わたしが家族をあきらめているって、どうしてそんな感じに妻には見えるのか、わたしにはまったくわからないんです。妻は何を言いたいのか、聞いてみようとも思うのですが、また不快な雰囲気になるんだろうな、と感じてやめてしまいます。





あえてギスギスした状況を作る必要もありませんから。それに、子どもも不安になります。わたしがなぜ、カウンセリングに来なければいけないんでしょうか。『とにかく行ってよ』とヒステリックに言われたから来ましたが、妻のほうがひどいことを言うんですよ。先日もわたしが会社から夕方に帰宅したとき、電気もつけないで、料理も作らないで、食卓でぼけっとしているんです。





子どもたちは薄暗くなった隣の居間で何か”助け合う”ように遊んでいました。だからわたしは思わず驚いて言ったんです。『いったいどうしたんだ、これは』って。そしたら妻がわたしに言い返してきたんです。『わたし、一人、バカみたい。あなたはそれでも生きているの』疲れて帰ってきているのはわたしです。妻に少し腹が立ちましたが、こらえて、わたしは明かりをつけ一人で台所に入りました」Aさん(三十五歳)は、来室したときのどこかとらえどころなくまったりとした落ちつきをわずかに失いつつありました。





顔が赤みを帯びて「こらえたんですよ」といった悔しい感情が放出され、わたしの体にも伝わってきました。わたしは奥さん(二十九歳)が初めて二人の幼い子どもを連れ、混乱の中で相談室に訪れた日のことを思い出し、「もうひと踏んばり」と自分に言い聞かせていました。「相談するにはあまりにもレベルが低い話だろうと思います。きっと笑われてしまいそうなことだと思います。ぜいたくな悩み、と言われてしまうかもしれません。いや、きっとそうだと思います。この前も学生時代の友人に話したら、『なに言ってんのよ、あなたわがままよ』と言われてしまいました。





だからこんな話、恥ずかしくて誰にも相談できないんです。でも、もう苦しくて、耐えられないんです。田舎の母にもバカにされそうで言えません。わたし、主人に不満を言いたいんです。でも、言う気になれないんです。わかるんです、なんて言われるか。『そうか』それで終わりなんです。





後は何もないんです。わたし、友人の言う”わがままな主人”のほうがうらやましいのです。変でしょ、わたし。そう、変なんです。だから子どもたち(三歳男子、二歳女子)にもついあたってしまって・・・・・・・」彼女はここまでたどたどしく話すと、泣き崩れてしまいました。





隣室で同僚スタッフと遊ぶ幼い子どもの声が胸にささってきます。人はときに、張り詰めた心を泣くことで癒し、涙で磨り減った神経を優しく潤すことがあります。浄化し、落ち着きを取り戻します。カタルシスです。険しい表情が消えた彼女は、淡々と再び語り始めました。「わたしは長女だったためか両親や祖父母に愛情たっぷりに育てられました。





と同時に、厳しくもありました。でも暴力とは違います。わたしは家族が大好きでした。だから結局、親の敷いてくれたレールの上を、言われるまま歩んできました。あぶない「いい子」ですね。反抗することもありませんでした。だってやっぱり両親が好きだし、悲しませたくなくて、親の顔色を見ながら過ごしてきました。





とくに母親はときどき感情まかせに怒るので・・・・・・言葉にはしませんが表情でわかるんです。『怒っているでしょう』と聞いても、『怒っていないよ』と言いながら冷たくその場を去ってしまうんです。わたし、それが嫌で母親の言いなりになっていたところもあります。だから、二階の子ども部屋にいると、急に床が抜け落ちるような恐怖に近い感覚に襲われることもありました。圧迫されているわたしの心の表れたったのでしょうか。二十五歳のとき、主人と恋愛結婚しました。初めて自分の意思で選びました。





主人は一度もわたしに自分の意見を押しつけたり、怒鳴ったり、殴ったりしたことはありません。わたしが間違っていても指摘するようなことをせず、わたしが自分で気がつくまで何も言いません。





わたしは初めて、自分で考えて行動することができるようになってきました。厳しい家庭に育ったわたしは、何も反対されないので最初は拍子抜けしてしまいました。主人は子どもにも手をあげることはもちろん、怒ったこともありません」ここまで話して、彼女は言葉に詰まってしまいました。安心して語りつくせると、人は自省心が沸き起こるのです。でもここで吐き出さないと”膿”は残り、また心を惑わします。わたしは口を挟みました。「一度も怒ったことがない・・・・・・・」すると彼女は、わたしの問いかけに即答するかのようにまた話し始めました。





はい。子どもは”意欲と思いやりのある子”に育ってほしいと決まって言うのです。それが・・・・・・。わたしも頭ではわかっているのですが、イライラして子どもにあたってしまいます。それを主人に少し話しても、わたしを叱ったりはしません。そして後で反省して子どもに『ごめんね』と謝ると、ニコッと笑って許してくれるのです。本当に救われる思いです。わかっています、こんなこと言うのはわがままだって。でも言いたいんです。主人に。『あなたはどうして、そういつもそんなに穏やかで冷静でいられるの。わたし、一人、バカみたい』って」





わたしは対面するAさんに向かって、彼女の寂しさ、子育てに対する不安、心細さをもう一度思い浮かべつつも、立腹するかのように言いました。「ご主人、こらえないで、思ったことを言いなさいよ」「えっ、言っていいんですか。それに、言ってしまうとうっとうしくなるじゃないですか」「うっとうしさは、深くつながり合っている”証”なんですよ。分かり合うことをあきらめては、霞のかかった家族になってしまいますよ」「思ったことをお互いに言ったら、傷つけあってしまうじゃないですか」





「親しくなるためには、傷つくリスクも背負うものです。でも反論の引き際も大事ですよ。」意図した立腹でしたが、押し問答からいつしかわたしは本気で怒っていました。一ヶ月経ってAさんは面接室で照れくさそうに言いました。「引き際が二人とも見つからず、疲れました。妻もわたしも”いい子”で育っていたんですね。ケンカするほど夫婦の仲が良くなるって、少しだけわかってきました」気持ちは互いに出せてこそ、相手の気持ちも入ってくるものです。でも、わたしも少しAさんに言いすぎたかなと反省しました。



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