ひきこもる若者たちと時代背景
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ひきこもる若者たちと時代背景

2020年01月19日(日)12:25 PM







社会的な問い掛けとして、ひきこもりについて考えてみる前に、私自身の体験を踏まえて、70年代、80年代の時代状況を振り返ってみたいと思います。どうして、ひきこもりという現象が90年代以降増えてきているのか、それを考える手がかりはそれに先行する時代にあると思うからです。





1970年代半ばに20歳を迎えた私達の世代は、「モラトリアム世代」を呼ばれていました。学校にも行かず、定職にも就かず、アルバイトをしながらブラブラしているという、いまでいうフリーターのような若者たちが増えてきた時代でした。





しかし、いま社会的ひきこもりとして問題となっている、だれとも関わりが持てずに部屋の中で孤立してしまっているというような人たちは、少なくとも私の周囲では見かけなかったように思います。





いつの時代でも、思春期・青年期というのは、そこを生き延びて無事に通過することが困難な時期ではないかと思います。既にその頃の苦しさを忘れかけていますが、かつては私も確かにその若者の一人でした。今思うと、なぜ犯罪者にもならず、自殺もせず、その時期をくぐり抜けることができたのか、ただただ運が良かっただけのようにも思えます。




思春期・青年期は、きっと時代によって、その姿を様々に変えるのでしょう。私の親たちの世代は、不幸なことに、その時期に戦争が大きな影を落としていました。国家のために自分の命を捧げることが尊い、そう教育されてきた世代です。





多くの若者達の命が戦場に、儚く散っていきました。それもその世代にとっては、たった一回限りの青春だったのです。戦争の世代というのはちょっと極端な例かもしれませんが、そういう時代的な背景を抜きにして、思春期・青年期の問題を語ることはできません。





かつての青年たちにとって、この時期は子供時代というゆりかごから抜けだして、広い世界に恐る恐る足を踏み入れていく孤独な冒険の始まりでもありました。それは、様々な人に出会ったり、時には大人たちが眉をひそめるようなことをやったり、仲間や一人で旅をしたりという言わば「彷徨(さすらい)型」の体験でした。





ところが今は、「内閉(ひきこもり)型」の体験をとる青年たちが増えています。私はひきこもりの問題というのは、いつの時代にもあった思春期や青年期に特有の問題が、現代では「ひきこもり」という形をとって現れてきているのだと考えています。





ひきこもりという言葉が注目されるようになったのは、残念ながら、全世紀末に頻発した青少年によるいささかセンセーショナルな幾つかの事件を通して、マスコミによってネガティブな用語として取り上げられるようになってからでした。





その負のイメージが未だに一人歩きしていて、孤立した状況から抜け出せずにいる若者たちを、さらに追い込むファクターとして働いているのではないかと危惧します。




ひきこもっている若者たちが増え続けていることは社会的事実としてあるわけですが、その実態をきちんと把握しないまま「みんなと違うへんなやつら」という人々の不安や先入観から、治療や矯正の対象とすべきであるという、安易な方向に世論が向かってしまうことをわたしは恐れています。




そこで、わたしはここでは、ひきこもりの問題を単なる個人の病理としてや、なんらかの価値判断を含んだ「問題」としてではなく、社会の中で実際に集団で起きている「現象」としてみていきたいと思います。



 

精神科医による、ひきこもりについてのまとまった報告としては、1998年に出版された斉藤環さんの「社会的ひきこもりー終わらない思春期」(PHP新書)という本があります。




医学的なモデル像や治療規範を全面に出しすぎるなどの批判もあるようですが、わたし自身はこの本を読んで、それまではよく理解できなかった、ひきこもりの人たちの全体像がやっと見えたという思いがありました。




そういう点では、画期的な本だったと思います。この本で鋭い指摘だなと思うのは、ひきこもりの問題と抗生物資登場以前の結核との類似を社会学的な視点から論じていることです。ここで、すこし紹介しておきます。結核は、日本ではつい半世紀前の1950年代までは、死因のトップにあった恐ろしい病気でした。




明治維新以来、のべ1000万人の命を奪ったと言われています。作家や詩人にかぎっても、樋口一葉、正岡子規、石川啄木、宮沢賢治、梶井基次郎などが20代、30代でその若き命を奪われています。




斉藤環さんが指摘する両者の類似点としては、未来ある若者を襲う慢性の病気であること、社会的な広がりの大きいこと、社会的に誤解や偏見の対象になり、それが回復の過程に影響すること、一見、仕事をやれそうに見えてもできないことから、世間からの暗黙の非難にさらされること、などをあげています。




結核にかかりやすい体質と性格との関係について、また、その時代を支配している時代精神とその時代の特徴的な病気との関係についても興味深い考察があります。




この視点からすると、19世紀というのは、音楽、絵画、文学においてはロマン主義の時代で、結核の時代でもありました。そこで、結核とロマン主義的性格の関係が指摘されています。



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