ひきこもりのプロセスをなぞる
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ひきこもりのプロセスをなぞる

2019年12月20日(金)10:32 AM




ひきこもりのプロセス





「急に始まる」





ひきこもりにはプロセスがありますが、これを考えるにあたって、はじめにいくつか確認しておいたほうがいいことがあります。まず、始まりの時期のことですが、ひきこもりの場合には、不登校の場合に見られるような「心気症期」と呼ばれる時期は見当たりません。





少なくとも、はっきりとした初期の徴候を特定することはできません。不登校の場合は比較的年齢が低いので身体化症状が中心となりますが、おそらくひきこもりの場合はもっと年齢の幅が広がり、言語化、行動化、ある種の精神症状など、はるかに複雑な様相を示すためと思われます。





ですから、心気症的になってゆっくりひきこもりがちになっていくというより、いろいろな生活上のエピソードの中で、ひきこもりはあるとき急に始まります。





次に気をつけなければいけないのは、終わりの時期のことです。ひきこもりの場合でも、かつての何も問題のなかった時期に戻ればうまくいくというものではありません。





ゴールに「回復」や「立ち直り」といったステージを設定してしまうと、不登校の場合と同じように、環を閉じることになってしまいます。





するとそこには、「回復」という名の、高くそびえるハードルが目の前に立ちはだかることになります。あるいは、「立ち直り」とは名ばかりの、最初の地点まではるかに続く途方もなく長い道のりが目の前に現れます。





「回復」や「立ち直り」という、おさまりのいい言葉を遠ざけましょう。もっと泥臭い言葉を探しましょう。そして、この環を開いてプロセスを先に進めていかなくてはいけません。





ここでは、混乱期、安定期、ためらい期、動き出しの四つの時期を提案しています。





「プロセスの見極め」





もう一つ気をつけなければいけないことは、プロセスそのものの考え方、利用の仕方です。部屋に閉じこもっていて出てこないとき、「なんで親はそれを許しているのかわからない」「親なら部屋に踏み込んで引っ張り出すべきだ」といった強行説を唱える方もおられます。





確かにそれも一つの方法かもしれません。しかし、こうしたやり方が効果的な場合はごく限られています。多くの場合、期待とは逆にマイナスの方向にいってしまいますので、強行説をとるときは、慎重に検討する必要があります。





本人が閉じこもっているとき、親が部屋に出向くことが必要な時期もありますし、そうではない時期もあります。ひきこもりにはある程度共通する経過があり、歩んでいくプロセスがあります。その時々の経過を見極め、タイミングを合わせて、それぞれのプロセスを歩むのにふさわしいことをやらなければなりません。





「四つのプロセス」





ひきこもりのプロセスは、混乱期、安定期、ためらい期、そして動き出しの時期という、おおむね四つの時期に分けることができます。





これらのプロセスは、一本調子にまっすぐ進むということではなく、各期の時間的な長短もケースバイケースです。また、隣接した各期が重なり合うような境目の時期もあります。





そんなときには、つい現在のプロセスを飛び越して早く先に進もうとしてしまいます。でも、それではうまくいきません。無理をするとすぐまた、振り出しに戻るということになってしまいます。





こうした堂々巡りが、ひきこもりの長期化の一番の要因です。慌てず騒がず、今の自分たちの位置取りが不確かなときにこそ、自らの位置を知る羅針盤としてこのプロセスが役に立ちます。





「役割の程度」





ひきこもりのプロセスを進めるにあたって、本人、家族(親)、援助者が果たす役割は時期によって異なります。ひきこもりのプロセスを進むうえでの、本人、家族(親)、援助者の役割を見てみると、大まかに言ってプロセスの前半には家族(親)の役割の程度、頻度が大きいです。





次にプロセスの中間あたりで援助者の役割が増えてきます。そして、それと入れ替わりに本人へと出番が回ってきます。そして、プロセスの最後には援助者はお払い箱となり、本人と家族(親)が同じくらいに、がんばりすぎない程度の役割を果たしていくということになるでしょう。このプロセスを進めるのに、援助者が先頭に立って、本人、家族(親)を引き連れて進んでいくということはありません。





援助者の役割は、あくまで部分的なものです。一般に本人、家族(親)はいつもひきこもりの当事者ですが、援助者がどこからその役割を担うことになるのかは、どの時点で当事者が援助を求めてくるかによって異なります。イニシアティブは常に当事者の側にあるのです。





「ひきこもりの心模様の10段階」





わたしはひきこもりの心の模様を、次の10段階に分けています。





①不安「僕の将来は、どうなるんだろう」





②怒り「今の自分は自分の責任なのか、それとも親の責任なのか」





③取引「まだわかってくれないのか」





④拒絶「いくら話してももう無駄だ!」





⑤重圧・圧迫感「孤島で静かに生きたい、どうしてこんな行動をしてしまうのか」





⑥休息(受容)「子どもに親を殴らせないでくれ」





⑦自己否定(嫌悪)「迷惑ばかりかけて」





⑧夢探し動き出し「僕でもまだ大丈夫ですか」





⑨同世代復帰「あいつ、今ごろ何してるかな」





⑩仕切り直しの旅立ち「あの街で生まれ変わりたい」





ひきこもりのプロセスという観点からこれらを一つずつ見ていくと、①「不安」から⑤「重圧・圧迫感」までは、混乱した時期に起きるものです。





さらに⑦「自己否定」もそうです。また、⑥「休息(受容)」はほぼ安定期の出来事です。⑧「夢探し動き出し」、⑨「同世代復帰」はためらい期の気分と言うことができます。となると、⑩「仕切り直しの旅立ち」がひきこもりのゴールということになりそうですが、ちょっと待っていただきたいと思います。





ひきこもりが先に進むためには、今の自分を肯定することから始めなくてはなりません。「あの街で生まれ変わりたい」というのは、今のダメな自分をいったん葬り去って、再度別人として生まれ変わりたい、すなわち今の自分自身を否定し、別の自分にすげ替わりたいという願いに他なりません。となると、先に進むというより堂々巡りになりはしないかが懸念されます。





いずれにしても、これらはひきこもりの本人側の心の模様としてある程度納得できるものです。しかし、これら本人の心の模様とは別に、あるいは同時に、ひきこもりの家族の心の模様もどこかにあるはずですし、援助者の関与も並行して存在するはずです。そうした、タテ糸、ヨコ糸を織り成す流れ、全体のプロセスをさらに整理しておくことが必要です。



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