ひきこもりと凶悪犯罪
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ひきこもりと凶悪犯罪

2019年12月17日(火)12:19 AM






最近、ひきこもり状態になっている人が世間の耳目を集めるような重大な犯罪を起こし、マスコミで詳細に報道されるという事件が珍しくなくなってきています。





そこで、「ひきこもりが凶悪犯罪の原因の一つである」という「仮説」が一人歩きし始め、将来を悲観した両親が子どもを殺害するという事件まで発生したと報道されることもあります。





しかし、わたしの経験的にはひきこもりと凶悪犯罪、また、ひきこもりと少年犯罪が直接結びついているということは現時点においては可能性が乏しいといえます。「ひきこもりが凶悪犯罪の原因の一つである」という仮説は、根拠のない「うわさ」、「社会的神話」の一つに他ならないと断言してしまってよいでしょう。





凶悪犯罪とひきこもり





しかし、そうはいっても、「現にひきこもっている人が凶悪な犯罪を起こした」事実は残ります。マスコミに報道された事例については、細かな事実関係がよくわかりませんので、判断はできません。しかし、ひきこもりに伴うさまざまな行動の中で、犯罪に影響を及ぼすような問題点を一般論として検討してみます。





ただ、物事には両面があり、これから指摘する内容がひきこもりから立ち直る一つのきっかけになる場合もありますので、具体的な事例に当てはめる場合には、慎重に検討することが必要になります。





たとえば、複数の人を殺傷する、無差別に人を殺傷する、常識では理解できない行動をするなどの凶悪な犯罪を起こす人については、ほとんどの場合、刑事司法手続き(少年審判も刑事司法手続きの一つです)のなかで、「精神鑑定」が行われ、「犯行当時の刑事責任能力の有無(正常な判断能力があったのか、乏しくなっていたのか、なかったのか)」、「犯行当時の精神状態」、「事件に至る動機や経緯」について、精神科医や心理学者などが詳細に検討します。





その結果は、「精神鑑定書」にまとめられ、裁判所等に報告されます。有名事件の「精神鑑定書」については、全部ではありませんが一部交刊されているものもあり、内容を検討することができます。その中から、ひきこもりと少しでも関連するポイントを探すと、





①一つのことに非常にこだわったり、誤った観念にとりつかれてしまうことがある。





②一人でいることが多く、誤った観念を修正する機会を失いやすく、観念が強い信念体系にまで変化・成長していることがある。





③些細なきっかけから、周辺の事実関係を自分中心にまとめあげ、「ストーリー」を構成してしまうことがある。





などを取り上げることができます。このポイントはいわゆる、「強迫性」、「妄想様観念」などと呼ばれる要素で、主として精神的な問題性を検討する場合に用いられるものですが、ひきこもっている人の一部にも、このような強迫性や観念にとりつかれることにより、問題行動、場合によれば犯罪行動を起こすことがあると考えられます。





ひきこもりと強迫性





強迫性は、「こだわり」が中心的な問題になります。「こだわり」の中身は、





①不安がつのり、一つのことを自分の思いどおりに完全にやり遂げないとおさまらなかったり、何度も同じことを繰り返すという、「行動面に現れた強迫性=強迫行為」





②ある一つの考えにとりつかれてしまい、その考えから抜け出せないという「思考面に現れた強迫性=強迫観念」





③たとえば、何でもきちんと整理整頓しておかなければならない、何かをしないではいられないという「衝動面に現れた強迫性=強迫衝動」の3つに分類されます。





ひきこもりの人が常に強迫性を持っているわけではありませんが、ひきこもる人には完全癖があったり、他者からの評価を得ようとさまざまな努力をしてきた人が多いといわれています。その意味で、強迫的になりやすい傾向があるといえます。





強迫性があると、「一人でいることが多く、社会参加がなく、時間がたっぷりあり、こだわりについて徹底して検討することができる」ため、妄想様観念を発展させやすい状況にあるといえます。





しかも、ひきこもってインターネットなどに集中するようになると、情報の質を問わずにさまざまな知識を獲得し、いびつな思考形態を発展させたり、強迫衝動が強化されるなどの機会も増えてしまい、自分で自分を統制することがますます困難になります。





ひきこもりと妄想様観念





人は、毎日の生活の中で多くの刺激を受け、その刺激からさまざまなことを考え、判断をして行動しています。





たとえば、おなかがすいた状態で、レストラン街を通ったとすると、今日は「ステーキが食べたい」、「でも、所持金が少ないから、明日からの生活を考えると無理できないな」、「たまの贅沢ぐらいいいじゃないか」などと、頭の中で、「自分」と「もう一人の自分」とが対話をしながら、行動を決定することもあります。





また、テレビドラマや映画を見て、主人公と同一視し、「もし、自分が○○だったら・・・・・」と空想するのは、言葉に出すか出さないかは別として、子どもや少年にはよく見られる現象です。しかし、映画などは、映画館を出ることによって現実に容易に戻れますし、テレビでも番組が終わると日常生活がすぐそばに待っています。





ゲームやビデオなど刺激が強く、いわゆるバーチャルリアリティと呼ばれている世界でも、すぐそばに現実の世界があり、接点があれば虚構の世界と現実の境界があいまいになることはほとんどありません。





しかし、人間は、一人でいて他者と接触しないでいると、徐々に自他の境界についての認識が薄れてきて、自分の考え方や信念が間違っているのではないかというチェック機能を失いやすくなってしまいます。





ひきこもっていると、最初はそうではなくても、徐々に現実と空想、思考のためのシミュレーションと現実の言葉の区別がつかなくなってしまいがちです。こうなると、非現実的な世界観を抱いたり、非現実的な考え方を実行に移す傾向も生じやすくなりがちです。





ひきこもっていることで、外部との接触、外部との生き生きとした関係が絶たれ、非現実の閉鎖空間に閉じ込められるという危機的状況に近づいてきます。





ひきこもりの危険性=一人でいること





ひきこもりは、強迫性、妄想様観念の形成には直接かかわってはいないのですが、先にも述べたように、ひきこもってしまうと、「一人でいること」が多くなり、一人でいることによって、さまざまな問題性が強調されたり、強化されたりしがちになります。





空想と現実の世界が混乱しやすくなり、しかも、強迫性や妄想様観念の方向性が「犯罪」と親和する方向に向かったとき、ひきこもりと犯罪の関係性はどうしても強くなってしまいます。





このような問題を避けるためには、他者との接触がまったくなくなるような「完全なひきこもり状態」をなるべく避けるようにすることが大切になります。たとえ、家族だけであっても、ひきこもっている人と話をし、ひきこもっている部屋や空間に入り込み、他者の存在を少しでも意識させることが大切です。





犯罪の危険を感じたら





ひきこもっている人に何らかの犯罪的な傾向を感じたら、早めに最寄りの相談機関に相談することが大切です。たとえば、「犯罪」に異様な興味を示し、殺人や犯罪史に関する本を読みあさっている、犯罪に関する映画やビデオを繰り返し視聴している、インターネットで犯罪に関するサイトによく接続しているなどの行動があげられます。





また、通信販売などで武器や防具などを購入してしまうこともありますので、得体の知れない通信販売で物品の購入を始めた場合等は、内容をよく確認しなければなりません。





ただ、そうはいっても最初に話したように、「ひきこもりと凶悪犯罪」が直接関係することはほとんどありません。あわてないで、慎重に状況を把握して検討してください。



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