ひきこもりと価値観
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ひきこもりと価値観

2020年01月25日(土)5:35 PM




価値観は本来、一人ひとり違って当然なのですが、時代や文化などによって傾向と言うものが現れます。戦後世代が多数を占める現代の価値観は、親の育った時代背景に影響され、経済中心主義、会社中心主義、学歴主義なのです。しかも「右肩上がり」に努力が報われると信じる価値観を共有しています。




ひきこもりの発生する家庭の7割が会社員・公務員などのいわゆる中産階級です。職業別人口比率からすれば、特別この階級の家庭に引きこもりが多いと言えないかもしれませんが、特徴的なことは多くの場合この階級は学歴や能力で、出世や給料が決まるということです。




つまり、この階級は、もっとも時代を反映した価値観(学歴・経済・努力報われ型)を持っていると言っていいと思います。当事者たちは親の価値観の中で育ち、そして縛られています。




小中学校・高校・大学・社会人のどの段階からの不登校や不出社によるひきこもりでも、たいていの場合、親の価値観で正直に生きたために失敗した、と感じているのです。




かといって自分自身の価値基準を持っているわけでもないのです。というより、代わりの基準を形成できる状況にないといえます。つまり、親の価値観で生き、その価値観でつまずいても、代わりの価値観を持ちえないことが、ひきこもりの特徴なのです。




その結果、ひきこもって依存することしか、なくなってしまうのです。親に必要なのは、意識的にせよ、無意識にせよ、自分の価値基準を当事者に押し付けてきたことの振り返りです。親が自分自身の価値観の縛りを緩めることが、当事者のひきこもりからの解放につながるのです。





バブル経済の崩壊後、IT化・グローバル化によって、社会システムは大変貌を遂げました。ひきこもり世代のほとんどはパソコン世代と言えます。若者を中心に社会生活の在り方が大きく変化しています。いうなれば親世代の「民主規範」が「ネット規範」と対峙する状況といえます。




そのことは何を意味するのでしょうか。親がひきこもりの着地点を自分たちの価値観に置くことは、根本的に無理だということです。ひきこもり世代と親世代は、その価値観が違うのです。




親たちは、総中流・年功序列・終身雇用・会社への忠誠・適齢期の結婚などの経済社会的な状況下で生きてきましたが、コンピューター化が進行した若者世代は、一部の専門労働と大多数のマニュアル労働に分化した格差社会に生きています。




30代正社員ですら潰してしまう成果主義の中で、男女ともに未婚化・晩婚化が当然のようになりつつあります。親たちが「民主規範」「経済的な一億総中流」に生きたとすれば、若者たちは「ネット規範」「経済格差の進む社会」に生きているのです。




どう考えても、親世代と若者世代の価値観のギャップを埋めたり、あるいは親側に合わせたりするのは、難しいように思えます。親たちには、ひきこもり世代、若者世代に歩み寄る必要があるように思われます。




自分たちの価値基準を若者に求めることを見直すこと、自分たちと違う若者の時代状況を見つめること、過酷な競争社会である格差社会が進行して、フリーター、ニート、不登校、ひきこもり、パラサイト、ボーダーライン、摂食障害、薬物乱用などに苦しむ若者が急増する時代状況を理解することが求められているのです。




西欧文化圏では、若者が1人前になるまでの期間が長引くようになっています。これは、日本にも当てはまる傾向と言えるのですが、親たちは、自分の若いころと単純に比較して、年齢主義的な達成を子供に求めてしまいます。




親たちの頭には「20歳前後で就職、30歳で結婚、40歳で課長、50歳で部長、60歳で定年」といった図式が染みついているのです。8年の引きこもりからプログラムに参加した20代男性は単位制高校への入学を決めました。




しかし、父親は、面談時に「絶対卒業」「バイク免許」「車の免許」「良い仕事」などと次々とまくし立てました。「遅れたから、早く早く」という年齢主義的な焦りを見せる中産階級の心性と、息子のつながりを解しない仕事人間の不勉強さが伝わってきます。




10年ひきこもったのですから、あと10年の時間を当事者に与えるくらいの気持ちが求められます。外来や居場所による支えが欠かせないケースと言えます。18年ひきこもった後に5年居場所に参加し、3か月間のバイトをした男性の母親は「先がないからしっかりしてもらわないと」などと述べました。




この母親は、長期ひきこもりにもかかわらず就労段階まできた当事者を正当に評価できていません。父親も、ひきこもりから脱出した5年間、ほとんど本人と向き合っていないようです。




この段階で必要なことは「疲れたら休んで、経験から教訓を得て、そして再チャレンジ」というメッセージを繰り返すことです。親の焦りが当事者を追いつめてしまう可能性についても、よく考える必要があります。3か月間の就労講座を終了間際に辞めた30代男性は「中途半端にやめて自信がなくなった」と述べました。




この男性は、バイト就労と講座の受講を繰り返していますので、再びチャレンジする勇気さえ失わなければ大丈夫と言えるケースです。何よりも、長期間悩まされた「醜貌恐怖」(姿形が醜いと思い込む)を乗り越えていることに気づく必要があります。




試行錯誤から挫折に至らないようにするためには、1年前の自分、3年前の自分、5年前の自分を振り返って、回復と変化と成長がある事実に気づいていくことが大切です。




高校中退後の不安定な感情に悩まされながら、高卒認定資格を取った10代女性は、志望大学志望学科への合格を決めました。受験直後の不安定さには「ちょっぴり勇気を」とアドバイスしましたが、受験も面接も平気だったと報告してくれました。




就学の場を得ることによって、さまざまな症状がなくなると予測されるケースです。レビンソンという学者は「試行錯誤して、40歳までに何とかすればよい」と述べています。青年期が長期化することは、専門家の間では「言わずもがな」の現象です。




20代、30代に試行錯誤を繰り返して、人生の後半に「大器晩成」ということでよいのです。ひきこもり期間自体を「大人になるために必要な時間であった」ととらえる必要があります。




加えて、親たちが「必要な時間を与える」「10年の時間を与える」という気持ちになれるか否かが、ひきこもり対応のポイントと言えるのです。あせりは容易にリバウンドにつながり、問題の蒸し返しになることは、手痛い経験として周知のところです。



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