責任ある立場を任せ、自覚と常識を身につけさせる
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責任ある立場を任せ、自覚と常識を身につけさせる

2019年12月11日(水)1:09 PM





Q君は、中学に入ってからは自分の居場所を外に見つけ、外で友達と遊んでばかりいました。ひどいときは一週間も帰ってきません。そんな生活が続き、今では18歳になります。





彼は反社会的な行動をとるわけではありませんが、仕事、アルバイトもせず、学業に専念するわけでもなく、ただ友達とフラフラしていました。家に帰るのは両親に小遣いをせがむときぐらいで、渡さないと暴言、暴力行為等を繰り返し、強制的に金銭の要求を通していました。





近所からはあいさつもでき、明るい普通の子で通っていますが、親に対してはむちゃくちゃな態度で両親そろって悲鳴をあげていました。





Q君の成育歴を詳細に聞くと、親の愛情不足は明らかで、両親に向かってわたしは「愛情不足です」「ただ食事をさせて、お金を渡しているだけでは子どもはこうなります」とはっきり告げました。





子どものことで相談に来た面接が、親へのお説教になってしまいました。わたしはお世辞や機嫌取りはしませんでした。支援者として的確な判断を元に、正直な気持ちで話をします。ですから結果的に、両親にお説教することになってしまいました。





さて、Q君を地方の自宅から関東自立就労支援センターの寮に引っ越しさせることに成功し、ここでの生活がスタートしました。地元にいるときからフラフラしていたので、夜の出歩きや帰って来ないことを心配しましたが、その心配は無用でした。





会ってみると、わたしが感心するぐらい挨拶はよくできるし、明るく、素直な子でした。しかし、自堕落な生活をずっとしてきた彼だけに、日常生活はとても正常と言えるものではなく、朝は寝坊、夜は眠くなったときに寝る、部屋は散らかし放題、食事はお腹がすいたときに食べるなど、生活がめちゃくちゃです。





人間的にも明るいには明るいのですが、強さがなく、その場がよければそれでいいとコンニャクみたいにフニャフニャしています。厳しさと自覚が足りないことはすぐに分かりました。まず、わたしは彼をセンターの助手に抜擢し、年下の子どもたち、これから来る子どもたちの面倒を見るようにさせました。





彼は「いいんですか、僕で」と喜び、反面、「自分にできるのか?」とあまりの唐突のことで不安も見せていました。助手として責任のある立場に置き、社会人として育てる方針です。





しかし、Q君は早速、遅刻してきました。わたしは「助手が遅刻してきてみんなは何て思うだろう?」と考えさせ、さらに「Q君は助手なんだから、寮ではみんなの手本となるようにしっかりやらないとな」と生活の改善を目的にこのような手段を使いました。





彼は「はい、がんばります」と答え、もともと素直な子だけにわたしの指導にはまり、責任のある立場を与えたことで「自分がしっかりやらないと」という自覚が芽生えてきました。その日、その時をいきあたりばったりで生きてきた子にしては大変です。





彼には本当の助手のような感覚にさせ、社会に出る前に必要な常識、社会生活をセンターの小さな社会の中で体験をさせました。失敗も多くありますが、わたしやスタッフが上司の役目として、励ましながら少しずつですが成長していきました。





面接にも参加させ、そばにおいて話を聞かせたり、在宅で面倒を見ている子どもの家に連れて行き、現場の雰囲気も体験させました。この体験によって、自分自身の今までしてきたことを振り返らせ、自分がしていたことを反省させます。





他の子の親に会わせ、現実の厳しさ、苦しんでいる親の話を聞かせ、自分に置き換えて考えさせたりもしました。今までの学校生活で責任のある立場を任されたことがなく、その立場を与えられたことによって優越感と自信が出てきたことがわかりました。





どの子もこのような立場を与えてあげると、一生懸命にやろうとします。注目され、偉い立場に置かれて嬉しくない人間はいないということです。





その立場を利用したり、高慢になるケースもありますが、こういう子どもは別に指導をする必要があるとわかるだけでもこの手法はわたしにとって重要なのです。





あくまでも仕事ではなく、教育の一環として助手という立場を利用しているのです。幸いQ君はそのような高慢になったりするところはありませんでした。





センターでの仕事の厳しさ、重要さを徹底して教え込み、彼にはその厳しさが通じてきて、だいぶコンニャクのような緩さがなくなり、芯が見えてきました。





しかし、愛情不足の彼に両親の話を聞かせると落ち込んだ様子が見てとれたことも確かです。彼は「あの両親は子どもにすごく一生懸命でうらやましい。僕なんて、両親と会話した記憶がほとんどない。





食事も一緒に食べたことがない、旅行もしたことがない、自分も両親とあのようになりたい」と心の叫びをわたしに訴えかけたのです。





なにせ、Q君の両親は彼が小さいころから共働きで、帰ってくるのは遅く、両親とも小さいころからまったく子どもをほったらかしにしていたのです。これではあまりにも彼がかわいそうです。親の愛情を知らなくて当然です。





だから面接のときにわたしは両親を叱り、今からでも遅くないから改めるようにと指導したのです。そんなQ君にわたしは「そうだろう、淋しかっただろうね。いつも一人じゃね。でも心配しなくていいよ。





わたしがしっかり話をしておいたから。両親も深く反省しているし、今からでも取り戻したいと言っていたよ」と語りかけました。彼は感情を抑え、「ありがとうございます」と深くお辞儀し、感極まっていました。





そんなQ君にはまだ教育することはたくさんありますが、やる気になった子どもを指導することはさほど難しいことではないとわたしは思っています。



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