ひきこもり当事者の気持ち
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ひきこもり当事者の気持ち

2020年01月22日(水)12:33 AM







学校や仕事への参加や友達づきあいがないままに、自宅や自室中心の生活を半年以上、つづけている人が世の中にはたくさんいます。一般に、このようなひとづきあいのない状態は、不登校、ひきこもりと呼ばれますが、呼ばれ方を受け入れるかどうかはどうでもよいことです。




問題になるのは、外部との交流がなくなることによって、考えすぎたり、落ち込んだり、あきらめてしまったり、マイナス思考におちいっていないかということです。また、家族ともうまくいかなくなって、気まずい思いやいら立ちがつのっていないかということです。




そして、極端な運動不足や栄養の偏りのために、心身を痛めてはいないかということです。自分からさまざまな制限を加えた、狭い範囲での生活によって、狭い見方におちいり、希望を見出せなくなったりしているひとに、ぜひ読んでいただきたいと思います。




ひきこもりから脱したケースは増加しています。彼ら一人ひとりが、ひきこもり生活についての言葉を残してくれていますので、ひきこもり中の気持ちについて知ることができます。




「どうにもならなかった」これは、大学受験の失敗から20年ひきこもった40歳男性の言葉ですが、ひきこもりが不本意であったことを語っています。同じ思いのままに20年もつづくことがあるという、ひきこもりの本質が伝わる言葉です。




この間、親はさまざまな機関に相談し続けています。親と当事者双方が、同じ思いにさいなまれてきたという点で、きわめて印象的です。




「きっかけがなかった」これは対人ストレスから14年ひきこもった30代男性の言葉です。彼は、「軽い気持ちから」出勤しなくなり、同僚の目を気にした自宅生活がズルズルとつづいて、いつのまにか14年経ってしまったのです。




多くの人の支援をうけて、関東自立就労支援センターのプログラムに参加して仕事に戻る訓練をしていますが、「なぜ、こんなに長く続いたのかわからない」とぼやきながら、「早く仕事をしたい」と希望を語っています。




「どこへ行ったらよいかわからなかった」やはり軽い気持ちから10ひきこもった20代男性は、「10年遅れ」で、かねての念願どうりに高校生になりました。この10年間に、社会人の受け入れや高卒認定資格など教育システムが変化してきたことが効いたケースといえます。




人前に出る恐怖から、中学不登校、高校中退となった20代女性は、勇気を出して自分から関東自立就労支援センターを訪れてくれました。やかり、「どこに行ったらよいかわからなかった」「行くところがなかった」といいます。




彼女は居場所に通うなかで、普通の会社員と結婚して、今では一児の母親になっています。「暗闇をひとりぼっちで歩いていた」「ガンダムのプラモデルで時代を感じていた」これらは、社会不安障害から18年ひきこもった30代男性の言葉ですが、ひきこもりにともなう孤独感が強く伝わってきます。




ひきこもりは段階的に悪化することもあります。親の対応も後手に回り、公的な支援によって救出されたときには、栄養障害などによる精神的な不安定さが目立ちました。さまざまな障害を合併していることが予測されましたが、栄養状態の改善により、詩人のような珠玉の言葉を残してくれたのです。




ひきこもりの原因は、学校や会社での対人ストレス、いじめ、人前での緊張やうつ状態に加えて、新しい学校や会社になじめないことや就労中の挫折などまでさまざまです。




若い世代にとって、学校や会社に適応していくことがたいへんな時代であることが示されているといえます。関東自立就労支援センターの統計では、学業途中からの発生(不登校・中退)と学業終了後の発生(卒業後無業・退職)は半数ずつとなっています。




ひきこもりは、「行きたくない」「少し休んでみたい」といった軽い気持ちから始まることが多いということもできます。軽いはずの気持ちが2日、3日と続くうちに、いつしかどうしようもなくなっている、それが「ひきこもり」の特徴なのです。




ひきこもりは渦のように深くなり、出るに出られなくなった。これは、10年間ひきこもり、後に大学院を終了した30代のひきこもりの当事者の言葉です。




ひきこもる行為自体がひきこもりを深めるという、ひきこもりの本質を表した言葉といえます。人目を気にすることによって、人目はますます気になるようになります。人目を避けることによって、ますます人目を避けるようになります。




「部屋を掃除してから出る」という決意は、部屋を掃除する行為を反復することになります。これらは、社会不安障害(対人恐怖)や強迫性障害に見られる心理ですが、避けるほどに影は大きくなって、さらに逃げたくなる、そしてさらに追っかけられる、そんな神経症(ノイローゼ)の悪循環のメカニズムが働いてしまうのです。




この段階では、社会や他人に対する関心が失われているのではありません。「人目や他人の言動を気にする」「人と会うことを避ける」「人や社会を批判する」これは、ひきこもりの親の会のアンケートから見た当事者たちの心理です。




彼らは、周囲への関心を十分に保っているのです。その上で、「出たいが出られない」「出るに出られない」状況にとらえられています。これらの言葉は、社会や他人への関心を保ちながら身動きがとれない、ひきこもりの矛盾した気持ちをよく表しているのです。




当事者たちは、何も考えないでひきこもっているのではありません。対人不安やストレス、過剰な緊張、いじめ、学校や社会が合わないことなどによってひきこもった当事者たちは、むしろ他人より繊細な神経の持ち主ということができます。




ひきこもりという形でしか、自分を守ることができなかったということもできます。「ひきこもりは自分を探る有意義な営みである」とする意見にも根拠があるのです。




しかし、自力で外に出ることができなかった場合には、ひきこもる行為自体による傷つきを繰り返すようになり、ひきこもり問題と呼ばれるのです。ちなみに、半年以上の期間が経過することによって、ひきこもりの定義を充たすことになります。




親の世代は、経済主義、会社主義、学歴主義など戦後社会の発展を支えた価値観を持っています。わが子にも同じ水準(以上)の生活を願う親の考えを、ひきこもりの当事者は受けいれています。




時代は大きな変貌を見せていますが、ひきこもりの親たちと当事者の考え方はそっくりなのです。さまざまな理由から、当事者は親の考えに反発したり反論したりできないままでいます。




学業途中であれ、学業終了後(中途退職を含む)であれ、彼らには、親の願う生き方を実現できなかったという挫折感や罪悪感があります。罪悪感から、うつ状態におちいることもありますが、学校や会社などに戻ることには、自尊心と自己愛による抵抗があるのです。




戦後の経済成長期を通じて、地域に若者がたむろする場所は減少し続けました。会社や学校で傷ついた若者は自宅に戻ってひきこもらざるを得なかったのです。同時に、当事者には、「親の言うことを聞いていたらこうなった」「親が必要なアドバイスをしてくれなかった」という被害者意識があります。




「親の期待に縛られて身動きできなかった」という犠牲者意識も出てきます。親を見る視点がこの一点にしぼられた場合に、親の対応次第で衝動行為につながることもあります。




親にしても、「世間に恥ずかしい」「なぜ、うちの子だけが」という被害者意識でいっぱいです。被害者意識どうしがドア一枚へだてて向かい合うことが、ひきこもりをさらに長引かせます。




関東自立就労支センターの統計からは、ひきこもり期間は3年以内がもっとも多いこと、期間が短いほど回復が良好なことがわかっています。3年以内は、「ゴールデン・タイム」といって、就学・就労などの社会参加にはほとんど問題がないということができます。




10年ほどひきこもっていても、社会参加に大きな問題はないのです。親が問題を放置していたのではなく、さまざまな機関に相談を重ねてきたことは多くのケースが示すところです。しかし、長期にわたって、社会の関心と有効な対処法が存在しなかったということもまた事実です。




社会や他人を意識したり、出たい葛藤に悩まされる時期を過ぎると、ひとの心は、無感動・無感覚(アパシー)におちいるか、または否認(認めない)のメカニズムが強くなるかの方向に進みます。




これは、自分の精神を守るうえでやむを得ない働きということができます。アパシーはもっと早期から作用する場合もありますが、周囲に関心がないという装いと裏腹な本心が隠されていることをいいます。




また、否認は、自分の感情や現状に触れることを、意識しないままに避けてしまう働きです。年齢が進むにてれて、期間が長引くにつれて、否認によって自分を守ろうとする傾向は強くなります。




そして、自力でひきこもりから脱することは、さらに難しくなるのです。時間の経過自体に、ひきこもりを長期化させる作用があるということができます。




しかし、2000年に表面化して以来、ひきこもりへの取り組みは少しずつ進行しています。40代や長期ひきこもりの当事者がNPO等の支援施設を訪れるにつれて、彼らの社会性の回復が可能であることもわかってきました。




長期化のなかでは、栄養障害をきたして身体を痛めることもあります。またうつ病や幻覚、妄想などをきたすこともあります。ときに、知的な低下をきたすことすらあります。若いという先入観も手伝って、ひきこもりの健康状態は見落とされやすく、身体管理の視点が当事者にも周囲にもない点に大きな特徴があるといえます。




カーテンはおろか、雨戸まで閉めきった真っ暗闇のなかで生活する人も珍しくありません。また、「菜食主義」などと称して極端な偏食におちいる人もいます。虫歯を放置して、菓子パンしか食べなくなった人もいます。




孤独を解消するために大量飲酒して、アルコール依存症におちいったケースもあります。これらの生活状態から栄養障害をきたし、連鎖的に身体をそこねたとしても不思議ではありません。




ときに、もとに戻らないほどに身体を痛めて、「身体障害」にいたってしまうこともあります。筋力低下、体力低下から虫歯、痔疾などまで、軽症のはずの身体疾患が、放置されたために重症化してしまうケースが見受けられます。




そのような場合には、労働能力を期待できなくなることすらあります。他方、良好な親子関係のなかで適切な運動と栄養が保たれた場合には、40代でも社会参加の可能性を示すケースが存在します。




50歳過ぎて居場所にはじめて参加した男性もいますが、若者らしい立ち振る舞いと笑顔が印象的でした。



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団体名
関東自立就労支援センター
理事長:
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理事:
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住所
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TEL
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メール
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活動内容
・若年者の就労支援、
 学習 支援、生活訓練
・共同生活寮の運営
・教育相談の実施
・各種資格取得支援