ひきこもりの安定期について
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ひきこもりの安定期について

2019年12月08日(日)1:54 PM





ひきこもりには「混乱期」、「安定期」、「ためらい期」、そして「動き出しの時期」というおおむね4つの時期があります。ここでは、「安定期」について考えてみたいと思います。不登校の場合に当てはめると、「回復期」のあたりになるわけですが、ひきこもりの場合はまだまだ何かが動き出す時期ではありません。





本人が外に出ることは限定されており、多少緊張が緩むときがあるにせよ、まだまだ刺激には敏感な状態です。少し落ちついてきたのが外目にも分かるので、親としてはすぐにでも外に出したいと考えがちですが、まだなかなか難しい面があります。





ときには一足飛びにひきこもりの本人たちが集まるグループに参加させようとしたりもします。でも、プロセスをはしょって先に進むことはできません。





この時期には、親も子もホッとできて安定することが大切です。これはとりもなおさず、<今がいい>と、現状にいったんどっぷりと漬かりきることを言うのですが、それがなかなか難しいことのようです。





この時期に必要なことは、大きく分けて二つあります。その一つは、親が誰かに相談する、話すことであり、もう一つは親が子どもに向かって「いい」と言うことです。





また、親がどこかに相談する、あるいは第三者に話すということが大切なことです。ですが、それもまた簡単なことではなく、誰かにつながるまでには時間がかかります。





相談は、行政機関の窓口としては保健所、精神保健福祉センター、児童相談所、家庭児童相談室などがあげられます。このうち保健所はもっとも設置個所が多く、通常毎月「精神保健福祉相談」の日を定めて、精神科医師による相談、診察等を行っていますので、もっとも利用しやすい相談窓口かもしれません。





その他に一般の相談先としては、医療機関(精神科、心療内科)、カウンセリングルームなどがあげられます。ただし、ひきこもりの場合、本人が直接出向くのが難しい場合が多く、医療機関で親のみの相談に応じてくれるかどうかわかりません。





最近は、親だけの相談に応じてくれる医療機関も増えてはきましたが、それでも「本人を診ないと」「まず、本人を連れてきてください」と言われるケースの方がまだまだ多いようです。一般にカウンセリングルームでは、本人、家族どちらの相談もできます。このひきこもりの問題は、専門家の間でもまだ十分に理解されているとは限りません。





ですから、「今まで甘やかしてきたから」とか「親の育て方が悪い」などと、親に対していわれのない非難をしたり、あるいはようやく相談場面にまで出てきた本人を前にして、「どこも悪くないんだし、ただ怠けているだけじゃないの」と言ったりする専門家も、残念ながらいることは事実です。





そうしたことから、相談先で親、本人が傷つけられる二次的な被害が後を絶ちません。せっかく相談に出向いても、そういったことがあるのでは相談は続きませんし、効果的な援助は望めません。このことについては専門家の側の問題がいちばんですが、当面は利用する側で自分を守るための賢明な判断をしていただくしかありません。





また、精神保健福祉センター(各都道府県、政令指定都市ごとに設置)を中心に、ひきこもりをはじめとする思春期・青年期のいろいろな問題に悩む親の会を作って、運営しているところが増えてきました。





一般に公的機関の親の会は、利用者のための内部的な集まりで、いつ誰が来てもいいというオープンなものにはしていないようです(各親の会によって運営方法が異なりますので、詳細は直接親の会にお問い合わせください)。利用を限定的なものにすることについては、公平性という点での疑義もあるかもしれませんが、それなりの理由もあります。





すなわち、これにより当事者同士の安全な場を保障することができ、その中で互いに支え合い、認め合って、元気を取り戻すことができるという、とても大きなメリットがあるわけで、この場合は容認されるべきことだと思います。





最近は、保健所レベルでも親の会を持つところが見られるようになってきました。さらに、公的なものとは別に参加自由な自助的グループとしてオープンな親(本人)の集いが各地で開催されるようになってきています。





ここで気をつけなければいけないのは、援助者の側での思い込みです。すなわち、援助者はつい、親であれば我が子のために親の会くらい顔を出すのが当然だと考えがちです。





しかし、その親の会に出席することすら、はじめは親にとって辛く苦しいものだということを忘れてはなりません。ある母親は、親の会の案内を受け、出席の申し込みもしたものの、どうしても足が向かなかったそのときの胸の内をメールで次のように書き送ってきました。





その日一日は、ずっと重苦しい心で過ごしました・・・・・・。他の人たちが我が子のことを話す場にいるのが嫌です。自分の息子のことを話せない、隠しておきたい、息子を卑下している・・・・・。





10分おきくらいに時計を眺め、今なら間に合う、まだ大丈夫という心と、もう息子のことは考えたくないと思う心の狭間で疲れ果て、どうしても間に合わない時間になったとき、ようやくホッとしました。これはきっと、不登校だった時の息子の心境と同じなのですね・・・・・。





どうしても親の会に出て、苦難に身をさらさなければいけないなどということはけっしてありません。用意された援助の仕組みに、無理やり自分を押し込むことはありません。もう十分に苦しんできたのですから。先に進むのにも、それぞれのペースがあるのです。





この母親は、自分の今の苦しさを感じながら、子どもの気持ちに気づいています。これが身体で感じる深い気づきであればあるほど、変化の時期が近づいていると言えます。





こうした今までと違った何かに気づくことを、G・ベイトソンはその著『精神の生態学』の中で、「差異(違い)の知らせ」と呼んでいます。そしてまた、「この差異(違い)が時を隔てて生まれることを、われわれは『変化』と読んでいます」と述べています。





これまで10年のひきこもりを続けてきたその息子は、この手紙の翌年の現在、住み込みの大工として働き始めています。この時期に必要なもう一つのことは、親が子どもに向かって「いい」と言うことです。この「いい」という二文字を、自分の喉を震わせて、ただ声にしてわが子に伝えさえすればいいのです。





これを家族(親)にお願いすると、しばしば「こんな暮らしぶりで、いいところなんか一つもないです。今の状況で、いいなんてとても言えません」という反撃にあいます。いいところなんか一つもない、それでいいんです。いいところが一つもない今だからこそ、「いい」という言葉が必要なのです。





大切なのは、「いいこと」を見つけることではなく、「いい」という言葉を子どもに伝えることであり、あるいは単に「いい」という言葉を親が口にすることなのです。





親が子に向かって「いい」と言うことは必要なことですが、実際に言う段になるとその人なりの流儀があり、さまざまなバリエーションがあります。





これはコミュニケーションですから、せっかくチャレンジしても、そのやり方しだいでがらっと様相が変わります。ちょっとした言い方一つで、お互いの関係がこじれたりすることはよくあることです。





努力が実るようにするため、あらかじめその伝え方を工夫しておく必要があります。その前段として、まずいつもの自分自身の関わりの取り方をチェックしてみます。





次の項目のうち、親としての自分を振りかえってありそうなパターンはどれかチェックしてもらいます。参考までにセリフが書いてありますが、これは例示しただけで、内容も言葉の使い方も人それぞれです。





あくまで、番号のすぐ横に書かれている項目(①指示・命令など)を見て、それが自分の暮らしにあてはまるかどうかを判断してもらうわけです。





これはどれも普段の生活の中から拾ったものですから、全部該当しても不思議ではありません。むしろ、これら12通りのパターンを一つも使わないで親子関係を続けている方がいるとすると、どうやって日々暮らすことができているのか信じられない気がするほどです。





親子のやり取りのチェック





普段のやり取りのパターン





①命令(指示):「早く来いよ。ほら、これ、やりなさいよ」





②否定(拒否):「ダメダメ。・・・・もういい加減にしてほしいね」





③叱る(けなす):「もっとちゃんとしなさい。これじゃあ、何の役にも立たないじゃないか」





④非難(批判):「誰のせいだと思ってるんだ。これも全部、おまえのせいじゃないか」





⑤説教(講釈):「いつまでもこんなことでどうするんだ。こないだも○○だったし、その前だって○○だったし・・・・・。もういいかげん気持ちを入れ替えて、本気で○○に取り組んだらどうなんだ。えっ、どう思ってるんだ・・・・」





⑥質問(問いかけ、問い詰め、尋問):「どうなの?・・・・言ってごらん?・・・・怒ったりしないから」





⑦探る(探りを入れる、聞き出す):じゃあ、○○なのかい?・・・・・それとも△△なのかい?・・・・・どうなの?」





⑧提案(促す):「じゃあ、代わりにこうしてみたらどう。とにかく、やってみてからさ」





⑨忠告(たしなめる):「あの友達と付き合うのはやめたほうがいいよ」





⑩激励(なだめる、おだてる):「心配ないさ、おまえなら大丈夫だよ」





⑪妥協(あきらめ、手を余す):「もういいや。おまえの好きにすればいいよ」





⑫許可(許容):「そう、○○したいのか。じゃあ、○○していいよ」





さて、このうち子どもがいちばん嫌がる言い方はどれになるでしょう。①から④まではそれぞれ<命令・指示>、<否定・拒否>、<叱る・けなす>、<非難・批判>といった、頭ごなしのパターンです。





⑤<説教・講釈>は、この①から④までを全部いっしょにしたようなものです。ですから、子どもがいちばん嫌がる言い方は、①から⑤までのどれかになるような気がしてきます。





ところが、実際はそうではありません。これらの言い方は子どもの心には響きません。確かに「うるせえな」くらいには思いますが、そこで親からガミガミ言われても、身を反転させ、頭を低くして通り過ぎるのを待っています。





ですから、親が何を言ったのか、その中身は頭に残りません。子どもなりの対処の仕方を持っているというわけです。このことで子どもの行動が変わることはなく、ここでがんばっても子育ての努力は実りません。





では、子どもが一番嫌がるのは、他のどのパターンでしょうか。その答えは、⑥<質問・問いかけ・問い詰め・尋問>と、⑦<探る・探りを入れる・聞き出す>の二つです。





親は思わず、「どうしてなの?」と聞いてしまいます。「何かいやなことでもあるの?」と探りを入れてしまいます。親として心配し、何かをしてあげたいと思えば思うほど、子どもに対して、<聞いたり><探りを入れたり>してしまいます。このセリフを見ればすぐに分かりますが、どちらもクエスチョン・マーク(?)がついています。つまり、答えを求められているのです。





そうすると、①から⑤までのようにはいかなくなります。ただ、頭を低くしているだけではすまないのです。親の望む枠の中での返事を用意しなくてはならないので、子どもは辛くなります。





子どもは必死でガードを固め、自分の心の殻を閉じようとしているのに、親が無理やりそこに手を突っ込んできて、何を考えているのか指先でつまんで、外に引っ張り出そうとしていることになります。





だから、子どもはこのクエスチョン・マーク(?)のついたパターンをいちばん嫌がります。どうなるかというと、じっと押し黙って何も言わななるか、「うるせえ」「関係ねえだろ」と反発してくるかのどちらかです。⑧<提案・促す>、⑨<忠告・たしなめる>、⑩<激励・なだめる・おだてる>の各パターンによる効果は、①から⑤までの場合と同じです。





子どもは、親から投げつけられるメッセージから上手に身をかわす術を心得ています。親子のつき合いは昨日今日始まったものではないのですから、どう振る舞ったらいいのかは子どもなりにとっくに学習しているのです。





これらはどれをとっても子どもの領域にちょっとだけ入り込んだ言い方です。⑥<質問・問いかけ・問い詰め・尋問>、⑦<探る・探りを入れる・聞き出す>の二つは、さらに子どもの心に侵入しようとするやり方ですから、当然それだけ強く反応します。





これに対し、⑪<妥協・あきらめ・手を余す>、⑫、<許可・許容>の二つは、ちょっと性質が異なります。⑪は、「もう好きなようにしろ」と言って、子どもを遠ざけ、子どもとの関係づくりを投げ出すもので、子育てでは「放任」と呼ばれるものです。





しかし、これが当初の目的を達することはなく、親の手から離れたつもりがきっとまた親のもとに戻ってきて、同じように悩ませることになります。





また、⑫は、「ゲーム、買ってもいいよ」と子どもに代わって子どもの望む選択をする、いわば子どもとの融合、一体化を目指すもので、子育てでは「過保護・過干渉」と呼ばれます。自分の欲求に向き合うことができていないと、たとえ欲しいものが手に入ってもすぐ別なものを欲しがるようになります。





子どもの欲求に対し、無条件で親の域を明け渡すことは、受容とは無縁な行為です。このような関係の中では、子どもは責任というものを学び取ることはできません。





もし、問題が生じたら「お母さんが、そうしなさいって言ったからでしょ」ということになり、自分で責任を取ろうとはしなくなります。これら12通りのパターンは、どこの家庭にでもあるごく当たり前のものです。けっしてこれが悪いとか、まずいというわけではありません。





これらのパターンは、そのまま続けていっていいのです。ただし、これだけでは親子の問題場面に十分な対処ができないことも事実です。ですから、これ以外に効果的な新たなパターンを増やしていくことが必要になります。ただし、一度にすべてのことはできません。





ここでは、親自身のいつものパターンをチェックしておくだけで十分です。自分自身の発する言葉に意識が向き、気づく(客観化する)だけで、子どもとの関わりのコントロールが容易になり、「いい」という言葉をかけやすくなるはずです。



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